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第156回 奇人列伝-2 カントほか

2016-03-11 | エッセイ

 少し間(あいだ)が空いてしまいましたが、「万国奇人博覧館」(J・C・カリエール/G・ベシュテル 守能信次訳 ちくま文庫)から、ユニークな奇人、奇行のエピソードの第2弾をお届けします。

<クンブメーラ>
 インドで12年に一度行われるヒンドゥー教最大の行事が「クンブメーラ」。1989年には、1400万人が参集したとも言われる。とにかく人だらけです。


 各地から、膨大な数の行者も集まってくる。8年前から、片足立ちを続ける行者がいて、弟子たちは、腫れて浮腫(むく)んだ彼の両脚(片方は折り曲げたまま固定している)をマッサージする。そのほか、12年も右腕を宙にあげたままの苦行僧もいれば、物を一切言わぬ人、目を灰で覆って見えなくした人、昼間はひたすら太陽を見続ける行を自らに課し、盲目になっても続けている人、眠りを禁じている人、なかには、体の一部を自分で切断する苦行もあるというから、すさまじい。

<おならクラブ>
 フランスのカーンに実在したクラブ。屁の解放と頌徳を目的とするクラブで、正式名は「自由放屁者の会」。総会は、3月15日頃(この頃が放屁に最適の季節だからという理由で)に開かれた。議長の開会宣言を兼ねた放屁に始まり、議事の節目節目での賛意を示す放屁が義務づけられていたという。

<カント>
 かの大哲学者カントもかなりの奇人として知られた人。毎日の行動は、極めて規則正しく、起床、講義の開始・終了、昼食、食後の散歩など、1分として狂わず、町の人も彼の行動を見て、時計を合わせたほどだと言う。健康にも異常なほど気をつかい、ドイツ人でありながら、ビールを嫌悪した。部屋の温度は、きっかり14度でなくてはならず、使用人には、プラスマイナス1度の違いしか許さなかった。

<ヤバいローマ教皇史>
 初期のカトリック教皇史は、天才と聖人と狂者が巻き起こした喧噪と恐怖に満ちている。老齢になっても家族の意に反してなかなか死ぬことをしなかったヨハネス8世(在位872~82)は、毒を盛られ、ハンマーの一撃で息の根を止められている。セルギウス2世(同904~11)は、前任者ふたりの暗殺者であった。ヨハネス12世(同955~63)は、20歳で教皇の座についたが、その経緯がよく分からない人物。ただの悪党、放蕩者でしかなく、悪事の数々を、法衣を付けたまま行った。最後は、妻を寝取られた夫にこっぴどくやっつけられ、それがもとで、1週間後に死んでいる。

<行列が趣味>
 あるイギリスの新聞が、現代イギリスの奇人ジョン・コニッシュという人物を取り上げている。すでに社会の一線をしりぞいているが、商店の行列に並ぶのを無上の生き甲斐としている。自分の番が来ると、店員に待ち時間を正確に記入した証明書を書いてもらうのだが、すでに3冊のアルバムが一杯だという。彼の秘かな楽しみは、第三次世界大戦の勃発。「行列が増えるから」。なんたるブラックユーモア!

 いかがでしたか?いずれ続編をお送りする予定です。ご期待下さい。

<追記>奇人列伝の過去分、以降分へのリンクです。<その1(旧サイト)><その3><その4><その5>。合わせてご覧いただければ幸いです。

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