Sightsong

自縄自縛日記

ウィーン・アート・オーケストラ『エリック・サティのミニマリズム』

2010-09-25 14:04:20 | アヴァンギャルド・ジャズ

何度聴いても飽きない、ウィーン・アート・オーケストラ『エリック・サティのミニマリズム』(hat ART、1983・84年)を聴く。

エリック・サティは特異な作曲家であり、ミニマリズムの名にふさわしい。マル・ウォルドロンが異色作(日本側の肝入りであったにせよ)のサティ集で「ジムノペディ」などを料理してみせたのは、そのシンプルさ、ミニマリズムの故であったに違いないし、マルの特色とも合うものだったと思っている。

ここでも、ウィーン・アート・オーケストラ(VAO)は文字通り大編成ではあるものの、合奏においては静謐なムードを保っており、また、個々のプレイヤーの個性を曲により変えて押しだしている。静謐さと浮遊感、それを生みだしているものはVAOの統合であり、ヴァイヴや鐘や、ことにローレン・ニュートンの高音のヴォイスである。1曲目のイントロなどは、ヴォイスでないのにまるでローレンのヴォイスだ。

サックスの聴きどころは、オリエンタルな響きのあるヴォルフガング・プシュニクが長いソロを取る「グノシェンヌ」のひとつである。プシュニクがバスクラを静かに吹き、ヴァイヴと響きあう最後の曲もまた良い。彼に比べると、ハリー・ソカルのサックスはどうも好きになれない(昔、電気サックスの変なリーダー作を聴いた印象もあり・・・)。

清水俊彦『ジャズ転生』(晶文社、1987年)にこの盤のレビューが収められている。全体を貫くイメージを「思慮深い」とするなど氏独特の表現が面白い。「このレコーディングはカテゴリゼーションを拒否しており、その魅力は<ジャズ>とか<クラシカル>ミュージックといったレッテルによって押しつけられた境界を超えたところにある」との結語は、今この盤を聴いても現役のようだ。VAOに比べれば、クラシックを取りこむユリ・ケインの取り組みはあまり洗練されたものとは言い難い。

VAOは今年の夏に活動を停止したようであり(>> リンク)、一度も観ることができなかったのは残念だ。


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