Sightsong

自縄自縛日記

ザ・フィール・トリオ『Looking (Berlin Version)』

2016-12-16 18:15:26 | アヴァンギャルド・ジャズ

ザ・フィール・トリオ『Looking (Berlin Version)』(FMP、1989年)を聴く、

Cecil Taylor (p)
William Parker (b)
Tony Oxley (ds) 

30分余りの「first part」において、この3人はとても人間技とは思えないほどの全力疾走を見せる。ウィリアム・パーカーの指は、音楽のエネルギー状態が下がってくることを一瞬たりとも許さない。トニー・オクスレーのドラムスは、鼓やシンバルによる美しいパルスよりも、割れた音を含め、多様なものによるミクスチャーが持ち味のようであり、それによりサウンドの収縮を回避し続けている。そしてセシル・テイラーは、時間的にも構造的にもあらゆる形のクラスターを、高速で次々に生成してゆく。このトリオによる大伽藍に対して、聴く者はセンサーのスイッチを切ることができない。一旦の収束に向けて、パーカーが弓で弾き、テイラーが研ぎ澄まされた結果としての旋律を残す。

やや静かで短い「second part」を経て、その余韻を残して「third part」が始まるのだが、やはり、直前の事件は完璧に忘れさられ、またも30分をかけて、新たな大伽藍が構築される。そして収束、大伽藍は微妙にずらされ、形を変え、エッセンスだけが残る。

これがライヴであったとは信じられない。わたしは2004年にアントワープでテイラーとオクスレーのデュオを観ているが、そのときの印象を遥かに凌駕する。聴いていると、そのたびに、動悸とともに得体のしれないエネルギーがどこからか注入されてくる。これはなんだろう。セシル・テイラーに心の底から感謝したい気分である。

●セシル・テイラー
セシル・テイラー+田中泯@草月ホール(2013年)
ドミニク・デュヴァル セシル・テイラーとの『The Last Dance』(2003年)
セシル・テイラー+ビル・ディクソン+トニー・オクスレー(2002年)
セシル・テイラーの映像『Burning Poles』(1991年)
セシル・テイラー『The Tree of Life』(1991年)
セシル・テイラー『In Florescence』(1989年)
1988年、ベルリンのセシル・テイラー
イマジン・ザ・サウンド(1981年)
セシル・テイラーのブラックセイントとソウルノートの5枚組ボックスセット(1979~1986年)
セシル・テイラー『Michigan State University, April 15th 1976』(1976年)
セシル・テイラー『Dark to Themselves』、『Aの第2幕』(1969年、76年)
ザ・ジャズ・コンポーザーズ・オーケストラ(1968年)
セシル・テイラー『Live at the Cafe Montmartre』(1962年)
セシル・テイラー初期作品群(1950年代後半~60年代初頭)

●ウィリアム・パーカー
スティーヴ・スウェル『Soul Travelers』(2016年)
エヴァン・パーカー+土取利行+ウィリアム・パーカー(超フリージャズコンサートツアー)@草月ホール(2015年)
イロウピング・ウィズ・ザ・サン『Counteract This Turmoil Like Trees And Birds』(2015年)
トニー・マラビー『Adobe』、『Somos Agua』(2003、2013年)
ウィリアム・パーカー『Essence of Ellington / Live in Milano』(2012年)
Farmers by Nature『Love and Ghosts』(2011年)
ウィリアム・パーカー『Uncle Joe's Spirit House』(2010年)
DJスプーキー+マシュー・シップの映像(2009年)
アンダース・ガーノルド『Live at Glenn Miller Cafe』(2008年)
ブラクストン、グレイヴス、パーカー『Beyond Quantum』(2008年)
ウィリアム・パーカー『Alphaville Suite』(2007年)
ウィリアム・パーカーのカーティス・メイフィールド集(2007年)
ロブ・ブラウン『Crown Trunk Root Funk』(2007年)
ダニエル・カーター『The Dream』、ウィリアム・パーカー『Fractured Dimensions』(2006、2003年)
ウィリアム・パーカー、オルイェミ・トーマス、ジョー・マクフィーら『Spiritworld』(2005年)
ウィリアム・パーカー『Luc's Lantern』(2005年)
By Any Means『Live at Crescendo』、チャールズ・ゲイル『Kingdom Come』(1994、2007年)
ウィリアム・パーカーのベースの多様な色(1994、2004年)
Vision Festivalの映像『Vision Vol.3』(2003年)
ESPの映像、『INSIDE OUT IN THE OPEN』(2001年)
ペーター・コヴァルト+ローレンス・プティ・ジューヴェ『Off The Road』(2000年)
アレン/ドレイク/ジョーダン/パーカー/シルヴァ『The All-Star Game』(2000年)
ウィリアム・パーカー『... and William Danced』(2000年)
エバ・ヤーン『Rising Tones Cross』(1985年)
ウェイン・ホーヴィッツ+ブッチ・モリス+ウィリアム・パーカー『Some Order, Long Understood』(1982年)
『生活向上委員会ニューヨーク支部』(1975年)

トニー・オクスレー
セシル・テイラー+ビル・ディクソン+トニー・オクスレー(2002年)
『A Tribute to Bill Evans』(1991年)
セシル・テイラーの映像『Burning Poles』(1991年) 


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。