思惟石

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『屈辱の数学史』 数学エラーの喜劇

2022-11-09 14:06:21 | 日記
『屈辱の数学史』
マット・パーカー
夏目大:訳

めちゃくちゃにおもしろい!
ウンチク含有量が高い!
コスパ最高の一冊である。

一番好きなエピソードは、
前半に出たカレンダーの話。
世界的にグレゴリオ暦が一般になったにもかかわらず、
ロシアは近代までユリウス暦を使っていたので
1908年のロンドンオリンピックに来られなかった
という話。
ロシアが試合当日の7月10日だと思っていたのは、
グレゴリウス暦では7月23日。
とっくに試合が終わっていたという。

あと、街づくりゲーム「シヴィライゼーション」内で
ガンディーが突然攻撃的になるエピソード。
世界の文明度が上がると、指導者の攻撃性が「2」さがるのだけれど、
ガンディーは元々「1」だから、ふたつ下がると
最大値の「255」になってしまうプログラムミスらしい。
今では、わざとそうしてるみたいだけど。

ちなみに最大値「255」というのは、
二進法8ビットのプログラムだから。
「00000001」からふたつ下がると
「00000000」→「11111111」になる。
「11111111」は十進法の「255」。
プログラミングで一周して最大値になることを
「ロールオーバーエラー」と言うそうです。
ためになる〜。

あとね、「ナル島」の話も好き。
緯度経度が(0、0)にあると言われている島国。
実際はギニアの南600キロあたりの、海です。
位置データに不備がある際のデフォルト地点。
この架空の島の存在は聞いたことあったのだけど、
由来は知らなかったのでおもしろかった。

メートル法とヤード・ポンド法のすれ違いの話も
興味深かったな。
イギリスが単位に変なこだわりを持ってるのは知ってましたが
(フランスがメートル法を成立させたのが
 気に入らなかったらしい)
その影響がイギリス植民地系の国にも波及していたとか。
なるほどなるほど。
「薬用ポンド」と呼ばれる「グレーン(gr)」の話は
なかなか怖いですね。
ぜったいグラム(g)と見間違えるやつじゃん。危険じゃん。

そこそこのページ数ですが
どこを切り取ってもおもしろいしためになる!
ユーモアたっぷりで、プロのトークショーを観てるみたいだ。
新聞の書評にも書かれていたけれど、
邦題以外すべて最高です!

そう、邦題。
原題は「A COMEDY OF MATHS ERRORS」なのです。

タイトルに当てるべき言葉は
「屈辱」ではない気がするんだよなあ。ぐちぐち。
作者も「人は誰もがミスをする」と言っているし、
そこから何を学ぶかということを何度も投げかけているし、
「失敗学」の本じゃないかな。
「屈辱」という後ろ向きの単語は、ちょっと、この本には
そぐわないと思うんだよなあ。

でも、その単語以外は本当に良い!超絶良書!!
コメント
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