錦織圭選手が、世界テニス界で最高とされているウィンブルドン選手権の4回戦の第2セットで棄権した。相手は因縁のチリッチ選手だった。
もちろん私も日本人だから、残念、という気持ちはある。が、そういう日本人としての感情とは別に、錦織選手の実力から考えて当然の結果とも思う。
錦織選手が一躍日本のテニス界のヒーローになったのは、2年前の全米オープンで準優勝したことによる。全米は全仏、全豪、全英(ウィンブルドン)と並ぶテニス界のメジャー大会である。この大会前の錦織選手の世界ランクは11位だった。が、錦織選手が決勝戦に進出した時点で世界ランクは8位にアップしていた。決勝戦の相手はミロシュ・チリッチ選手(カナダ)である。彼も決勝戦に進出した時点で世界ランクは15位から11位に躍進していた。
実は二人とも決勝戦に進出するまでつねに格上の選手と戦い、勝ってきた。錦織選手の決勝までの戦いについて、私は14年9月9日に投稿したブログの末尾にこう書いた。
これまでの試合はすべて格上の選手との戦いだった。世界ランク6位、4位、そして最後は1位(ノバク・ジェコビッチ選手)を撃破して決勝戦に進出した。ある意味では「攻め」の試合ができる相手だった。
が、決勝で当たるチリッチ選手は錦織選手にとっては初めての格下選手だ。「負けられない」という気持ちが前面に出てしまうと「攻め」の試合ができず、「守り」の試合になってしまう可能性もある。格下というだけでなく、対戦成績も5勝2敗で、3連勝中ということも、プレッシャーがかからない試合だと有利に働く条件だが、グランドスラムという大きな大会の決勝戦ではかえって不利な条件になりかねない。戦前の二人のインタビューの映像を見ていても、チリッチ選手のほうに余裕すら感じた。悪い予感が当たらなければいいのだが…。
決勝戦が始まる前に書いて投稿したブログだが、結果的には私の悪い予感が当たってしまった。実はこのブログで私はこうも書いていた。
「錦織選手の最大の敵は自分自身だ。プレッシャーをどう撥ね付けるかに勝敗の行方はかかっている」
全米オープンで優勝したチリッチ選手はさらに世界ランクを上げたが、錦織選手はランクを一つ落とした。が、今回のウィンブルドンに出場した錦織選手の世界ランクは6位である。4回戦で棄権したことがランクにどう反映するかは、現段階では分からない。が、少なくともアップすることは考えられない。
錦織選手が途中棄権したのはなぜなのだろうか。もともと試合前から故障を抱えていたという話も棄権後にテレビニュースで流れた。故障していたのなら、なぜ無理をして出場したのだろうか。故障を抱えていても勝てるチャンスがあると思っていたのだろうか。だとしたら、自惚れも甚だしい。
そもそもテニスの世界ランクがどうやって決められているのか私には分からないが、たぶんゴルフの世界ランクと同じ方法ではないかと思う。
ゴルフの場合、アメリカの試合であろうと日本の試合であろうと、その国の公式試合で獲得した賞金額の多寡で決まる。また世界ランクとは別に各国の公式試合での獲得賞金で、それぞれの国の賞金王(賞金女王)が決められる。テニスの場合、各国での賞金王(賞金女王)にだれがなったという話を聞いたことがないので、国内での賞金ランクはないのだと思う。
その理由の最たるものは、ゴルフの場合、シーズン中はほぼ毎週公式試合が行われるが、テニスは公式試合を毎週行うことが不可能だからだと思う。テニスの公式試合を毎週行うためには、コートが何面必要かを考えただけでも不可能だということが分かる。さらに1試合(1日)の運動量もゴルフとテニスではまるで比較にならない。
他のスポーツで考えてみよう。たとえば相撲は1試合にどれだけ時間がかかるか。もしテニスのような勝敗の決め方をしていたら、15日間ぶっ通しで本場所をやれるわけがない。
野球はどうか。野手は1週間に6試合やっても運動量はそれほどでもないから、怪我でもしなければ毎日試合に出る事は出来る。が、投手は野手と運動量がけた違いに違うから先発投手は1週間に1回というペースが通常である(アメリカでは先発投手4人でローテーションを組んでいるというから、日本人より体力がよほど強靭なのだと思う)。
こんなことを書いたのは、錦織選手の場合、世界ランクを維持するため無理をし過ぎているのではないかと、常々感じていたからである。今年錦織選手が公式試合で勝ったのは、たぶん1回だけだったと思う。その1回の大会の名前も分からない。NHKが7時のニュースでその大会で錦織選手が4連覇したことを大々的に報道したが、どの国で行われたどういう名前の大会かは明らかにしなかった。私はNHKの「ふれあいセンター」の電話をして、その疑問を伝えた。名前がつかない公式試合などありえない。これは野球でいえばウェスタンリーグやイースタンリーグクラスの二流試合なのではないか、と。NHKは9時のニュースでは「一流選手は出場していませんでしたが」と試合の格付けをしたうえで、錦織選手の4連覇をたたえた。
私がこのブログで言いたかったのは、別に錦織選手にケチをつけることが目的ではない。世界ランクを維持することを第1目標にして、勝てる可能性が高い試合なら賞金がどんなに少なくても公式試合であれば出場するという考え方を持ち続ける限り、メジャーな試合に万全な体制で臨むことは不可能だということを言いたかっただけだ。
現にジェコビッチ選手が試合に出場する回数はおそらく世界で一番少ないのではないかと思う。メジャー大会など、賞金が莫大な試合に万全な体制で出場するため、練習も含め故障をしないことを最優先しているはずだ。
ゴルフも同様で、一流選手はテニスほどの体力の消耗がないにもかかわらず、賞金が少ない大会には出ない。
錦織選手がこれから世界の本物の一流選手になるためには、とりあえず世界ランクにこだわらず、試合数を減らすべきだと思う。現時点では一応錦織選手は世界ランク6位だが、錦織選手の世界ランクベスト10の相手との対戦結果を調べてみれば、勝率はおそらく2~3割くらいではないか。ひょっとしたら、2割にも届かないかもしれない。世界ランクは必ずしも選手の実力を正確に反映はしない。2流、3流の試合でも優勝すれば多少の賞金は入るから、それで世界ランクは維持できるのかもしれない。が、メディアはそうした世界ランクで、錦織選手に限ったことではないがヒーロー扱いすると、かえって伸びしろの選手の芽を摘んでしまうことになりかねないことを自覚してほしい。
もちろん私も日本人だから、残念、という気持ちはある。が、そういう日本人としての感情とは別に、錦織選手の実力から考えて当然の結果とも思う。
錦織選手が一躍日本のテニス界のヒーローになったのは、2年前の全米オープンで準優勝したことによる。全米は全仏、全豪、全英(ウィンブルドン)と並ぶテニス界のメジャー大会である。この大会前の錦織選手の世界ランクは11位だった。が、錦織選手が決勝戦に進出した時点で世界ランクは8位にアップしていた。決勝戦の相手はミロシュ・チリッチ選手(カナダ)である。彼も決勝戦に進出した時点で世界ランクは15位から11位に躍進していた。
実は二人とも決勝戦に進出するまでつねに格上の選手と戦い、勝ってきた。錦織選手の決勝までの戦いについて、私は14年9月9日に投稿したブログの末尾にこう書いた。
これまでの試合はすべて格上の選手との戦いだった。世界ランク6位、4位、そして最後は1位(ノバク・ジェコビッチ選手)を撃破して決勝戦に進出した。ある意味では「攻め」の試合ができる相手だった。
が、決勝で当たるチリッチ選手は錦織選手にとっては初めての格下選手だ。「負けられない」という気持ちが前面に出てしまうと「攻め」の試合ができず、「守り」の試合になってしまう可能性もある。格下というだけでなく、対戦成績も5勝2敗で、3連勝中ということも、プレッシャーがかからない試合だと有利に働く条件だが、グランドスラムという大きな大会の決勝戦ではかえって不利な条件になりかねない。戦前の二人のインタビューの映像を見ていても、チリッチ選手のほうに余裕すら感じた。悪い予感が当たらなければいいのだが…。
決勝戦が始まる前に書いて投稿したブログだが、結果的には私の悪い予感が当たってしまった。実はこのブログで私はこうも書いていた。
「錦織選手の最大の敵は自分自身だ。プレッシャーをどう撥ね付けるかに勝敗の行方はかかっている」
全米オープンで優勝したチリッチ選手はさらに世界ランクを上げたが、錦織選手はランクを一つ落とした。が、今回のウィンブルドンに出場した錦織選手の世界ランクは6位である。4回戦で棄権したことがランクにどう反映するかは、現段階では分からない。が、少なくともアップすることは考えられない。
錦織選手が途中棄権したのはなぜなのだろうか。もともと試合前から故障を抱えていたという話も棄権後にテレビニュースで流れた。故障していたのなら、なぜ無理をして出場したのだろうか。故障を抱えていても勝てるチャンスがあると思っていたのだろうか。だとしたら、自惚れも甚だしい。
そもそもテニスの世界ランクがどうやって決められているのか私には分からないが、たぶんゴルフの世界ランクと同じ方法ではないかと思う。
ゴルフの場合、アメリカの試合であろうと日本の試合であろうと、その国の公式試合で獲得した賞金額の多寡で決まる。また世界ランクとは別に各国の公式試合での獲得賞金で、それぞれの国の賞金王(賞金女王)が決められる。テニスの場合、各国での賞金王(賞金女王)にだれがなったという話を聞いたことがないので、国内での賞金ランクはないのだと思う。
その理由の最たるものは、ゴルフの場合、シーズン中はほぼ毎週公式試合が行われるが、テニスは公式試合を毎週行うことが不可能だからだと思う。テニスの公式試合を毎週行うためには、コートが何面必要かを考えただけでも不可能だということが分かる。さらに1試合(1日)の運動量もゴルフとテニスではまるで比較にならない。
他のスポーツで考えてみよう。たとえば相撲は1試合にどれだけ時間がかかるか。もしテニスのような勝敗の決め方をしていたら、15日間ぶっ通しで本場所をやれるわけがない。
野球はどうか。野手は1週間に6試合やっても運動量はそれほどでもないから、怪我でもしなければ毎日試合に出る事は出来る。が、投手は野手と運動量がけた違いに違うから先発投手は1週間に1回というペースが通常である(アメリカでは先発投手4人でローテーションを組んでいるというから、日本人より体力がよほど強靭なのだと思う)。
こんなことを書いたのは、錦織選手の場合、世界ランクを維持するため無理をし過ぎているのではないかと、常々感じていたからである。今年錦織選手が公式試合で勝ったのは、たぶん1回だけだったと思う。その1回の大会の名前も分からない。NHKが7時のニュースでその大会で錦織選手が4連覇したことを大々的に報道したが、どの国で行われたどういう名前の大会かは明らかにしなかった。私はNHKの「ふれあいセンター」の電話をして、その疑問を伝えた。名前がつかない公式試合などありえない。これは野球でいえばウェスタンリーグやイースタンリーグクラスの二流試合なのではないか、と。NHKは9時のニュースでは「一流選手は出場していませんでしたが」と試合の格付けをしたうえで、錦織選手の4連覇をたたえた。
私がこのブログで言いたかったのは、別に錦織選手にケチをつけることが目的ではない。世界ランクを維持することを第1目標にして、勝てる可能性が高い試合なら賞金がどんなに少なくても公式試合であれば出場するという考え方を持ち続ける限り、メジャーな試合に万全な体制で臨むことは不可能だということを言いたかっただけだ。
現にジェコビッチ選手が試合に出場する回数はおそらく世界で一番少ないのではないかと思う。メジャー大会など、賞金が莫大な試合に万全な体制で出場するため、練習も含め故障をしないことを最優先しているはずだ。
ゴルフも同様で、一流選手はテニスほどの体力の消耗がないにもかかわらず、賞金が少ない大会には出ない。
錦織選手がこれから世界の本物の一流選手になるためには、とりあえず世界ランクにこだわらず、試合数を減らすべきだと思う。現時点では一応錦織選手は世界ランク6位だが、錦織選手の世界ランクベスト10の相手との対戦結果を調べてみれば、勝率はおそらく2~3割くらいではないか。ひょっとしたら、2割にも届かないかもしれない。世界ランクは必ずしも選手の実力を正確に反映はしない。2流、3流の試合でも優勝すれば多少の賞金は入るから、それで世界ランクは維持できるのかもしれない。が、メディアはそうした世界ランクで、錦織選手に限ったことではないがヒーロー扱いすると、かえって伸びしろの選手の芽を摘んでしまうことになりかねないことを自覚してほしい。