思惟石

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村上春樹・柴田元幸『サリンジャー戦記』

2020-10-14 18:24:45 | 日記
というわけで、ゲットしてきました。
村上春樹と柴田元幸の共著
『翻訳夜話2 サリンジャー戦記』。

オリジナルの『翻訳夜話』はお二人の”翻訳”全体に関する談義ですが、
「2」は『キャッチャー・イン・ザ・ライ』がテーマになってます。

というか、「キャッチャー」本編に収録できなかった訳者解説のために
一冊つくったって感じですね。
訳者解説パワー、すごいな笑

村上・柴田対談は2篇。
ひとつめは、白水社による
『キャッチャー・イン・ザ・ライ』プロモのためのもの。
ふたつめは、文藝春秋による
この本のためのおかわり対談。
さらに40ページ超えの訳者解説(質量が凄い)が収録されています。

訳者解説はサリンジャーのことがよくわかる
良い文章だった!
これ、本当に、本編に収録した方が良いと思うけどね。
別冊付録付き!みたいにしたら良いんじゃなかろうか。

対談の内容(ほとんどムラカミさんが柴田さんに向かって
マイ「キャッチャー」論を話す感じだけど。
対談というよりインタビュー感がある笑)も、とてもおもしろかった!

ブルジョアぼっちゃんの神経症的な語り(と私はまさに読んだわけだけど)
にとどまらないという村上論はなるほどというか、
勉強になりましたありがとうございます!
ホールデンが「変化」を恐れてイノセンスを追求する感覚とか
解説されるまでわからなかったなあ。

フィッツジェラルドのギャツビーといい、ホールデンといい、
アメリカには成長小説が無くて、
「反成長小説」が多いという部分、特におもしろかった。
117ページから124ページあたり。
ギャツビーはアドレッセンス(思春期)に留まり続けたい大人、とか。
作中では、ホールデンはギャツビーを嫌っているみたいだけど、
本質的に「成長しない」ってことで同じでは、みたいな。

カポーティーはアドレッセンス抜きで、
こどもから大人というか飛び越えて老成しちゃう(笑)という話しも
おもしろい。
グローイング・アップを通り越してグローイング・オールドって。
カポーティーはあまり読んでないけど、
(『ティファニーで朝食を』とノンフィクションの『冷血』)
なんかわかると思ってしまった。
村上訳のやつで短編集でも読もうかなあ。

なにはともあれ『キャッチャー・イン・ザ・ライ』は
作者のサリンジャーという人が抱えている問題やら人間性やらも
一緒に読むことで、すごくおもしろくなる。

やっぱり本編と『翻訳夜話2』をセットで売った方が良いんじゃないか。
出版社違うけど…。
コメント
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