★★★ 芦坊の書きたい放題 ★★★

   
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第351回 笑い納め2019年

2019-12-27 | エッセイ

 今年も、世の中では腹立たしいこと、いやなこと、痛ましいことなど様々ありました。そんな世相を笑い飛ばそうと、私的にはすっかり恒例となっている「笑い納め」をお届けします。ネタ元は「ご笑納ください」(高田文夫 新潮文庫)です。
 元々は放送作家にして、現在は、「ラジオビバリー昼ズ」(ニッポン放送)のパーソナリティとしても活躍している高田文夫に親しんできました。ご存知、この方です。


 根っからの江戸っ子で、歯切れのよい絶妙で軽妙なトークも楽しいですが、書き物の方も大いに楽しめるものばかり。本人がかかわってきた芸能界の裏話、エピソード、笑い話、苦労話が満載で、こちらもずっと愛読しています。

 「ご笑納ください」が出て、さっそく手に取りました。「私だけが知っている」シリーズの3冊目です。1冊目と2冊目のネタに、新ネタを書き足した(ちょっとイージーかなという気もする)一冊ですが、それでも買うのがファン、との心意気で読了しました。とびきりの笑えるネタを選んでご紹介します。(★と★の間が、本書からの引用です)

★銀座でも、五本の指が入るいい女★
 一番笑ったのが、このネタ。なんでも高田の呑み友だちの発言だというんですが・・・
 それを言うなら、「五本の指「に」」だろうが、「五本の指「が」入る」って、どんな女だよっと、当然のツッコミが入ってました。

★あそこが立っているのが、うちの主人です★
★ベッドインは何時なの?★
★すいません、CIAはどこですか?★
 いずれも、バラエティ系の演劇などで活躍している三宅裕司の夫人の「迷言」です。
 最初の迷言は、夫妻で出かけた立食パーティーで、「旦那さん(裕司氏)はどこにいるの?」と訊かれて、奥の方にいる夫を指差しながら言ったもの。それにしても・・・
 次は、家族旅行で行ったホテルのフロントでの発言。「お客様のお好きな時間でよろしいかと」という答えが返って来たというんですが、余計ながら、正しくは、「チェックイン」
 最後の発言は、知人が入院した病院に駆けつけた時のもの。ICU(集中治療室)のつもりで訊いたら、「さあ、アメリカじゃないですか」との答えが返って来たとか、来ないとか。

 プロボクサーのガッツ石松も、天然ぶりでは負けていません。
★「クイズタイムショック」に出て、「太陽はどこから出るでしょう?」にすかさず「右!」★
 それは、あなたの部屋の場合でしょ、とツッコミが入ってました。
★「亀を英語でなんと言う?」「すっぽん」★
★「私はねぇ~、ボクシングに出会ってから、人生観が380度変わったんです」★
★「エジプトの首都は?」「ピラミッド」★
★「急ぎの時は、電車の先頭に乗る」★
 ボクシングをやめてからは、バラエティー系で活躍してましたが、さすが、素質十分でしたね。

★「バカもホリデー、ホリデーに言え」★
★「仏の顔もスリータイムズ」★
★「薮からスティックなこと言うなよ」★
★「堪忍バッグの緒も切れるよ」★
 そういえば「みんなでトゥギャザーしようぜ」なんてのも使ってましたね。怪しげな英語をチャンポンして、一世を風靡したルー・大柴のギャグです。今頃、どうしてるんでしょう。最近、見かけませんが。

 関西の漫才コンビ「コメディーNO.1(ナンバーワン)の坂田利夫は、実生活でもボケ役を地でいくエピソードが多く、「アホの坂田」がいつのほどにか通り名になっています。
 妹の結婚式に出席して、マイクの前に立った坂田師匠、
★「ふしだらな妹ですが、今後ともよろしくお願い致します」★
 「ふしだら」はマズいっしょ。それを言うなら「ふつつか」でしょ。「アホの坂田」の面目躍如。

 ツービートのもう片方「ビートきよし」もなにかとエピソードが多い。少し長めの引用で、
★ツービートで売れる前、浅草時代のビートきよし。上々のストリッパーをつかまえ。ヒモになった。このお姐さんが実はおかまで、元は自衛隊の特殊部隊にいたという筋肉モリモリ。このおかまのお姐さんに初めて買ってもらった外車が「カマロ」。話ができすぎ。その後、浮気がバレたきよし、浅草中をひきずり回された★

 いかがでしたか?笑い納めていただけましでしょうか?

 今年も1年間ご愛読ありがとうございました。皆様方にはどうか良いお年をお迎えください。


 なお、新年のご挨拶(1月1日アップ予定)に引き続き、通常の記事は、1月10日(金)からアップの予定です。引き続きご愛読ください。


第350回 「自慢」のループ

2019-12-20 | エッセイ

 最近、何の本だか忘れましたが、井上ひさしの言葉として、「すべてのエッセイは自慢話である」というのが引用されていて、冷や汗が出る思いがしました。

 当ブログもエッセイ(のつもり)ですので、ムキ出しの自慢話にはならないように、気を使ってはいるつもりです。でも、内容としては、
「実はこんな面白い話があります(ご存じでしたか?)」
「こんな事に気がつきました(スゴいでしょ)」
「こんな愉快な経験をしました(まあ聞いてください)」
などなど、心の内なる自慢、というループから抜け出せません。

 さて、私も昔、ほんの一時期やっていたSNSですが、いまや大自慢大会の様相を呈しているようで、おおっぴらなものから、ひねりの入ったものまで、いろんな自慢テクニックの情報をネットで目にします。あくまで、他山の石とし、自戒の念を込めて、いくつか紹介してみます。

 「パリピオヤジ」というのを、初めて目にしました。「パリピ」とは、「パーティーピープル」のことだそうで、まあ、パーティー好きということなんでしょう。パーティーとかイベントに参加した写真をアップして、「こんなにいろんなパーティーに呼ばれるほど人脈が広いオレ」「パーティーでそつなく振る舞うオレ」のアピールです。かなりストレートな自慢テクですね。こんな写真をアップしたりするんでしょうか。


 モテのアピールをするのに「匂わせ」というテクニックがあるんだそうで、食事中の写真に、向かいの席にいる女性を映り込ませたりするというもの。たまたま向かいにいるだけの女性との親密さを「匂わせる」というわけです。中には、相手の腕だけとかを映り込ませて、実はデートなんだとほのめかすテクもあるそうで、ひねりの入った(ご苦労様な)手口と言えそうです。

 さて、若者との距離を(無理に)詰めようとする自慢テクもあるといいます。
 若い女性ユーザをフォローしまくったり、コメントをつけまくる、というストレートで、セクハラまがいの手もありますが・・・・
「それって、今、若い人の間で流行ってんだよな。オレやってる」とか「あっ、そのツール知ってる。オレも興味持ってんだ」とかの書き込みで、「若者のことが分かってるオレ」「最先端をいってるオレ」のアピールです。でも、若者へのコビ、ヘツライと紙一重。ボケ防止には良さそうなんですけど。

 とまあ、私自身がオジさんなので、オジさん中心に、分かりやすい例を取り上げました。が、謙虚で控えめに振舞ったり、書いたり、しゃべったりすればいいかというと、事はそう単純でもないようです。

 関西のオッちゃんがよくやるのが自虐トーク。「彼女との大事な約束、コロッと忘れてもうて、三拝九拝、土下座までして、デボチン(おでこ)血だらけですわ。・・・ホンマまいりました」
 この程度のトラブルにはメゲないオレ、それを面白おかしく語れるオレ、などという自慢が(こっそり)入ってたりしますから、油断なりません。

 で、私の場合、ブログの記事を書くに当たって、心掛けているいることですが・・・とこれまた、自慢になりそうで、自慢のループから抜け出せませんが、もうしばらくお付き合いください。

 まず、文章だけでもエラソーにならないように、「です・ます』体を基本にしています。
 作家の椎名誠のように「~である」『~なのだぁ」そして、時に「コノヤロ」も入れた文章も書いてみたいのですが、とても無理。彼の場合、彼自身の実体験を、彼自身の言葉で語っているので、エラソー感もなく、読みやすいのじゃないでしょうか。
 読んだ本からのネタ、という借り物で勝負(?)することが多いので、せめて文体だけでも、という私なりの殊勝な心掛けのひとつです。

 もう一つは、ユーモアです。
 言葉使いはともかく、「内容的には自慢」なので、「ど~だ」「ど~だ」と一方通行になりがちです。そこで読む人の気持ちを和ませ、軽く息抜きをしてもらうーーそれがユーモアの役割かなと勝手に決めています。
 「そんなわけないですけど」と自分でツッコミを入れてみたり、「私自身が一番出来てへんのですけど」などと、関西系の自虐に走ってみたりが精一杯で、まだまだ発展途上です。

 そして、一番肝に銘じているのは、いろんな話題を上から目線で「伝える」のではなく、愛読者の皆さんと「共有する」思いを込めて書く、ということでしょうか・・・・な~んて、最後まで自慢っぽい話にお付き合いいただき、ありがとうございました。これからも「自慢話」をご愛読ください。

 それでは、次回をお楽しみに。


第349回 101の言い訳@ウィーン

2019-12-13 | エッセイ

 たとえ正当なものであっても、言い訳とか弁解を潔しとしない風潮の日本。一方、正当であろうがなかろうが、自己の立場をしっかり主張、弁解するのを当然とする欧米の文化。
 どちらも居心地が悪いというグチ話を「私の嫌いな10の言葉」(中島義道 新潮社)で読んでいると、著者が留学したことのあるウィーンでの鉄道の不正乗車対策に話が及んで、にわかに興味を引かれました。まずは前提となる話題に、しばしお付き合いください。

 だいぶ前(第63回)にも、西ドイツの例を紹介しました。総じて、ヨーロッパの鉄道では、日本のような改札機のシステムはなく、正しい乗車券を持っていることを大前提に、抜き打ち的な「検札」で、不正は問答無用に摘発し、高額な罰金を払わせるのが主流です。

 本書によれば、ウィーンでもシステムは概ね同じで、具体的にはこうなっています。

 ウィーン市内の路面電車(トラム)、地下鉄、バスは同一の料金体系で、定期券の他に、3日通用する切符、1回だけの切符があり、それを持っていれば、どの交通機関でも利用できます。こちらは路面電車。


 ただし、定期券を別にして、まず、乗車する駅の構内とか車内に設置されている印字機に切符を挿入して、乗車駅、日時を印字しなければいけません。こちらの機械です。


 切符があれば、ウィーン市内はどこまでも行けますが、乗り方として、「一方向」のみがOKです。なので、例えば、ぐるぐる市内を回ったり、往復してはいけません。

 そんな複雑なシステムでの不正を摘発するための抜き打ちの検札は、こんなやり方です。
 ある時、抜き打ちで、私服の大きな男が二人連れでヌッと入ってきて、いきなりコワい顔で「検札!」と言って、乗客の前に立ちはだかります。不正と判断されれば、その場で500シリング(約5000円)を請求されます。
 切符がなければ、もちろんアウト。切符を持っていても、印字がなければ(仕組みを知らないツーリストの場合が多いそうですが)これもアウト。そして、例えば、印字された駅に向かっている電車に乗っていれば、往復とみなされて、これも不正乗車になります。

 不正を指摘された乗客の多くは素直に(ホントはしぶしぶ?)罰金を払っているようですが、お国柄でしょうか、中には、いろいろ弁解、言い訳に努める乗客もいるようです。

 と、長い前置きになりましたが、本題に入ります。あれやこれやの「言い訳」封じのために、ウィーン交通局が打ち出した「「こんな言い訳は通用しません」キャンペーン」がユニークです。通用しない101の言い訳例が、ポスターとして交通機関のいたるところに貼られてたといいます。著者が集めた言い訳の一部です。

・犬が切符を食べてしまった
・さっき風で切符が飛んでいった
・別の車両にいる兄が持っている
・(ガチャンという)音が怖くて印字機に近寄れなかった
・印字機が見つからなかった
・印字機が呑み込んでしまった
・印字機に入れたけどインクが切れていた
・私が切符を探しているあいだに他人のを見てくださいよ
・きょう、すでに一度払った(からもう払わなくてよいと思った)
・きょうは特別無料日だと思った
・日曜日は無料かと思った
・父が検札はどうせ来ないから(大丈夫だ)と言った
・昨日も不正乗車したが。つかまらなかった
・まだ昨日だと思った
 
 もう少し高度(?)なものでは、
・10年乗れば無料になるかと思った
・私はニューヨークに住んでいて、たまたまウィーンに来ただけだ
・歩こうと思ったけど電車が来たのでしかたなく乗った

 極めつきは、
・私は切符を持っていないけど不正乗車ではないのだ
・あなたは私が切符を持っていることをただ信じればいいのだ

 いかがですか?すべて交通局の人が考え出したものとのことですが、似た「経験」がベースになってるんじゃないでしょうか。バレなきゃ得、とばかりに不正に走る一部の乗客と、それを阻止したい交通局との丁々発止の駆け引きです。
 でも、「切符は正しく買いましょう」などいう(ICカード時代にはいささか時代遅れの)日本的でユルいやり方ではなく、毅然とした中にもユーモア精神溢れるウィーン交通局の取り組みに、共感を覚えました。

 いかがでしたか?それでは次回をお楽しみに。


第348回 年賀状減量作戦

2019-12-06 | エッセイ

 ー生きている証(あかし)なりけり賀状来るー
 いつもの店での今年(2019年)の新春句会への投句です。諸先輩や同年輩の方々からの年賀状を目にするにつけ、お互い1年を無事に過ごせたと感じるーーそんな気分を句にしました。幸い共感をいただいたようで、入賞できたのが何より嬉しかったです。年に1度のやりとりですけど、年賀状というのもいい習わしだと感じます。
 
 その一方で、いつまで続ける(続けられる)かなぁという思いも、ここ数年アタマをよぎっていました。

 作業(というとお出している方々には失礼な気もしますが)としては、年末年始の一時期だけです。かつては大変だった宛名書きや、出した分、来た分、喪中などの管理も、パソコンで随分楽になりました。
 ただ、私の場合、もっぱら年賀状用に使っているパソコンやアプリは、10数年来のもので、いつ不具合が出てもおかしくありません。なので、もう少し新しいバージョンのパソコンを日常使いとし、それにも対応の年賀状アプリをインストールするなど対策を講じてはいます。それでもプリンターがいつまで動くか、インクもいつまで販売されるかなど、不安の種は尽きません。

 それに加えて「終活」の一環として、年賀状をどうするかというのも気になる年齢になりました。きっかけは、先日届いた「傘寿(80歳)となったのを機に、年賀状を欠礼させていただきたい」という旨の挨拶状でした。
 こちらは古稀を越えたばかりですので、まだ早いかな、こちらから欠礼の挨拶状を出すのは目上の方には失礼かな、余計な心配をかけるかな、などと思いながら、しばし文面を眺めました。

 仮に出すとしたら、どんな文面にするか(あくまで「仮に」のつもりでした)をふと考えます。心配をかけないように「毎日元気に過ごしていますが」とし、理由は「年齢「なども」考え」とあっさり書けばいいかな、などと思案している内に、ちょっとその気になってきました。
 今のアプリを使えば、縦書きで、文章だけの裏面も作れることも分かって、なんとなく文面が出来上がってしまったのです。もうやるしかありません。

 一番たくさん出していた頃は、400枚近かったと思います。その後、徐々に減らす努力もし、今年は、230枚くらい出す予定でした。が、いつの日か、私に万一のことがあって、それを知らずに来た年賀状の処理を任せる家族のことを考えると(一挙にゼロには出来ないにしても)大幅に減らすのもやむを得ないかな、と考えるに至りました。

 長年勤めていた会社で、私が属していたグループには、本人に不幸があって連絡があれば、メールで訃報が流れる仕組みがあります。なので、そのグループの60名ほどの分は、引き続き出すことにしました。辛い作業でしたが、そのほかの方々の中から「心を鬼にして」本当に出したい人としてリストアップしたのは40人ほどです。230人が、100人ほどになり、年賀欠礼の方約130名へのはがきの印刷、投函も、順調に終えることができました。

 数は減らせましたけど、減った分だけでも、年賀状を出す方には「心を込めたい」です。

 裏面の印刷は、ここずっとコンビニを利用していました。自由文が挿入出来る図柄を選んで、近況を伝える文章を(50字以内という制約はありますが)入れていたのです。それでもオール「印刷」という味気なさ、手抜き感はありますので、今年から、ちょっとした工夫をしました。


 「私の近況です」というハンコを街のハンコ屋さんで作ってもらい、ご覧のように赤のインクで「心を込めて」押すことにしたのです。ひと手間かけてますよ、ちょっと注目してください、という下心が透けてますが・・・・

 とまあ、私の年賀状減量作戦も、一つの区切りがつきました。年賀状問題でお悩みの方々のご参考になれば幸いです。

 いかがでしたか?それでは次回をお楽しみに。