しろくま日記

読んだ本の感想を記録してみたいと思います。
なんだか忘れてしまうので。

ネメシス 上・下 アイザック・アシモフ著 田中一江訳 ハヤカワ文庫

2016-01-09 | 海外SF
SFは‘12年ローカス誌オールタイムベスト100に挙げられているものを中心に読んでいますが、それとは別に密かに…というわけでもないのですがアシモフの邦訳されているSF作品全作読破を目指しています。

ということで「宇宙気流」「宇宙の小石」を読んだ流れで本書を手に取りました。
本作を読めばアシモフのSF長編で未読は「ミクロの決死圏」と「ミクロの決死圏2」のみになります。
いずれも入手済みですが読むのはいつになるかなぁ…。

本書、上巻は2,3年前にブックオフで見かけ購入、下巻は最近Amazonで古本を手に入れました。

1989年刊、アシモフのファウンデーション以外としては最後の長編SF作品です。
「巨匠アシモフ」ではありますが…まぁこの作品をわざわざいまどき読もうというのは相当好きものでしょうねぇ(笑)

内容紹介(裏表紙記載)
上巻:
時は2220年。植民衛星ローターの天文学者ユージニアは、太陽からわずか2光年のところに未知の恒星を発見した。おりしも地球からの独立を望んでいたローターの指導者ピットは、秘密裡に太陽系脱出を計画。独自に開発したハイパー・アシスト駆動を利用して、衛星の住民ごと新世界へ旅立った。だが、人類の新たな故郷になるはずのこの星―ネメシスは、やがて太陽系におそるべき打撃をもたらすことになる災厄の星だった!

下巻
平穏な軌道を描いていると思われたネメシスは、実は太陽に向かって直進しつづけていた!太陽系に達するのは5000年後だが、人類の避難はすぐにも始めねばならない。だがローターの独立に拘泥するピットは、この事実を地球に報告することを拒否。対立するユージニアとその娘をネメシス系の衛星エリスロに追放してしまう。しかし、そこには新たな驚異が・・・・・・巨匠アシモフが未来史の設定を離れて描いた最後の本格宇宙SF!


上記のとおりいわゆる「アシモフの未来史の設定を離れた」作品とされていますが両シリーズの重要な小道具であるハイパースペース・トラベルの開発がストーリーの一つの軸になっており、1993年刊の「ファウンデーションの誕生」の中でも本作のエピソードに言及しているなど一応関連づけられてはいるようです。

本作読んでのとりあえずの感想は….。
80年代のSF作品としてはものすごくキビシイものがありました…。

要素的には70年代後半から80年代のハードSFを一生懸命キャッチアップしている感じはあるんですが料理方法は昔ながらのアシモフなのでなんとも違和感古臭さを感じてしまう…。

いろいろ新味は出そうとしているのでしょうが、どれも「これ読んだよなぁ」とか「どこかで見たようなアイディアだなぁ」と感じてしまいました。
地球を情報局長が実質的に仕切っていたりするのも「宇宙の小石」とあまり変わらなかったりします….。
1950,60年代くらいまでは世界は割と単純だったんですが、80年代はもろもろ複雑になってきてますので背景を80年代SF風にしていしますうと

「巨匠」アシモフ、「若い者には負けん!」とがんばったのかもしれませんがちょっと無理があるように感じました。

作品名はぱっと出てきませんが手塚治虫の晩年の作品にもそんな感じのものがあったような...。

そうはいっても「アシモフ」ですから、まぁそれなりに面白い話にはなってはいますので「この作品を今読む意味はあるんだろうか?」とか難しいことを考えずに「暇つぶし」と割り切れば楽しんで読めます。

「新しさ」を出そうとした仕掛けはいただけませんが、惑星ローターのさえない老科学者ジェナールの味わい深さと、超光速航法を開発した美貌の女性物理学者テッサが「老い」を感じて葛藤するところなどは印象に残ります。

作者の「年齢なり」に話を作らないと厳しいということでしょうかねぇ…。

本作の前年1988刊の「ファウンデーションへの序曲」、アシモフ最後のSF長編1993年刊「ファウンデーションの誕生」は往年の冴えは感じませんでしたがなにせ年来慣れ親しんだ「ファウンデーション」ですからなかなか力作と感じましたし。
特に「誕生」の方はセルダンの「老い」もテーマの一つですからその辺はしびれた記憶があります。

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