今年(2015年)の6月11日に亡くなったオーネット・コールマンへの個人的な追悼として、『Ornette at 12』(Impulse、1968年)を聴く。ジャケット右下に穴が開けられたカット盤なので自慢にもならないが、オリジナル盤である。
Ornette Coleman (as, tp, vln)
Dewey Redman (ts)
Charlie Haden (b)
Denardo Coleman (ds)
ジャケットはコールマン親子が微笑みあう姿。だが裏面は一転して強張った表情でお互いに目をそらしているのが面白い。
そのオーネットの息子デナードは、とにかく自由にというオーネットの教育あってか、鉄のごとき無邪気さでドラムスを叩きまくっている。1956年生まれだから、このとき12歳になるかならないか。この怪童はバンド仲間からどう評価されていたのだろう。
演奏の聴きどころは、もちろんデナードだけではない。チャーリー・ヘイデンの残響音とともに進むベースは、LP盤でなおさら素晴らしく聴こえる。デューイ・レッドマンの、内奥へ内奥へともぐり続けるテナーもいい。そしてオーネットが登場すると、視野が冗談のようにぱあっと開けるのだ(トランペットとヴァイオリンはいまだによくわからないが)。この人に新しいも古いもないのであって、だからこそ時代を超えた存在なのだと思う。
ふと思い出した。アオシマが『伝説巨神イデオン』のプラモデルに、関節にはめ込むプラキャップ(柔らかい樹脂)を導入したことがあった。正直言って出来のよくないアオシマのプラモながら、その動きは感動的なほどで、ロボットプラモ史において画期的な事件だった。何が言いたいかというと、オーネットのアルトはイデオンの関節のように、ヌルヌルツルツルと可動し、動きのマチエールが心のひだをくすぐるのである。
オーネットよ永遠に。
●参照
オーネット・コールマン『Waiting for You』(2008年)
オーネット・コールマン『White Church』、『Sound Grammar』(2003、2005年)
シャーリー・クラーク『Ornette: Made in America』 再見(1985年)
シャーリー・クラーク『Ornette: Made in America』 オーネット・コールマンの貴重な映像(1985年)
オーネット・コールマンの映像『David, Moffett and Ornette』と、ローランド・カークの映像『Sound?』(1966年)
スリランカの映像(6) コンラッド・ルークス『チャパクァ』(1966年)
オーネット・コールマンの最初期ライヴ(1958年)
オーネット・コールマン集2枚(2013年)