思惟石

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【読書メモ】2016年11月 ② 居眠り磐音シリーズ

2022-11-17 11:52:57 | 【読書メモ】2016年
<読書メモ 2016年11月 ②>
親戚の大おばあちゃんの遺品に時代物小説が少々ありまして。
その一部の<居眠り磐音>シリーズが
なぜか3冊(しかも23〜25)しかなくて積読していたのを、
まとめて読みました。
カッコ内は、2022年現在の補足コメントです。


『万両ノ雪 居眠り磐音江戸双紙23』
大おばあちゃんの遺品にあった佐伯泰英モノ。
しかしシリーズの23から…。
前半、主人公がお留守だったので、
南町奉行所与力の笹塚孫一について感情移入していたら、
中盤であっさり退場。
おおい…。
そしてこの主人公は無双すぎやしないか。
しかもシンデレラ並に出世してる?
これは、シリーズの序盤が面白いタイプではなかろうか。
金座裏の政次が後を継いだとこから読み始めた感じだな。
(佐伯泰英の<鎌倉河岸捕物控>シリーズのこと)
ところで、万両の親方がお香を殺しそびれた理由が
不明なままなんだけど…。


『朧夜ノ桜 居眠り磐音江戸双紙24』
まあ、読みやすいのでサクサク読みました。
磐音無双。強すぎ。
ようやく結婚式を挙げたようです。
披露宴の夜に最後の刺客がやってくるのが
クライマックスですが、
無粋というか非常識ではなかろうか。
と、小姑のようなことを思ってしまった。


『白桐ノ夢 居眠り磐音江戸双紙25』
長屋時代の友人でひとりだけ貧乏生活から抜け出せない
武佐衛門の悲しさは良いですね。
家基がうなぎの出前を頼むくだりで、
まだ将軍でもないのにうなぎを食べにも行けなくて
大変だなあと。
生まれて2年(つまり2歳だ)で忍びの頭領になるという
山田風太郎的トンデモ設定が出たけど、
この作者ってこういうことする人だったかしら。

(ちなみに<居眠り磐音>シリーズでは、
 しょっちゅううなぎを食べています。
 <鎌倉河岸捕物控>シリーズでは田楽を食べまくっているので、
 そちらよりはうなぎの方が良いなあ
 いや、もっと色々なものを食べて良いんだよ、と思うけど)
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『うろん紀行』 読書案内?妄想紀行?

2022-11-15 17:26:42 | 日記
『うろん紀行』
わかしょ文庫

作者のお名前が「わかしょ文庫」さんだそうです。
そして出版社の名前は「代わりに読む人」社。
奥付が混沌としている笑

作者が月に一回、本に関わるどこかにおでかけする
というエッセイ。
第一回は笙野頼子『タイムスリップ・コンビナート』
にちなんで「海芝浦」に行きます。

って感じで読み始めて、んん?と思った。
笙野頼子要素をひとまず横に置くと、
これは岸本佐知子氏の『死ぬまでに行きたい海』じゃないかな?
出不精の作家が連載ということで重い腰をどっこらしょと上げて
軽妙かつ思索的というかたまに妄想的な文章を書く、という。
岸本氏も海芝浦に行ってたしね。
好きなんかな?

と、第一回から思考が乱れまくるのですが。
読むとおもしろい。

わかしょさんは海芝浦に行って
「思ってたんと違う」
と感じるのだけど、わかしょさんの頭の中にある
「タイムスリップ・コンビナートの海芝浦」
のイメージが、すでに原作と違うのである。
現実とも小説とも違う、自分だけの海芝浦イメージ。
この、「決して同じ場所にたどりつけない」感覚を
とても大切にしているように感じる。
良いよね。
こういう感覚。
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『ペンタメローネ』 一番なのに知名度ゼロ!

2022-11-11 17:36:39 | 日記
『ペンタメローネ』
ジャンバティスタ・バジーレ
三宅忠明・杉山洋子:訳
読了!

『ペンタメローネ』は
主にイタリア地方の昔話を集めて書かれた
17世紀の民話集。

はい。
突然ですが問題です。
『ペンタメローネ』は、
グリム兄弟よりも、シャルル・ペローよりも早くに出版され、
ヨーロッパ最古の民話集と言われていますが
めちゃくちゃ知名度が低い!
それはなぜでしょうか?


答え。
ごりごりのナポリ方言で書かれていたため、
イタリア人でも読めない人が多かったから。
残念!

このナポリ方言の独特なリズムが
バジーレによる民話の真骨頂らしいのですが、
長所が短所になってしまった見事な例です。
残念っ!!

「シンデレラ」「眠り姫」「長靴を履いた猫」などの
原型は、この本が初出とも言われています。
(あちこちに類型の伝承はあるようですが)
残念!バジーレ!!!

作者のバジーレは17世紀ナポリの人。
『デカメロン(十日物語)』に触発されて書いたそうですが、
こちらは10人の語り女が5日間物語を話す構成。
というわけで『五日物語』を表す『ペンタメローネ』と呼ばれています。

ちなみにグリム兄弟は19世紀の人、バジーレより200年後である。
「長靴を履いた猫」「眠り姫」を流行らせたシャルル・ペローも
バジーレの約60年後。

ちなみにイソップ(アイソーポス)は紀元前6世紀のギリシャ人
と言われている。
ぶっちぎり先輩である。
ひとりだけ芸風がちがうけど。
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『屈辱の数学史』 数学エラーの喜劇

2022-11-09 14:06:21 | 日記
『屈辱の数学史』
マット・パーカー
夏目大:訳

めちゃくちゃにおもしろい!
ウンチク含有量が高い!
コスパ最高の一冊である。

一番好きなエピソードは、
前半に出たカレンダーの話。
世界的にグレゴリオ暦が一般になったにもかかわらず、
ロシアは近代までユリウス暦を使っていたので
1908年のロンドンオリンピックに来られなかった
という話。
ロシアが試合当日の7月10日だと思っていたのは、
グレゴリウス暦では7月23日。
とっくに試合が終わっていたという。

あと、街づくりゲーム「シヴィライゼーション」内で
ガンディーが突然攻撃的になるエピソード。
世界の文明度が上がると、指導者の攻撃性が「2」さがるのだけれど、
ガンディーは元々「1」だから、ふたつ下がると
最大値の「255」になってしまうプログラムミスらしい。
今では、わざとそうしてるみたいだけど。

ちなみに最大値「255」というのは、
二進法8ビットのプログラムだから。
「00000001」からふたつ下がると
「00000000」→「11111111」になる。
「11111111」は十進法の「255」。
プログラミングで一周して最大値になることを
「ロールオーバーエラー」と言うそうです。
ためになる〜。

あとね、「ナル島」の話も好き。
緯度経度が(0、0)にあると言われている島国。
実際はギニアの南600キロあたりの、海です。
位置データに不備がある際のデフォルト地点。
この架空の島の存在は聞いたことあったのだけど、
由来は知らなかったのでおもしろかった。

メートル法とヤード・ポンド法のすれ違いの話も
興味深かったな。
イギリスが単位に変なこだわりを持ってるのは知ってましたが
(フランスがメートル法を成立させたのが
 気に入らなかったらしい)
その影響がイギリス植民地系の国にも波及していたとか。
なるほどなるほど。
「薬用ポンド」と呼ばれる「グレーン(gr)」の話は
なかなか怖いですね。
ぜったいグラム(g)と見間違えるやつじゃん。危険じゃん。

そこそこのページ数ですが
どこを切り取ってもおもしろいしためになる!
ユーモアたっぷりで、プロのトークショーを観てるみたいだ。
新聞の書評にも書かれていたけれど、
邦題以外すべて最高です!

そう、邦題。
原題は「A COMEDY OF MATHS ERRORS」なのです。

タイトルに当てるべき言葉は
「屈辱」ではない気がするんだよなあ。ぐちぐち。
作者も「人は誰もがミスをする」と言っているし、
そこから何を学ぶかということを何度も投げかけているし、
「失敗学」の本じゃないかな。
「屈辱」という後ろ向きの単語は、ちょっと、この本には
そぐわないと思うんだよなあ。

でも、その単語以外は本当に良い!超絶良書!!
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【読書メモ】2016年11月 ①

2022-11-08 18:53:25 | 【読書メモ】2016年
<読書メモ 2016年11月>
カッコ内は、2022年現在の補足コメントです。

『スペイドという男 ハメット短編全集 (2)』
ダシール・ハメット/稲葉明雄訳

ハメットを知らず、
代表作の『マルタの鷹』もタイトルしか知らず、
サム・スペイドという探偵も知らなかったのだが、
ハードボイルドの祖と言われているらしい。
短編集の編者はエラリー・クイーンで、
ヘミングウェイやチャンドラーにも影響を与えた文体とのこと。
うーん、そうかな?
文章の意味がわかりづらい箇所が多くて、
あまりピンとこなかったなあ。
スペイドという探偵の作品は有名な「マルタの鷹」の他は、
この本に入っている3編だけらしい。
少ないのね。


(自分の読書傾向がいまだに謎なんですが、
 この人(6年前の私)、王道『マルタの鷹』を読む前に
 なぜか短編集を読んでるんですよ。
 何考えてたんでしょうね…。
 この短編集の序文をエラリー・クイーンが書いています。
 探偵サム・スペイドの短編3篇の他、
 7篇の短編が収録されています。
 文句ばっか言ってますが、さすがに反省したらしく
 この2ヶ月後に『マルタの鷹』を読みます。
 最初からそっちを読め!
 とはいえ過去の自分に無責任に文句言うのは、
 意外と楽しいな)
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