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第578回 こんな広告戦略があった!

2024-05-31 | エッセイ
 広告・宣伝の仕事って面白そうで、ちょっぴり関心があります。商品、サービスを売るための知恵・アイディアを集め、その成果は(うまくいけば)今どきはネットも含めた様々なメディアで流されます。一方で、売上げという結果を求められますから、結構大変そうです。
 「1行バカ売れ」(川上徹也 角川新書)では、キャッチコピー(宣伝文句)も含め、売れる製品・サービスづくりの知恵、売り方の工夫などの実例が豊富に取り上げられています。なるほど~、と感心したユニークなケースをご紹介します。よろしくお付き合いください。

★反骨の本屋さん★
 心斎橋を筆頭に大阪市内3カ所で書店を展開するのが、こちらのスタンダードブックストアです(注:残念ながら2023年6月に廃業していました。以下の情報は本書に拠ります)。

 落ち着いた照明のもと、本だけでなく、文具、雑貨、洋服、バッグなど幅広い商品を扱います。地下のカフェは、買う前の本でも持ち込み可、というユニークさもあり、地域に根付いています。2006年、そんな本屋さんが、心斎橋店を新規オープンした時、地下鉄心斎橋駅に出した広告がニュースになり、一挙に知名度がアップしました。それが・・・・
<本屋ですが、ベストセラーはおいてません。>
 「よく売れてるから」とか「ベストセラーだから」というだけの安易な理由では置きません、独自の目利きを大事にしています、というメッセージなのでしょう。本を選ぶ眼に自信がある読書家にはグッと来そうです。もちろん、商売ですからベストセラーも置いていますが、店の姿勢、反骨精神を感じさせる、いかにも大阪的な「広告」です。
★リンゴにつけた付加価値★
 1991年9月28日朝、猛烈な台風19号が青森県を直撃しました。ちょうど収穫期を迎えていたリンゴのほとんどが枝から落ちてしまいました。これらはもちろん商品として売れません。わずかい残ったリンゴも商品価値は大幅に下がり、被害総額は、741億円にものぼりました。そんな中、ある町のリンゴ農家から、アイディアが出ました。落ちなかったリンゴに付加価値をつけて売ろうというのです。ターゲットは・・・・・・そう、受験生です。「落ちないリンゴ」と名付け、「合格」という朱印を押して化粧箱に入れ、1個1000円で販売しました。

 あっという間に完売し、その町のリンゴ出荷量は大きく減ったものの、販売額はそれほど落ちませんでした。「付加価値」という魔法を見た思いです。
★最大の弱点を「売り」に★
 アメリカのハインツ社は、1876年からトマトケチャップを発売している老舗です。人工保存料を使わない製法で支持を得、特に1906年に法律改正により不純物混入が規制されてからは、圧倒的なシェアを誇っていました。しかし、第二次大戦後、ファストフードの普及で市場が拡大し、参入企業が相次いだため、ハインツのシェアは急落しました。当時のケチャップはビンづめです。他社のケチャップは水分が多いので、簡単に出ます。でも、ハインツ製は、ビンを逆さまにして叩く必要があったのです。水分を増やすという姑息な策を取らず、その欠点を逆手に取った広告戦略を展開しました。
<ハインツのケチャップは、おいしさが濃いからビンからなかなか出てこない>を基本コンセプトに大々的な広告宣伝を展開したのです。見事、シェアを回復したのは何よりでした。
★お母さんにボイスレコーダーを売る★
 新聞記者が取材で、また、ビジネスマンが会議の記録用に、とよく目にするボイスレコーダーです。テレビ通販の「ジャパネットたかた」は、小さい子供を持つ働くお母さんをターゲットにし、大成功を収めました。学校から帰ってきてもお母さんがいなくて寂しい思いをするお子さんにメッセージを伝える道具にしたら、という提案です。「〇〇ちゃん、お帰りなさい。お母さん、まだ会社だけど、おやつは冷蔵庫に入っているからね。宿題は早めにちゃんとやってね。」
 こんなメッセージ例を出されたらたまりませんよね。心温まるアイディアに参りました。
★「義理」専用のチョコ★
 ブラックサンダーというココア味でクランチタイプのチョコがあります。有楽製菓(東京都小平市)が1994年から発売しているもので、ここ10年で、売り上げを10倍以上に伸ばしている人気商品です。チョコといえばバレンタイン・デー。各メーカーは、高級感を売り物に、「本命」「義理」を問わず、例年大商戦を展開します。ところが、有楽製菓が2013年から展開したキャンペーンのキャッチコピーはというと・・・・
<一目で義理とわかるチョコ>というもので、商品にもしっかり表示されています。

1個当たり単価は30円程度と手軽なうえに、売れる数は「義理」が圧倒的に多いはず。一見、開き直りのようですが、ターゲットを絞った、大手メーカーが真似できない販売戦略だと感心しました。これなら、「安心して」贈ったり、貰ったりできる、という付加価値もありますし・・・

 いかがでしたか?モノを売るための知恵出しは、大変そうだけど、楽しそうですね。それでは次回をお楽しみに。
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