飛び出せ! 北の宇宙基地

北の地である北海道で、人工衛星の開発などを行っている 北海道工業大学 佐鳥研究室の活動日記です。

宇宙関連情報: 通信衛星の特許侵害

2008-05-22 07:21:40 | 北海道衛星
通信衛星「AMC-14」の軌道変更作業が座礁、静止軌道へのトランスファ軌道は特許侵害

米通信会社SES アメリコム社が先月15 日、ロのプロトンロケットで打
上げた放送通信衛星「AMC-14」運用放棄を宣言する方向で最終
調整入りをしていることが10 日までに明らかとなった。AMC-14 は打上
げに用いられたプロトンロケット2 段ロケットブースタ不調により、予定3
万5000 キロ軌道投入に失敗。2 万8000 キロ軌道上に放出されてい
た。SES ア社では衛星が搭載している軌道修正用ブースタを使って3
万5000 キロ軌道に衛星を移すことを計画していたが、その後の調査に
より、検討されている中軌道から静止軌道に衛星を移動させるために
は地球引力を利用した特殊フライバイを実行する必要があり、この軌
道コースは月へ宇宙船を投入するためのフライバイ用にボーイング社が
特許を取得済みであることが判明。SES ア社では、ボ社に対して特許
使用の交渉を行ったが、SES ア社は現在、ボ社に対し別案件で5000
万ドル(約50 億円)の損害賠償請求訴訟を起こしており、ボ社側は
5000 万ドルの損害賠償請求引下げを条件にフライバイ軌道の特許
使用を認めると発言。AMC-14 をフライバイ軌道を使って静止軌道に
投入した場合、衛星は搭載している燃料大半を使い果たしてしまうこ
とともなり、衛星寿命は当初予定の15 年から4 年超に減少。SES ア
社では4 年の衛星寿命で対価50 億円分を支払うことは、採算に合わ
ないと判断した模様。しかし、SES ア社が衛星喪失(Total loss)を宣
言して、保険会社から衛星保険料支払いを受けるには、衛星を静止
軌道外側に移動(Deorbit)させ衛星軌道を開ける必要があるが、現
状では静止軌道外側に移動も困難ということもあり、SES ア社では衛
星の喪失宣言することもできずに事態に苦慮している。無傷の人工衛
星が大手企業間の訴訟案件などの軋轢など政治的な要因で運用が
断念される事態に陥るというのは極めて異例の出来事となることもあり、
欧米露の宇宙業界では今、この衛星の行方に関心が集まっている。

http://www.technobahn.com/cgi-bin/news/read2?f=200804111940&page=2