小林紀興の「マスコミに物申す」

第三の権力と言われるマスコミは政治家や官僚と違い、読者や視聴者の批判は一切無視、村社会の中でぬくぬくと… それを許せるか

今日22日、解散の大義が明らかになる。「憲法改正」を争点に総選挙が行われた時、日本は…。

2017-09-22 07:29:54 | Weblog
 第27回国連総会に出席していた安倍総理が、今日22日に帰国する。当然記者団に囲まれるが、その場で解散と解散の大義について明言するのか…。
 実は今回の解散劇は前回2014年の解散ときわめて似ている。14年のときも、安倍総理が海外歴訪の直前に突然解散風が吹き出し、やはり空港で記者団に囲まれた。ただ、出発前の安倍総理の発言は微妙に違う。
 14年のときは「私は解散は全く考えていない」と、永田町で吹き出した風を完全否定した。が、今回は「解散は帰国後判断する」と、事実上の解散宣言をした。この差は、単に日本を離れている期間の長短に由来するだけだろう。
 きわめて類似しているのは、総理の離日中に解散風がどんどん強まり、その間に「解散の大義名分」が大きく転換したことだ。そのことを、メディアはすっかり忘れているようだ。たとえば21日付読売新聞朝刊で、笹森編集委員が「首相の解散権」について長文の論文を書いている(偶然だろうが、当日のTV朝日『羽鳥モーニングショー』でも同様の特集を放映した)。
 笹森氏の記憶によれば、14年解散の「大義名分」は「消費税増税先送りの信を問う」としているが、実は違う。記憶の正確性を確認せず、思い込みで核ととんでもない間違いを犯すという好例だ。もっとも笹森氏だけでなく、BSプライムの反町MCも同じ発言をしていたから(20日)、思い込みを確認する必要性を認識していないジャーナリストが多すぎると言わざるを得ない。
 実は前回も今回も「大義なき解散」とメディアは論評しているが、大義名分のない解散などあり得ない。その大義名分が本当に解散で国民に信を問わなければならないほどの重要事であるか否かは別にしても、だ。そして前回と今回にはきわめて似た要素があるということに、メディアは気付いていないようだ。
 なぜ笹森氏や反町氏は勘違いしたのか。実は前回安倍総理が離日直前に吹き出した解散風は、当初「消費税増税の延期」を選挙の争点にするというアドバルーンだった。民主党政権の末期、野田総理は当時の自民党総裁の安倍氏に国会で「社会保障と税の一体改革」という民主党政権の政治課題を継承することの約束を取り付けて、「敵前逃亡」の解散に打って出た。この約束が、いわゆる「3党合意」であり、その柱の一つに消費税の2段階増税計画があった。
 だから安倍総理は当初、消費税増税の延期を言い出せば民主党が「3党合意の違反だ」と反発し、総選挙の争点になりうると考えていた。国民が消費税増税に反発することはわかりきっていたからだ。
 が、このアドバルーンは不発に終わった。民主党が「3党合意を守って消費税を計画通りに増税すべきだ」と主張しなかったからだ。そうした空気は逐一海外歴訪中の安倍総理にも伝えられていた。が、いまさら「解散やーめた」と翻意できるような状況にはなくなっていた。
 で、困った安倍総理が帰国時に囲まれた記者団に対して述べた解散の大義が、「アベノミクスの継続について国民の信を問う」だったのだ。最近でこそアベノミクスは失敗だったのでは…という疑問をエコノミストたちも言い出し、肝心のアベノミクス提唱者とされている浜田宏一・東大名誉教授ですら失敗を認めているという。
 今回の解散風も、14年のときと似た経緯をたどっている。当初吹き出した風は「消費税の増税分を若い世代の教育や人づくりのために使う」というものだった。消費税増税分の約5兆円の8割は財政資金に充てることになっていたが、国債という借金をさらに積み増しても高齢者に傾きすぎていたといわれる社会福祉を若い世代(子供も含む)に振り向けようという話だ。これを争点にできれば、世論は支持するだろうし、民進党が「財政再建が遅れる」と反発しても選挙に勝てると読んだのだ。
 が、今回もそのアドバルーンは不発に終わった。民進党代表の前原氏が「自分の考えにかぶせてきた」とコケにしたからだ。実際、前原氏は民進党の代表選で、同様のことを主張していたからだ。
 もちろん、そうした国内事情は事こまかく訪米中の安倍総理に伝えられていた。で、消費税増税分の扱いとは違う大義を探さなければならなくなった。一時、前回と同様「アベノミクスの継続について国民に信を問う」という案も出たようだが、総理自身が「いまだ道半ば」と言わざるを得ない状況では、むしろ敵に塩を送る結果になりかねないということで、アドバルーンにもならずにシャボン玉となって消えた。
 そうした中で急浮上したのが、いったん消えたはずの憲法改正論である。解散風が突然吹き出したのが16日。その翌朝、私はブログでこう書いた。
「が、解散総選挙に踏み切った場合、安倍総理に大義名分があるのか(※この時点では消費税増税分の扱いというアドバルーンは上がっていなかった)。憲法改正について国民に信を問う、というなら十分大義名分が成り立つが、肝心の足元である自民党内で9条をめぐり、ごまかし改正派(安倍総理など)と正統派(石破氏など)との間で調整がついていない。野党は憲法問題を争点にすることは間違いなく、自民はまた争点回避作戦に出るのだろうか」
 今日、安倍総理は解散宣言と同時に解散の大義名分を明らかにする。いまさら「解散やーめた」というわけにはいかなくなっているのは14年の海外歴訪中と同じ。私は17日のブログで、今回の解散総選挙の投票率は、戦後最低を記録した前回をすら下回る可能性があると書いたが、もし安倍総理が憲法改正問題を争点に解散するとなると、選挙戦がどうなるか、ちょっと読めなくなってきた。14年の総選挙のときは無党派層がしらけきっていたため(選択肢がなかったため)、投票率も戦後最低を記録したが、今回無党派層がどう判断するか、はっきり言って「いやーな」感じがする。

 実はメディアの世論調査で7月には内閣支持率が大幅に低下して(原因はモリカケ問題や稲田答弁問題などのスキャンダル)、支持・不支持が逆転した。8月は内閣改造効果で数ポイント支持率が回復したが、内閣支持率が再逆転するには至らなかった。
 本来内閣改造効果は短期間で消える。とくに8~9月にかけては国会が休会中であり、散発的に閉会中審議は行われたが、与党にとって有利な状況は全くなかった。むしろモリカケ問題で総理が逃げ回り、安倍総理が「将来の総理候補」とまで期待していた稲田・前防衛相を更迭改造せざるを得ないほど追いつめられていた状況だった。そうした中で、なぜ9月に入り内閣支持率が急回復したのか。とくにNHKの世論調査では支持・不支持が再逆転し、読売新聞に至っては支持率が8ポイントも上昇して50%に達した。
 その原因を、メディアは全く理解していない。自分たちの報道姿勢がそういう結果を導いたとは認めたくないからだろう。
 メディアは、民進党の混乱に原因を求めているが、世論調査による内閣支持率を左右するのは、選挙と同じく無党派層である。現に内閣支持率と一緒に行われる政党支持率は、支持基盤が固い自民・公明・共産の各党には大きな変化が見られない。支持率がじりじり下がり続けている民進党は、いままでは無党派層がある程度支えていただけで、その無党派層が離れた今の支持率が連合を中心とする固い支持基盤ということを意味する。だから民進党の支持率がこれ以上大幅に下がることはあまり考えられない(まだ無党派層の期待が固定支持基盤をかなり上回っていれば別だが…)。

 はっきり言って内閣支持率が急回復したのは、北朝鮮の暴走のおかげである。北朝鮮がミサイルを発射して、安倍総理には幸運にもそのミサイルが襟裳岬上空をかすめたことで政府がJアラートを発し、NHKはその都度、東北大震災や熊本地震のときでも中止しなかった朝ドラを中止してまで延々と北朝鮮の「挑発」行為を報道し、日頃安倍政権に厳しい朝日新聞すら大々的に日本が有事を目の前にしているかのような報道をする有様だった。
 私は1発目のミサイル発射時からブログで、北朝鮮の「挑発」行為は安倍総理にとって「たなぼた」的プレゼントになる、と書いてきたが、まさにその結果が内閣支持率の急回復だった。
 憲法改正が選挙の争点になった場合(99%そうなる)、民進党はどう出るか。前原代表は「受けて立つ」と強気の姿勢のようだが、おそらく民進党は「賛成」するわけにもいかないだろうが、かといって「反対」すれば確実に党が分裂する。さらに、民進党の出方次第では、これまで秋波を絶えず送り続けてきた共産党が民進党との選挙協力をあきらめる可能性が高い。
 そうなると、メディアに踊らされた無党派層が一気に選挙で与党候補に投票する可能性もあり、そうなると与党は一気に「たなぼた」的大勝利を収める可能性もある。あるいは、メディアがそうした異常な空気に気付いて報道姿勢を転換した場合は、無党派層が選択に困り、棄権や白紙投票が急増する可能性もある。
 私が一番恐れているのは、こうした異常な空気の中で有権者が与党に3分の2以上の議席を与えた場合、安倍一強が復活して一気に憲法改正になだれ込んでしまうことだ。そうなったとき、メディアはどう責任をとるつもりか。「オレ知ーらない」ではすまされない。(このブログの投稿日時を記憶しておいていただきたい)

コメントを投稿