★★★ 芦坊の書きたい放題 ★★★

   
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第303回 ひけらかしコメント集ー居庵さん追悼

2019-01-25 | エッセイ

 親しくしていただいていた居庵さんが急逝された、との知らせを、つい先日、お店のマスターから受けた時は、茫然とし、言いようのない喪失感に襲われました。
 お店でご一緒した折には、反骨精神が豊かで、経験に裏打ちされた豊富な知識、話題をユーモアで包んだ「ひけらかし」(ご本人の弁)で、会話が弾んだことを思い出します。

 また、4年前くらいからでしょうか。当「書きたい放題」へのコメントを、お店のネット掲示板に、こまめにアップしていただいていました。時にプレッシャーも感じましたが、何よりの励み、糧(かて)でしたので、今はただ感謝の気持ちで一杯です。

 そんな居庵さんへの追悼の気持ちを込めて、いただいたコメントのごく一部を、あらためてご紹介することにしました。しばしお付き合いください。(★と★の間が居庵さんのコメントです)

 山形県米沢出身の居庵さんの故郷に寄せる想いは格別だったようで、大阪の難読地名を話題にした時は、クイズ形式でこんなコメントをいただきました。

★難読地名というのは、知っていれば当たり前だけれど、知らなきゃ分からないと言うことなのでしょうね。むろん私は東京だから、九品仏や等々力がなんで難読?と思います。でも、西の外れの青梅線には、読めない駅名があります。じゃ、私は米沢近辺から。

高豆蒄
及位
梨郷
左沢
鬼面川

上から順に「こうずく」、「のぞき」、「りんごう」、「あてらざわ」、「おものがわ」。
どうでした?★

 反骨精神といえば、東京藝大の特異な入試システムなどを採り上げた時は、こんなコメントがありました。

★私、アルバイトで全国高校長会議のテープ起こしをしていました。時は、全共闘運動が高校にも広がっていたころ。ゲストに呼ばれたのは、藝大の学長。
「芸術を愛する情緒があれば、全共闘運動なんて起こりません。藝大には、そんな動きは一切ありません」3ヶ月後には、「藝大全共闘」が結成されました。ざまぁみろ。★

 "SOS"でお馴染みのモールス信号を話題にした時は、お父様のかつてのお仕事ぶりが垣間見えました。

★芦坊さん。知ったかぶりですが、SOSOSOと連発するのだそうです。途中から受信しても分かるように。満州電信電話会社にいた父親からの知識です。
ちなみに、タイタニックの事故の時、近くの漁船はSOSを受信していたのに、緊急信号とは思わなかった。できたばかりだったので。その船より遠くにいた船が、救助に駆けつけた。★

 大阪で仕事をなさっていた時期がおありでしたので、私の関西ネタ、大阪弁講座にも、よく「食いついて」いただきました。海外でのご活躍ぶりも伺えるこんなコメントも。

★夕方「ちょっと飯食いに行こか?(飯食ったことがない。飲みに行こかのこと)」「あ、ちょっと金が・・・」「構へん、構へん」。こういわれるの、私大好きです。
中国の瀋陽で大阪の展示会があり、私もそこに行ってました。まだ会期の途中、10歳以上うえの先輩が、部屋に入ってくるなり、「なにもいわんと聞いたって。このとおりや」と土下座しました。大阪人は、臆面もなくこういうことをやる。
「分かりました。で、なにをするんです」というまで、なにも話してくれない。「明日朝、香港に行ってくれ」。目が点になった。★

 連句の会、俳句の会の常連で、落語とか音楽にも造詣が深かった趣味人でしたね。忘年会でのスタンダップ落語が忘れられません(あまりウケませんでしたが・・・)。芸能界の面白ネタを採り上げた時には、こんな「通」ぶりも。

★1970年に終わった、寄席の「人形町末廣」。もう終わるという正月に、行きました。ぎっしりの客。「お膝送りを、お願いします」。椅子席ではなかったから、もっと詰めてということだけれど、初めて聞いた言葉でした。
「止(や)めないでくれぇ~」という客に立川談志は、「馬鹿野郎。てめえらが来ねえから、止めるんだよ!」。★ 末広亭の写真を見つけました。


 人名にまつわる話題には、こんなユーモア溢れるコメントで、ご自身の俳号の由来を明かしておられます。

★私、たくさんの名前を持っていたのですが、自分でも傑作だと思うのは「佐藤俊夫」。母親の旧姓と友人の名前を組み合わせたのですが、よく読めば「砂糖と塩」。
誰かの推理小説に、「砂糖と塩」だぁ?ふざけた名前つけやがってと刑事が言うシーンがあって、使うのを止めましたが。
そういえば私の「居庵」は、元はmixiのハンドルネーム「イワン」。「イワンの馬鹿」が語源です。Skypeの名前は、「ivanthefool」。★


 返す返すも残念です。悔しいです。でも「生きにくい世の中だけど、しっかり生きろ」そんな激励の声も聞こえてくる気がします。居庵さんのご冥福を、心からお祈りします。

 個人的な追悼の記事にお付き合いいただき、ありがとうございました。当ブログを引き続きご愛読ください。
 


第302回 スゴい昆虫たち

2019-01-18 | エッセイ

 折に触れて、動物、植物の不思議な話、スゴい話をご紹介しています。そんな本を意識して探したり、チェックしたりしてるわけじゃないんですけど、その手の話題が好きなんでしょうね、やっぱり目に飛び込んで来ます。

 というわけで、今回は、「昆虫はすごい」(丸山宗利 光文社新書)と、まんまのタイトルの本から、驚異的なエピソードをいくつか、ご紹介します。

<ゾンビを操る>
 エメラルドセナガアナバチ(熱帯アジアに広く生息する蜂の一種)の幼虫は、ゴキブリを食べて成長します。親バチは、産卵のための場所であり、幼虫のエサともなるゴキブリ(当然、親バチより大きいです)を捉えなきゃいけないんですけど、その工夫がスゴいです。

 2回に分けて、ゴキブリに毒を注入するというのです。

 まず、1回目は、胸部神経節に注入して、前脚を緩やかにマヒさせます。
 そして、2回目は、逃げる反射神経を司る神経に刺します。これによって、かろうじて歩けるんですけど、逃げることはできない「ゾンビ」のようなゴキブリができあがります。そして、その触覚をくわえて、巣穴まで運んできて、そのゴキブリに産卵する、というわけです。

 蜂ですから、その種の毒を体内で造るのは、そう不思議でもないんですけど、2回にわたって、ピオンポイントで、的確に毒を注入する技術に唖然とします。そういう能力、スキルが遺伝子情報として組み込まれてる、ということなんでしょうけど・・・

<贈り物作戦>
 オドリバエというハエの仲間のオスは、獲物の昆虫をメスに見せ、それを目当てに飛びかかるメスと交尾を行う、というんです(なんだか身につまされるやり方ですが)。

こんなハチです。


 ただ見せるだけじゃないんですね。このハエの中には、獲物を前脚から出る糸でくるみ、いわばギフトラッピングして、渡すものもあるのが可笑しいです。

 また、中味はからっぽで、糸だけでできた風船状の偽の贈り物でメスと交尾する種もいる、というから、一種の結婚詐欺みたいなやり方。昆虫の世界もいろいろ大変なようです。

<宝くじ並みの寄生>
 カギバラバチ(蜂の一種)は、植物の上に、膨大な数の繊細な卵を産みつけます。
 次に、「たまたま」その葉を食べたイモムシの体内で、卵が孵化します。そして、そのイモムシを「たまたま」捕えたスズメバチが、その身を肉団子にして、幼虫に与えます。

 運良く(といっても「たまたま」が2度続かなければならないわけで、奇跡に近いです)、スズメバチの幼虫の体内に入ったカギバラバチの幼虫は、スズメバチの体内を食べ、それを食い破り、さらに外から食べ尽くす、という次第です。
 宝くじ並みの極めて低い確率ですけど、数に頼って、種を保存する。こんなアイディアもありなんですね。

<動物界最速の動き>
 アギトアリ(世界中の熱帯に生息するアリの一種)は、その長く発達した大顎が特徴です。狩りに出かける時、その大顎を全開にして、獲物を見つけると、ゆっくりと近づきます。

 大顎のつけねに長い毛が生えていて、それが獲物に触れると、時速230キロメートルで閉じ、獲物を挟むというのです。時間にすれば、わずか、わずか0.13ミリ秒(1ミリ秒は、1000分の1秒)。これじゃあ、逃げようがありません。確かに、動物界最速かも。

 いかがでしたか?それでは次回をお楽しみに。


第301回 プロレス界の悪役の変遷

2019-01-11 | エッセイ

 お待たせしましたっ!新年第1回目であり、400回に向けての第一歩でもありますので、「おめでたく」関西ネタをお届けします。

 いきなりプロレスの話題から入りますが、「関西・大阪」に落とし込む予定ですので、最後までお付き合いください。

 さて、私は、力道山の時代から、ジャイアント馬場、アントニオ猪木あたりまでをカバーしてきたごく普通のプロレスファンです。

 人並みに、日本人レスラー(当時は、「力道山」の出自が朝鮮半島だというのは、知りませんでした)に肩入れして、テレビの中継を観てました。
 でも、なんだかんだ言っても、強烈な印象を残し、存在感を示したのは、業界で「ヒール」と呼ばれる悪役レスラーたちで、もっぱら「外人の担当」と決まっていました。

 力道山の時代だと、フレッド・ブラッシーなんて名前を思い出します。得意技は、金髪を振り乱しての「噛み付き」です。グレート東郷という日系レスラーとの対戦がテレビ中継されましたが、流血まみれの凄惨な試合で、数名のお年寄りがショック死するという「事件」まで起こりました。新聞でも、結構大きく報道されたのを覚えています。

 さて、そのグレート東郷ですけど、得意技は、頭突きと凶器攻撃。一応、日本人側なんですけど、反則と凶器攻撃で、日本人レスラーの足を引っ張るというちょっと困った「ヒール」でした。
 実は、日本でリングに上がる前に、本場アメリカで、徹底的にヒールをやってきた筋金入りのレスラーです。日露戦争勝利の立役者である東郷元帥を連想させるリングネームからして、アメリカ人の神経を逆なでします。
 そこへ持ってきて、得意ワザは、相手の背後から下駄で襲うというもの。名付けて「パールーハーバー・アタック」
 ますますアメリカの観客の神経を逆なでして、命の危険にさらされたこともあるといいますから、ヒールに徹したレスラー人生だったと言えます。

 馬場、猪木時代だと、得意技は栓抜き攻撃と頭突きのアブドラ・ザ・ブッチャーとか、たいしたワザはないんですけど、やたらサーベルを振り回すタイガー・ジェット・シンなんかも頭に浮かびます。

 そんな事を思い出すきっかけになったのは、「関西人の正体」(井上章一 朝日文庫)という本です。京都出身の著者が、関西人にまつわるあれやこれやを、時に自虐的に、時に批判的に語って、なかなか読ませるのですが、その中に、なぜか「みちのくプロレス」の話題が出てきます。

 東北地方を中心に興行を行っている団体で、代表的なレスラーには、ザ・グレート・サスケなんかがいます。プロレス団体として興行していくのですから、ヒール役が必要なのですが、この団体がユニークなのは、地域性を重視して、「関西人」にそれを割り当てていることです。

 まあ、東北人同士で、敵味方というわけにもいかないでしょうし、四国、九州あたりでも、その地方の人からは恨みを買いそう・・・・関西やったら、本気で怒るヤツなんかおらんやろし、かえって面白がるんちゃうか・・・そんなことじゃなかったんでしょうか。関西出身の私でもそうすると思います。

 まずは、「スペル・デルフィン」。得意技は、「大阪弁」。
 「このボケェ~、さっさっとかかってきたらんかい!」
 「じゃっかましわ、おまえの方から、先にいてもたろかぁ~」
 居合わせたわけじゃないですが、きっとこんな大阪弁で、東北人の観客や相手レスラーを挑発したんでしょうね。そんな憎たらしい大阪人を、岩手出身の正義の味方サスケがやっつけて、東北人はやんやの喝采、溜飲を下げる、というのが、概ねの流れ。

 もう一人は、愚乱・浪花(ぐらん・なにわ)という覆面レスラー。
 で、その仮面(写真左)というのが、大阪ではお馴染みの「かに道楽」のでかい動く看板を模したもの。ホンモノの看板(写真右)より、ちょっとショボいのもご愛嬌。



 そして、リングに登場するときのテーマ曲は、もちろん「とーれ、とーれ、ピーチ、ピチ、かに料理~」と店のコマーシャルソング(関西では、誰でも知ってるナニワの巨匠キダ・タローの作曲)だというから、徹底した大阪のノリ。

 残念ながら、「スペル」は引退して、今や、大阪府和泉市議、「愚乱」は、2010年に33歳で急逝していて、上記のエピソードは、過去形になりますが・・・・
 でも、「みちのくプロレス」のウェブサイトを見ると、「バッド・ボーイ」と称する7名のヒールとおぼしきメンバーのプロフィールが載っています。そのうち2人は京都出身で、足立区2人、神奈川、北海道、秋田各1人という構成です。

 大阪出身がいないのが寂しいですが、東北対関西という対決の構図は、ぎりぎり維持されているようなので、それぞれのポジション、キャラでがんばって欲しいものです。「ヒール」あってのプロレスですから。

 いかがでしたか?次回をお楽しみに。


新年のご挨拶

2019-01-01 | エッセイ

 新年あけましておめでとうございます。皆様、いかがお過ごしでしょうか。


 どう見ても、豚ですけど、今年の干支のイノシシに似てるので、代用させてもらいました。木彫りで、ちょっと荒っぽい塗りがいい味を出してると、お気に入りの一品です。松任谷正隆(ユーミンのダンナです)行きつけの店で、随分前に買いました(我ながらミーハーですが)。

 なお、通常の記事アップは、1月11日(金)からの予定です。


 本年も、当「芦坊の書きたい放題」のご愛読と、いつものお店での変わらぬお付き合いをよろしくお願いいたします。
 あわせて、皆様方のますますのご健勝、ご活躍をお祈り申し上げます。 芦坊拝