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名将会ブログ (旧 名南将棋大会ブログ)

名古屋で将棋大会を開いています。
みなさんの棋力向上のための記事を毎日投稿しています。

大山将棋研究(482); 四間飛車に左美濃

2017-04-07 | 大山将棋研究
☆ 昨日の復習

先手番大山先生の次の手は?

☆ 今日の棋譜
昭和54年8月、関根茂先生と第27回王座戦です。(今年2月に亡くなられたとか。)


大山先生の四間飛車で、関根先生の53銀は持久戦を目指したものですが、これに56歩はちょっと珍しい手。13角は58飛で問題ないのですが、なんとなく違和感がありますね。中央位取りを防いだ(関根先生が得意そう)ということでしょう。

関根先生は位が取れないので左美濃に。

22玉の形の左美濃は角筋で攻められるのが嫌味。64歩としてそれをけん制して、角を転回します。

大山先生は軽く58銀で62飛を強要。

端桂です。関根先生は63飛としておくべきだったか。93桂は95歩があります。

仕方なく耐える展開になりました。大山先生の作戦勝ちです。

玉は堅いのですが、攻撃力が足りません。こういう時は動くよ、と見せかけて動いてもらうもの。77角で45歩を見せて

75歩から76歩を誘います。

それから銀で76の歩を取りに行きます。関根先生としては角を引いて耐えるところ。

それを45歩から46歩で斬り合いに行ってしまいました。

角金交換で金を打ってもたいした手がありません。

守りの金を攻めに使うことになり、流れが悪いです。

これで一応は攻めが続きます。ここまでは読んでの角金交換からの手順でしょうが、読んでも指さないほうが良いものです。

大山先生の88角が好手。つい74歩とか71角とか考えるのですが、この自陣角が急所です。33銀と受けさせて

74歩。角を追われたら

73歩成では怖いので、24角の方が安全そう。とにかく88角のラインを生かします。

ここで一段落。大山先生が金銀交換プラス歩得でやや有利。普通は38金打とか、守っておくものですが

強く25歩から26桂。守らないで、玉を追われたら左に逃げようとしています。

さらに35歩から攻めます。反動が怖いのですが広い玉なので気にしませんね。

あとは駒を打ち込んで上から押さえていくだけ。

飛車を取り

上から迫って投了図。

多分関根先生は居飛車党で鋭く深く読むタイプ。左美濃は向いていないというか、位取りのつもりが仕方なく、という選択で、やりにくい展開だったのでしょう。序盤の64歩と突いて角を移動する(84に持っていくつもり)というのが妥協した感じで、こういう指し方は作戦負けになりやすいのです。
大山先生は軽く動いて、無理に攻めさせて有利になりました。いろいろありそうなところで、77手目88角がとても働きました。
振り飛車党にとって、かなり勉強になる指し方だと思います。

#KIF version=2.0 encoding=Shift_JIS
# ---- Kifu for Windows V7 V7.30 棋譜ファイル ----
手合割:平手  
先手:大山十五世名人
後手:関根茂8段
手数----指手--
1 7六歩(77)
2 8四歩(83)
3 7八銀(79)
4 3四歩(33)
5 6六歩(67)
6 6二銀(71)
7 6八飛(28)
8 4二玉(51)
9 4八玉(59)
10 3二玉(42)
11 3八玉(48)
12 5二金(61)
13 2八玉(38)
14 1四歩(13)
15 1六歩(17)
16 5四歩(53)
17 3八銀(39)
18 5三銀(62)
19 5六歩(57)
20 4四歩(43)
21 4六歩(47)
22 3三角(22)
23 3六歩(37)
24 2二玉(32)
25 5八金(69)
26 3二銀(31)
27 4七金(58)
28 4三金(52)
29 6七銀(78)
30 8五歩(84)
31 7七角(88)
32 7四歩(73)
33 3七桂(29)
34 6四歩(63)
35 2六歩(27)
36 9四歩(93)
37 9六歩(97)
38 5一角(33)
39 5八銀(67)
40 6二飛(82)
41 6九飛(68)
42 3三桂(21)
43 5九角(77)
44 2四歩(23)
45 9七桂(89)
46 8二飛(62)
47 6五歩(66)
48 4二角(51)
49 6四歩(65)
50 同 銀(53)
51 6五歩打
52 7三銀(64)
53 7七角(59)
54 7五歩(74)
55 同 歩(76)
56 7六歩打
57 5九角(77)
58 7五角(42)
59 6七銀(58)
60 4五歩(44)
61 7六銀(67)
62 4六歩(45)
63 7五銀(76)
64 4七歩成(46)
65 同 銀(38)
66 4六歩打
67 同 銀(47)
68 4七金打
69 6八角(59)
70 4八歩打
71 5九金(49)
72 4四金(43)
73 4五歩打
74 4六金(47)
75 同 角(68)
76 4五桂(33)
77 8八角打
78 3三銀(32)
79 7四歩打
80 3七桂成(45)
81 同 玉(28)
82 4九歩成(48)
83 同 金(59)
84 4五歩打
85 2四角(46)
86 同 銀(33)
87 4四角(88)
88 3三銀打
89 6六角(44)
90 4二飛(82)
91 4七歩打
92 6二銀(73)
93 2五歩(26)
94 1三銀(24)
95 2六桂打
96 4四角打
97 3五歩(36)
98 同 歩(34)
99 3四歩打
100 6六角(44)
101 同 銀(75)
102 4四銀(33)
103 3三角打
104 同 銀(44)
105 同 歩成(34)
106 同 玉(22)
107 3四金打
108 2二玉(33)
109 3三銀打
110 3一玉(22)
111 4二銀成(33)
112 同 玉(31)
113 6一飛打
114 5一角打
115 4三金打
116 3一玉(42)
117 3三歩打
118 投了
まで117手で先手の勝ち


20170407今日の一手(その489);相掛かりの知識、感覚

2017-04-07 | 今日の一手

20170407今日の一手

3月5日の名南将棋大会から、OさんとSさんの対局です。形勢判断と次の一手を考えてください。



一昨日の一手の回答
序盤から。

相掛かり系統の力戦で、(後手が飛車先の交換をしていなければありえますが)先手の77角~88銀が組み合わせとしてみない形です。後手から攻められる前に、35歩同歩46銀と攻めていきました。相掛かり相早繰り銀ということになるのでしょうか。珍しいです。
35歩同歩46銀に36歩は手筋。35銀に75歩

で攻め合いですが、後手としては77角成同銀22銀

というほうが穏やかです。つまらないようでも先手は36の歩を取りにくい(角打ちがある)ので後手が十分でした。

戻って

ここから24歩同歩同銀。そこでも77角成同銀76歩66銀22銀

としても後手が十分。持ち歩の数が違いすぎます。

もう一回戻って

24歩同歩同銀に77角成同銀44角

で問題図です。
☆ 形勢判断をします。
先手の1歩損です。持ち歩があるので損得なしとします。(後手が3歩持っているのは心強いところですが)
玉の堅さは同程度。右金が玉に近い分だけ先手玉が堅いとも言えますが、飛車打ちに弱くなっています。
先手の攻め駒は24銀と持ち駒角で2枚。26飛もすぐに使えそうではあります。
後手の攻め駒は44角84飛で2枚。

総合すれば互角です。

☆ 大局観として
角交換している形で11~99のラインに自陣角を打ったほうが有利、という戦型は時々出てきます。相掛かりがそれに当てはまるかといえば、当てはまらないほうが多いのではないか、と思います。飛車先を交換しているので23(あるいは87)の地点に利く筋違いになる自陣角を打つ方が有力なことも多いですし、相手玉が22の地点にいなくて、42とかせいぜい31なので直接ににらんでいません。相手の守りの銀を狙うだけでは効果が薄く、11(あるいは99)の香を取れるなら有力ですが。
問題図の44角は飛車を狙ったもので、でも打ち得でもないようか気がします。この位置の角が安定しているとも思えず、ましてや2筋の守りが後回しです。
言葉にすると長いのですが、後手の44角は危険で、ここは先手のチャンス、という感じがするのです。


× 飛車取りですから飛車を逃げる手から見てみます。28飛(あるいは27飛)と引くのは悪手で

27歩同飛26歩28飛と押さえられます。76歩66銀37歩成同桂36歩

手数が長いですが、押さえられた後は考えるまでもなく、簡単に悪くなります。


× 25飛と上に浮くとまだましですが

76歩66銀22銀

25飛の位置が悪く(昔はこれを高飛車といいました)、すぐに飛車当たりになってしまいます。つまり56角33桂に同銀成しかなく(飛車を引けば歩で止められる)33同玉

でこの後の手がありません。

また、56角ではなく45角がうまい手のようですが、85飛

と返されます。


○ 36飛は味が良さそうで

目ざわりな歩を払えるのです。後手は角を手放したので、28角とか37角とか打てません。
76歩66銀88歩同金65銀

というのが後手の攻め筋ですが、取らないで35銀22角37桂66銀同歩

というのは24歩や23歩や33歩などの攻めを見て、先手が指しやすいです。


× 35歩と打つのは

歩切れになるので考えにくいところ。76歩66銀22銀

の時に、45角から強攻するしかありません。52玉23銀成同金同角成15銀

16歩を突いていないので銀を打たれます。端を突いてあれば25歩同飛13桂という感じで、とにかく飛車を追われた時に飛車を捨てにくい形なのでうまくいきません。


○ 35銀と捨てるのはすぐに見えると思います。

この筋がうまくいく時とうまくいかない時があるので、先を読まないといけないのですが、25歩同飛33桂

となると後手が成功です。

でも25歩には36飛が幸便。

次に37桂~25桂と使うのが気持ちよいです。

後手は25歩が利かず、22角も24歩


ですから、35同角しかありません。

21飛成に44角が最善となるはずですが、56桂

があります。後手は11香まで取られたらだめなのですが、44角ではなく22銀には61竜、22銀打には34桂、とまずいことばかりです。
駒損なしに(銀を捨て桂を取り、桂で銀を取った)竜を作ったのですから先手有利。蛇足で、56桂に55角64桂同歩には66角

と合わせれば優勢です。


△ 実戦では35角と合わせました。

これは有利になるのを放棄した感じ。35同角同銀22銀

は後手は0手で24の銀を追い返したということになります。でも35銀の位置のほうが好形なので、損をしたのではないか、という気はします。
ここで実戦では先手から逆に66角と打ったのですが、23歩には24歩同歩同銀と攻める予定だったのでしょう。23歩に

23同銀成同銀(23同金には22角成)11角成に35銀

というのは後手のほうが良さそう

また、23歩に22角成

から22同金23銀不成と攻めるのも、今度は44角

がうまい反撃です。

ということで、先手の66角も不発に終わったはず。でも後手は55角

とこれもまた手堅く「角には角」で受けました。75歩66角同銀23歩

という進行は、先手がかなり得をした(持ち歩が2つで35銀の形)図です。
条件が良くなったので、45角54角同角同歩45角

から24歩同歩同銀をみれば十分でした。

実戦では角を打たずに34銀

としたので、37歩成同桂33歩45銀という進行。後手の65銀

が無理筋で、65同銀55角36飛99角成以下こういう図

後手の壁銀がひどいですね。61銀62金26角

ととにかく53の地点を狙えば受けなしでした。

それを74銀89歩成85銀打

と飛車を攻めにいったのが効果なく、88と から攻められて先手の負けに終わりました。



☆ まとめ
相掛かりでの66角(後手なら44角)というのはたまに出てはきますが、成立は微妙です。うまくいくときはきれいに決まりますが、自分から手を作るのはうまくいかない、と思っていたほうが良いです。
相手が動いてきた時にカウンターで打つもので、反撃の時に考えましょう。
相掛かりは飛車先を交換するので、32金22銀の形にすることに抵抗が少なく、これが案外に耐久力があります。少しだけ悪いような時に、手損でも22角成同銀88銀(後手なら88角成同銀22銀)とすることで、やってみれば大変だ、という結論になることが多いです。

問題図はその22銀を後回しにして44角と打ったところ。
素直に36飛でも先手十分でした。
強く35銀はその後の展開を読む必要がありますが、十分に成立していました。(この筋はうまくいくかどうかは場合によります。)

また、問題図以前ですが、相掛かりの早繰り銀は3筋が薄くなって隙ができやすいので、38金と備えることが多いです。本譜の36歩の突き出しは、38金とできない形なので効果があったのです。(序盤で後手が34歩をなかなかつかなかったので、あまり見ない形になりました。)

角換わりと相掛かりからの角交換になる形は似ているようでも持ち歩の数が違うので、かなり違う展開が多く、常識が違ってきます。この頃は角換わりの出だしで後手が2筋の歩交換を許す戦型もあり、境界があいまいになっていく傾向にありますが、戦型ごとの常識というのも、その違いを意識してインプットしておくと将棋の楽しみが広がります。