小林紀興の「マスコミに物申す」

第三の権力と言われるマスコミは政治家や官僚と違い、読者や視聴者の批判は一切無視、村社会の中でぬくぬくと… それを許せるか

日銀・黒田総裁が放ったバズーカ砲が招くものは?

2014-11-05 07:55:07 | Weblog
 日銀・黒田総裁が放ったバズーカ砲が、「想定外」の結果を生んでいる。「想定外」と書いたのは、「想定内」の範囲を超えた急速な円安が国際為替市場で進みだしたからだ。
 事態を打開するための金融政策は、時には劇薬になる。それはかつてのバブル景気を退治した大蔵省(現財務省)の総量規制とタイミングを合わせた日銀・三重野総裁の金融引き締めが、その後の「失われた20年」を生み出す結果になったことからも証明されている。
 そもそも「インフレ=好景気」「デフレ=不景気」といった既成概念で経済政策を左右するという短絡思考そのものが、もはや時代遅れになっていることに気付かなければならない。
 安倍第2次内閣が成立したとき、まずぶち上げたのは「3本の矢」ではなく「デフレ脱却のための大胆な金融政策」と「景気刺激のための財政出動」の2本柱だった。「成長戦略」という3本目の矢が公にされたのはそのあとである。
 この時点で安倍総理がわが国経済の活性化のためにデフレ脱却が不可欠、とした判断はその時点では誰も批判していなかったし、デフレの原因が実力以上の円高にあると考えていたこともそれなりに合理性があったと私も思っている。
 が、すべて政策の妥当性は結果で判断される。日銀の金融緩和政策によって為替相場は1ドル=90円から110円前後に急速に円安に向かった。が、日本企業、特に輸出企業の国際競争力は円安効果によって回復したかというと、回復しなかった。はっきり言えば輸出量は拡大しなかったのだ。
 我が国輸出産業の代表格の自動車や電気製品の国際競争力は、為替操作によっては回復しなかったということが明らかになった。一般的には輸出企業とみられていたソニーなどは、円が1円安くなるごとに30億円の為替損失が生じることも明らかになった。ただ、ソニーのような例外を除いて輸出企業は史上空前の利益を計上している。輸出が伸びなくても、利益だけは増大する仕組みになっているからだ。
 簡単に説明しよう。1台1万ドルで売っていた輸出商品があったとしよう。1ドル=90円の円高時代には日本企業に入ってくるカネは1台について90万円だった。それが金融政策によって1ドル=110円になれば1台輸出するたびに日本企業に入ってくるカネは、何もしなくても110万円になる。これが円安効果による収益の増大と株高の実態だったのだ。
 円安誘導によって日本企業の輸出国際競争力が回復していれば、日本企業も生産の増大に向かうし、雇用も拡大する。設備投資も活発化し、経済の好循環が生じる。……安倍総理や黒田総裁はそう期待したのだろう。
「失われた20年」から何とか脱却したいという思いで、旧態依然としたケインズ経済政策にすがったのは、内閣成立時においては無理もなかったと私も思っ
ている。が、「政策の妥当性は結果によってのみ判定される」のである。意図がどうであろうと、政策の結果が期待を裏切ったならば、「政策そのものに間違いがあったのではないか」と考えるのが論理的であろう。
 安倍総理は予算委員会で「6~8月の賃金水準は上昇傾向にある。物価と収入のかい離は解消されつつある」と胸を張ったが、それはばらまき公共事業による現業労働者の賃金が上昇したためであって、高学歴若年層の雇用機会の増加を意味しているわけではない。
 
 むしろこれから心配なのは、輸出企業や金融機関にだぶついたカネが、いつ「バブル資金」に化けないかということだ。すでにアメリカではまたまた不動産を金融商品化した新バブル産業が生まれているようだ。アメリカも懲りない国だが、リーマン・ショックも含めて、これで3度目だ。
 だぶついた内部留保が社員の給与アップにつながれば内需の拡大につながるのだが、日本の企業は社員に対してそれほどやさしくはない。

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