モールス符号というのをご存知でしょうか。短音(トン)と長音(ツー)を組み合わせた文字コードのことで、電気信号にして、無線などで情報をやりとりするのに使われました。
ネットや衛星通信の時代になって、いまや出番は、アマチュア無線くらいという状況ですが、この通信方法にまつわるエピソードをいくつかご紹介します。
モールス符号は、1音だけのものから、2音、3音、そして最大5音のものまでがあります。だから、どんどん入ってくる「トン」と「ツー」の洪水のどこが文字の切れ目になるかを、瞬時に判断するスキルが必要なんですね。
かつての会社の先輩から聞いた無線電信の実習での苦い思い出話。
「教官っ、先ほどから、「ガ」「ガ」って送られて来るんですけど、、、」
「バカ、それはおまえがモタモタしてるから「ヘボ」って、からかわれてるんだ」
つまりこういうことです。
「ヘ」に当るのは、1音で、「トン」、「ホ」は、「ツー・トン・トン」、濁点は「トン・トン」です。正しく区切れば、「ヘボ」となります。これを、「トン・ツー・トン・トン」+「トン・トン」と誤って解すると、「カ」+濁点で「ガ」になる、というわけです。
第二次大戦中、イギリスのBBCはあらゆるニュースの冒頭で、ベートーベンの交響曲第五番(運命)の冒頭の「だだだだぁ~ん」を流していました。モールス符号だと「トン・トン・トン・ツー」になって、アルファベットでは「V」(Victoryの頭文字)になります。敵国ドイツの作曲家の曲を使っての粋なメッセージです。さすが、最後に勝つ国。
こちらも、ボーイスカウトくらいでしか使われないと思いますが、ついでに、手旗信号の話を少し。
右手に白旗、左手に赤旗を持って、両手の挙げ方、角度を組み合わせて、文字を表します。
核軍縮(Nuclear Disarmament)キャンペーンで使われているお馴染みのピースマークですが、頭文字のNとDの手旗信号を組み合わせているんですね。円の中のYの文字を逆さまにしたような部分がN(両手を45度下に向けた形)を、そして、円を半分に分ける縦の棒が、D(右手を真上、左手を真下に向けた形)というわけです。
ビートルズのアルバムで、「HELP!」というのがありました。曲はお馴染みですが、ジャケットを覚えていますか?黒いマントを着た4人が、手を挙げたり、横にしたりしています。下の画像がそのジャケットです。
もともとは、H、E、L、Pの各文字を手旗信号で表したかったそうですが、ヴィジュアル的にどうも・・・ということで、結局、手旗信号として見れば「NUJV」というまったく意味のない組み合わせになった、と言う次第だそうです。
いかがでしたか?それでは次回をお楽しみに。