Sightsong

自縄自縛日記

ジャン・ユンカーマン『沖縄うりずんの雨』

2015-07-20 22:37:34 | 沖縄

岩波ホールで、ジャン・ユンカーマン『沖縄うりずんの雨』(2015年)を観る。

第1部、沖縄戦。第2部、占領。第3部、凌辱。第4部、明日へ。沖縄人と日本兵を殺した元米兵、米兵を殺した元日本兵、施政権返還の正体を見抜き日の丸に火をつけた知花昌吉さん(『ゆんたんざ沖縄』も引用される)、チビチリガマでの「集団自決」で偶然生き残った知花カマドさん、元沖縄県知事・大田昌秀さん、元米兵の政治学者・ダグラス・ラミスさん、沖縄の差別的構造を撮る写真家・石川真生さん(最近の『大琉球写真絵巻』も紹介される)、1995年に沖縄で起きた12歳少女強姦事件の犯人のひとり、普天間の海兵隊員、・・・。

この映画にはさまざまな人が登場する。その声が、ペリーの琉球来訪(1853年)から沖縄戦(1945年)を経て現在に至るまでの、米国の帝国主義的な歴史の中に位置づけられ、こだましている。ユンカーマン監督の流暢とは言えない日本語によるナレーションも、既に何度も語られた歴史を、新たに語りなおそうとする異化作用に一役買っているようだ。

貴重なフィルムも、驚くような語りもある。ぜひ多くの人に観てほしい。

●参照
ジャン・ユンカーマン『老人と海』


『銀巴里セッション 1963年6月26日深夜』

2015-07-20 07:37:33 | アヴァンギャルド・ジャズ

先日(2015/7/7)亡くなった菊地"プー"雅章さんの個人的な追悼のつもりで、『銀巴里セッション 1963年6月26日深夜』(Three Blind Mice、1963年)のLPを聴く。今になって、歴史的な録音というだけでない聴きどころと驚きが満載だということに気付いている。なお、司会は相倉久人さんである。

(1) Greensleeves
高柳昌行 (g)
金井英人 (b)
稲葉国光 (b)
富樫雅彦 (ds)

(2) Nardis
菊地雅章 (p)
金井英人 (b)
富樫雅彦 (ds)

(3) If I Were A Bell
中牟礼貞則 (g)
日野皓正 (tp)
稲葉国光 (b)
山崎弘 (ds)

(4) Obstruction
山下洋輔 (p)
宇山恭平 (g)
金井英人 (b)
富樫雅彦 (ds)

実は最初にこの盤を聴いたとき、高柳昌行のギターが轟音ではなく、まるでタル・ファーロウのようなオクトパス風であることを不思議に思っていたのだった。実はそれが高柳前史でもなんでもなくて、枝葉をそぎ落としたミニマルな音世界が本人の幹であることには、あとで気付かされた(1979年には『Cool Jojo』という大傑作もある)。この「Greensleeves」も、高柳のソロを耳で追いかけていくと、とてもスリリングである。

若干23歳の菊地雅章は「Nardis」を弾く。富樫雅彦もこのとき23歳、ブラッシュワークにずいぶん元気があって驚いてしまうが、麻薬禍から戻ってきての復活演奏ということもあるのだろうか。もちろん、まだ下半身の自由を失う前の演奏であり、美学を追及した後年のスタイルとは異なる。そして菊地雅章。このときすでに、思索しながら(そして盛大に唸りながら)、コード進行に沿ったノリノリとは対極に身を置いて、鍵盤に指を乗せるたびに違うフレーズを捻出しようとしていることがわかる。若くしてこの人であったのだ。

高柳とは対照的に、ダンディで暖かく、余裕のある中牟礼貞則。このとき30歳、そして80歳を超えた今もバリバリの現役。今も昔もカッチョいい人である。ところで、石塚真一『BLUE GIANT』に川喜多というヴェテラン・ギタリストが登場するが、この人のイメージがかぶってしまう(ちょっと違うか)。

最後の収録曲は21歳(!)の山下洋輔。これこそ山下前史であり、どう聴けばいいのかよくわからない。

●参照
高柳昌行1982年のギターソロ『Lonely Woman』、『ソロ』(1982年)
翠川敬基『完全版・緑色革命』(1976年)(高柳、富樫参加)
菊地雅章クインテット『ヘアピン・サーカス』(1972年)
菊地雅章+エルヴィン・ジョーンズ『Hollow Out』(1972年)
富樫雅彦が亡くなった(2007年)
『富樫雅彦 スティーヴ・レイシー 高橋悠治』(2000年)
富樫雅彦『セッション・イン・パリ VOL. 1 / 2』(1979年)
富樫雅彦『かなたからの声』(1978年)
富樫雅彦『風の遺した物語』(1975年)
小川紳介『1000年刻みの日時計-牧野村物語』(1968年)(富樫雅彦のパーカッション・ソロ) 
宮野裕司+中牟礼貞則+山崎弘一+本多滋世@小岩フルハウス(2013年)
淺井愼平『キッドナップ・ブルース』(1982年)(山下洋輔登場)
相倉久人『至高の日本ジャズ全史』