葉がすっかり落ちて、裸木になった冬の雑木林を歩いてみると、枝先に黄緑色の美しい繭が
ぶら下がっているのがよく見られます。
葉がある内はこれも立派な擬態になるのですが、この時期はかなり目立つ存在です。
これはヤママユ科のウスタビガという蛾の仲間が作った繭ですが、この中に蛹は入っていません。
羽化したのは昨年の10~11月頃で、これはその抜け殻といってもいいでしょう。
雌の成虫が羽化するとすぐに雄の成虫が飛んできて交尾し、雌はこの繭の表面に産卵します。
成虫にはカイコ蛾などと同じく、吻口のような食物を採る器官はなく、羽化は生殖だけが目的で
子孫を残した後は早々に命を終えるようです。
この繭の構造を少し詳しく見て見ると、上の水平なところが出口で、左右を2本の指で摘まんで
軽く押してみると大きく開きます。
底には小さな穴が開いていますが、これは水抜き穴で、内部が水浸しになるのを防いでいます。
しかし、「本能」ということで片づけてしまえば、それはそれまでなんでしょうが、これほど複雑な
構造物をどのウスタビガも間違いなくこの形で完成させるというのはやはり不思議という他ありませんね。
尚、ウスタビガのウスタビは漢字で「薄手火」で提灯を意味するそうです。
先日の冬芽もそうですが、鮮やかですね。
職人さん達が自然の色や形から学ぶのが理解できる気がします。
この色は日本の色の名前で言ったら何と呼ぶのでしょう^^
萌黄か鶸萌黄が近いかな^^
殺風景な冬の雑木林も注意深く観察してみると宝物でいっぱいです。
この繭の色は萌黄や鶸萌黄よりもう少し緑にシフトしています。
イメージ的には奈良時代頃の古代染めの浅緑でしょうかね。
当時の人は鮮やかな黄色の仮安(カリヤス)と藍を交互に染めて緑色を
出すのに相当苦労していたようです。
このウスタビガの繭を絹のように紡げると素晴らしい色になりそうですが、
残念ながら、糸に紡ぐことはできないそうです。