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名将会ブログ (旧 名南将棋大会ブログ)

名古屋で将棋大会を開いています。
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大山将棋研究(498);石田流穴熊に銀冠

2017-04-23 | 大山将棋研究
☆ 昨日の復習

後手番大山先生の次の手は?


☆ 今日の棋譜
昭和54年10月、大内延介先生と第12回連盟杯争奪戦です。


大内先生が先手で石田流

当然穴熊です。大山先生はいつものように7筋を受けないで銀冠に。

33桂と跳ねるのは、24角の移動が制限されるので簡単に跳ねてはいけないのですが、46歩~57銀の形をとがめようとしています。

大内先生の66銀は誘いの隙ですが、45歩はわかり切っているのですから2手損しなくてもよいのになあ、とおもうところです。

46銀が不安定で、53銀と使ったところでは大山先生の作戦勝ちでしょう。

86歩同歩(飛車交換ができない)87歩はゆさぶりで

47歩を打たせて

角を切って87銀の両取りの筋を決行しました。

大内先生の桂を捨てて一つ飛車を浮くのが見えにくい手。

74歩で取り返そうというのです。銀桂損なのですが

かなり後手陣が味が悪く、バランスが取れています。

これで飛角を取り合って

と金を作る。銀損でも98成銀が遊んでいるので互角のわかれです。

と金で銀を取れて

さらに桂打ちです。馬は捨ててもよい、というのが穴熊らしい指し方です。

すんなり64馬と逃げて、大内先生がうまくやったようですが、大山先生の47桂というのは逆モーションで気が付きにくい、指されてみればなるほどという手です。

これで金を剥がせます。

大内先生も金を剥がし

剥がしたり埋めたりの繰り返しで

攻防が続きます。

この角打ちも攻防の手。

金銀を剥がして、大山先生になにかありそう。47銀28金とするのは得かと思ったのですが、金銀で穴熊を攻めるのは受けが利きます。

54金打から44銀と角馬の筋を止めて受けました。

大内先生は馬角を切って迫ります。(82馬と逃げておくべきかどうか、というのが検討の余地あり)

大山先生は受けきれないので攻め合いです。ここで大内先生は金を打つべきだったか。

銀で受けたので手順に角を打たれ

懸命に受けるのですが

これは寄り筋です。

66角には28銀成同玉27金同玉35桂、と王手を決めてしまうほうがわかりやすかったか。この桂も手筋ですが

39の銀を取られるので長いです。

さて先手玉は2手すき。大内先生は詰めろ以上で迫れば勝ち筋です。

24桂から44香でうまくいったように見えます。

銀取りで角を配置できましたが(43香成も有力ですが、後手は35桂が詰めろで負けか)

36桂同歩77飛成で詰めろ。後手玉もかなり危ないです。詰みがあるかどうか。

銀が足りなくて詰まないみたいです。

投了図。わずかに詰みません。


なかなかの好勝負でした。198手ですが、ずっと良い勝負です。
大山先生の作戦勝ちから、強引に技をかけに行きましたが、駒損でも と金を作って悪くない、という大内先生もさすがです。その後も力のこもった攻防が続きました。上の図面だけでなく、手順を追いかけてみると、よりわかると思います。

#KIF version=2.0 encoding=Shift_JIS
# ---- Kifu for Windows V7 V7.30 棋譜ファイル ----
手合割:平手  
先手:大内延介8段
後手:大山十五世名人
手数----指手--
1 7六歩(77)
2 3四歩(33)
3 9六歩(97)
4 4四歩(43)
5 7五歩(76)
6 5四歩(53)
7 7八飛(28)
8 6二銀(71)
9 6八銀(79)
10 4二玉(51)
11 4八玉(59)
12 3二玉(42)
13 3八玉(48)
14 5二金(61)
15 7六飛(78)
16 3三角(22)
17 2八玉(38)
18 2二玉(32)
19 1八香(19)
20 3二銀(31)
21 1九玉(28)
22 1四歩(13)
23 2八銀(39)
24 1五歩(14)
25 3九金(49)
26 4三金(52)
27 5八金(69)
28 2四歩(23)
29 4八金(58)
30 2三銀(32)
31 7七桂(89)
32 3二金(41)
33 9七角(88)
34 2五歩(24)
35 5六歩(57)
36 8四歩(83)
37 5七銀(68)
38 9四歩(93)
39 4六歩(47)
40 2四角(33)
41 9八香(99)
42 3三桂(21)
43 7九角(97)
44 8五歩(84)
45 6六銀(57)
46 4五歩(44)
47 5七銀(66)
48 4六歩(45)
49 同 銀(57)
50 5三銀(62)
51 7四歩(75)
52 同 歩(73)
53 同 飛(76)
54 7三歩打
55 7六飛(74)
56 6四歩(63)
57 6六歩(67)
58 8六歩(85)
59 同 歩(87)
60 8七歩打
61 8五桂(77)
62 7二飛(82)
63 4七歩打
64 8八歩成(87)
65 同 角(79)
66 4六角(24)
67 同 歩(47)
68 8七銀打
69 7三桂成(85)
70 同 桂(81)
71 7五飛(76)
72 8八銀成(87)
73 7四歩打
74 8四角打
75 7六飛(75)
76 9八成銀(88)
77 6一角打
78 7一飛(72)
79 8三角成(61)
80 7五香打
81 8四馬(83)
82 7六香(75)
83 7三歩成(74)
84 8一飛(71)
85 7五馬(84)
86 7九飛打
87 3八金(48)
88 7七香成(76)
89 6三と(73)
90 6七成香(77)
91 5三と(63)
92 同 金(43)
93 6五桂打
94 4三金(53)
95 6四馬(75)
96 2六歩(25)
97 同 歩(27)
98 4七桂打
99 4八金(39)
100 2七歩打
101 同 銀(28)
102 3九桂成(47)
103 同 金(38)
104 同 飛成(79)
105 3八金(48)
106 4九龍(39)
107 5三桂成(65)
108 同 金(43)
109 同 馬(64)
110 3五桂打
111 2八銀打
112 4三金打
113 7五馬(53)
114 5七成香(67)
115 6五歩(66)
116 4七成香(57)
117 3九金打
118 7九龍(49)
119 6六角打
120 5五歩(54)
121 7七歩打
122 7一飛(81)
123 6四馬(75)
124 6八龍(79)
125 5五馬(64)
126 2七桂(35)
127 同 銀(28)
128 3八成香(47)
129 同 金(39)
130 5四金打
131 2五桂打
132 4四銀打
133 同 馬(55)
134 同 金(54)
135 同 角(66)
136 同 金(43)
137 3三桂成(25)
138 同 金(32)
139 2五桂打
140 2一桂打
141 4五香打
142 4七角打
143 3九銀打
144 3八角成(47)
145 同 銀(27)
146 6六角打
147 4九金打
148 5八金打
149 4八桂打
150 同 金(58)
151 同 銀(39)
152 同 角成(66)
153 同 金(49)
154 同 龍(68)
155 2八金打
156 3九銀打
157 6六角打
158 2七桂打
159 同 金(28)
160 3八龍(48)
161 3九角(66)
162 2七龍(38)
163 2八銀打
164 3八銀打
165 2七銀(28)
166 同 銀(38)
167 5二飛打
168 3二金打
169 3三桂成(25)
170 同 桂(21)
171 2四桂打
172 同 銀(23)
173 4四香(45)
174 2三銀打
175 5四角打
176 3六桂打
177 同 歩(37)
178 7七飛成(71)
179 3五歩(36)
180 4五歩打
181 3二角成(54)
182 同 銀(23)
183 同 飛成(52)
184 同 玉(22)
185 4三銀打
186 2一玉(32)
187 1三桂打
188 同 銀(24)
189 3二金打
190 1二玉(21)
191 2三金打
192 同 玉(12)
193 3三金(32)
194 同 玉(23)
195 3四銀成(43)
196 2二玉(33)
197 2三金打
198 3一玉(22)
199 投了
まで198手で後手の勝ち

20170423今日の一手(その497);形の違いに注意する

2017-04-23 | 今日の一手
20170423今日の一手

4月2日の名南将棋大会から、KさんとHさんの対局です。形勢判断と次の一手を考えてください。




一昨日の一手の回答

☆ 形勢判断をします。
駒の損得はありません。
玉の堅さは後手のほうが堅いです。先手玉も68金右~88玉となっていれば同じですが、この2手の違いはかなり大きいです。
先手の攻め駒は持ち駒角1枚。
後手の攻め駒は持ち駒角1枚。ただし86歩はいつでも入るので82飛も加わりますし、73桂か54銀もすぐに働きそうで、3枚に近いのです。(将来のことを言っているので、大局観の範疇ですが。)

総合すれば後手が作戦勝ちです。

☆ 大局観として
実際は先後が逆で先手(実際は後手)が1手損をして角換わりの相腰掛銀になったのだと思います。
後手一手損角換わりでは

実戦と手順は違うのですが、この図の1手前29桂の形が基本図(の先後が逆)で、37桂か67金右が分岐点です。
ここから42金右はあり得る手(65歩や62飛が定跡化されている)、48飛も普通の応手、22玉に25歩が疑問手(厳しく言えば悪手)でしょう。26歩の形のメリットを放棄して、65歩と先攻されました。
形勢判断のところで書きましたが、後手玉が堅く、その上にが65歩と先に仕掛けているのですから後手の作戦勝ちです。次の手を考えていくと、どうして先手の作戦負けなのかがはっきりしてきます。

さて、問題図ではどうするか。
37桂と跳ねているので、後手から1歩持って35歩同歩36歩という筋があり、受けきりが難しいです。37桂(さらには48飛)という攻めの手を指しているのですから、どうにか攻め合いに持っていくしかありません。
けれど後手が先攻している分だけ攻めの速度が遅くなりそうです。解決策は手持ちの角を使って、後手の攻めをけん制しながら、曲線的な攻め合いの形に持ち込むしかありません。
1手の間違いならまだ立て直しが利くことが多いです。大切なのは疑問手を重ねないことなのです。
角換わりの将棋は攻撃力が高いので、作戦負けというのはすぐに不利になり、劣勢、敗勢につながるのです。ここ数手で勝敗が決まってしまうことが多いです。


× 素直なのは65同歩ですが

65同桂66銀35歩

飛が28にあればまだ反撃も利くのですが、これはほぼつぶれています。47銀とか47金とか47角とか、指せば続きますが悪くなるばかりです。

65同桂には同銀

と取るほうが良いのですが、65同銀73角81飛55角成

後手もいろいろありますが、54銀56馬61飛

これくらいでも後手玉が堅く、攻め駒は3枚です。66歩に65歩同歩同銀、となればいうことがありません。


× 実戦は26角でしたが

これはほとんど悪手です。66歩45歩

で45同歩と取ってもらえるわけもなく、後手はどんどん攻めてきます。86歩に同歩なら95歩同歩85歩

飛角桂香で攻められてつぶれます。先手は44歩と取り込んでもなんでもなく、角が働くことがありません。

戻って実戦は86歩に同銀でしたが、65桂44歩39角

というのもありました。これも後手が有利。

実戦は86歩同銀に35歩

こういうのも大駒を近づける手筋です。35同角に64角26角

こうなると互いの角の働きに差があります。後手としては45歩と取っておいて十分でしたが、55銀は急ぎ過ぎ。65歩86角

の時に55銀と取って逆転するところだったのですが、86同歩56銀同歩67銀

というのは後手は駒損でも十分すぎます。金をもって27金と打つこともできますから、この攻めは切れないです。


△ 角を打たないで45歩のほうがましなのですが

64角26角45歩

やはり角の打ちあいは64角の方が働いています。45同銀には55銀、45同桂には同銀同銀19角成~46香で後手が指しやすそう。まだ勝負にはなりそうですが。


○ ということで64角しかないです。

これは後手の右金が42なので63金とできない、という意味でとがめています。84角45歩62飛46角66歩

今度は角の位置が逆になりました。後手の攻めの手が進んでいるとはいえ、75歩同歩44歩

で74歩を狙い、45歩同桂44銀74歩65桂

66銀76歩67歩

これなら互角です。後手の84角が攻めに働いている(66角と切れる)ので、これまでの先手の26角よりは条件が良いのですが、先手の46角も攻防に働きがあります。



☆ まとめ
角換わりでの26角(84角)という四手角と呼ばれる位置に打つのはあまりうまくいきません。うまくいくのは一方的に45歩同歩同桂(あるいは銀)と攻められる時だけです。前にも書きましたね。
問題では48飛~25歩~26角~45歩というのが手数がかかりすぎているのです。後手が専守防衛ならわかるのですが、攻め合いではっきり速度負けです。
26角と打たずに、45歩同歩同銀同銀同桂~71角などと直接後手陣に飛車取りで打ち込むほうが、駒損になりやすいかもしれませんが、攻めがかなり速いのです。
角換わり腰掛銀ならば53歩の形なので、26角の利きが53で止まっているということも関係しています。(相矢倉なら54歩の形で、53に銀がいたり、71角成と成り込めたりします。)

自陣の形だけ見て、48飛56銀37桂26角~45歩というのが強力な攻めだ、とだけ思いこんではいけません。当然ながら相手の攻撃の速度との兼ね合いです。四手角の攻めは遅い(その分強力かもしれませんが)のです。相手の攻めも考えなくてはいけません。
前回と同じで、矢倉と角換わりは違うのです。何が違うか、どう違うか、を考えましょう。より深く理解できます。

一番自然に65同歩として悪くなる、というのは作戦負けがかなり進んでいる証拠です。後手一手損の角換わり腰掛銀は、25桂と跳ねられるから35歩からの桂頭攻めがあまり怖くない、というのが売りだったのですが、それを放棄した25歩が悪い手でした。

自分も45歩と攻めるのは、飛車が48にいるのですから、本来は当然の手です。1手遅くなっても元が取れるかもしれません。でも後手に64角を先着されるのが痛く、やや苦しい展開です。

64角と先に角を打ってしまうのが唯一の良い手です。後手は金で受けられないので、飛で受ける(72飛あるいは83飛)か角で受けるかありませんが、その後で45歩(~46角)として、この角のラインで頑張ります。