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第528回 釣り竿英語でいこう 英語弁講座42

2023-06-16 | エッセイ
 趣味であれ、仕事であれ、英語に取り組んでおられる皆さんに、1冊だけオススメの本を、と言われたら、迷わず挙げたい本があります。
「難しいことはわかりませんが、英語が話せる方法を教えてください!」(文響社)がそれです。ラジオ語学番組の講師を務め、日本語もペラペラのスティーブ・ソレイシィーさん(以下、「先生」)と、TOEIC320点(満点は990点)だけど英語がうまくなりたいサラリーマンの大橋弘祐さん(以下、「生徒さん」)との対話で全編が進行します。こちら、先生。

 日本人の英語を知り尽くした先生の的確な指摘、動機づけに勇気づけられる一方、厳しい課題や指摘にオロオロする生徒さんの姿が笑いを誘います。スラスラと楽しく読めて、気付きも多いこと請け合いの1冊です。
 冒頭の約100ページ(全体の3分の1ほど)は、英語と向き合う基本的な姿勢、考え方を巡るやり取りです。決して堅苦しくはなく、「なるほど」がいっぱいです。
 例えば、先生から、こんな問題が出ます。「「サラダをください」と言いたいとき、次のうち、どれが正しいか?」で、選択肢は、
a. May I have the salad?
b. I'd like some salad.
c. Could I have a little salad?
d. I'll have a salad.
 サラダって、数えられるのか、数えられないのか、とか、あれこれ迷いに迷う生徒さん。それに対して、「全部正解」と先生。日本語でも「サラダ持ってきてください」「サラダがありますか」「サラダをいただけますか?」などいろんな言い方があり、ちゃんと通じるでしょ、というのが先生の説明です。なるほど。
 振り返って見れば、高校、大学受験のための英語の勉強を通じて、「たった一つしかないはず」で「正しい」訳や選択肢を選ぶ事に全力を傾けてた気がします。いろんな表現が可能だと理屈で分かってはいても、点数を取らなきゃいけませんから、私もパズルを解く感覚で取り組んでいました。いみじくも先生が「パズルの英語」と名付けたワナに、見事にハマってたわけです。
 ネット上の英語に関するミニコラムを見ながら、英語を教える側もこのワナにハマってるのでは、とこの本を読んだので、私も感じることがあります。「〇〇って英語でどう言う?」という設問に、大抵「一つだけの「正解」」が示されます。ある時、「相談に乗る」に対して、" give an advice " (助言を与える)が唯一の「正解」とされていました。それが当てはまるケースもあるでしょう。でも、ビジネス現場だったら、取引条件(価格、納期など)について、場合によっては話し合う余地、準備がある、という意味合いで使うことも多いですから、ちょっと的外れな「正解」の気がします。
「パズルの英語」を巡る先生のまとめです。
・義務教育で「パズルの英語」を解かされてきたので、正しい一つの答えを導き出すことにしがみついている。
・英語が苦手と思っていても、日本の独特な試験を解くのが苦手だっただけ。自分を責めない。
・英語で伝える方法なんていくらでもあるから、正しい英語選びにこだわらない。

 少しは気持ちが楽になりましたでしょうか?
 さて、日本人への激励、勇気づけだけではありません。使い途が多く、役に立つ表現が,、決め打ちでなく、ニュアンス、使える状況なども含めて、じっくり、楽しく紹介されます。ひとつの例が「釣り竿英語」です。「If you have a fish, you can eat one day.(一匹の魚があれば一日は食べられる) If you have a fishing pole,you can eat forever. (釣り竿一本あれば、一生食べられる)」との諺が由来で、先生が独自に名付けました。幅広く、便利に使える英語表現を身につけようというわけです。さすがに1本だけでなく、いくつか取り上げられています。その内、1つの例が、
" Would you ~ ?" です。相手に丁寧にお願い、依頼などする時の定番です。先生から、生徒さんへ、これを使って、「ワインを買って、「ワインが割れないように包んでいただけますか」って言ってみて」と課題が出ます。
 「割れる」って、なんて言えばいいんだろう?、から始まってオロオロする生徒さん。先生の説明では、" Would you? " だけでいいというのです。「お願い」があることは伝わりますから、お店の人の目を見て、あとはワインを包むジェスチャーをすればOKというワケ。海外旅行で、自分の写真を撮ってもらいたい時だったら、カメラを自分の方に向けて、シャッターを押すジェスチャーで十分通じるのと同じ発想ですね。
 まずは、お願いしたいことがある、との意思表示を、ジェスチャー込みですることが大事だとわかりました。「日本語でも、「よろしくお願いします」「大丈夫」なんて万能の「釣り竿日本語」があるでしょ」との先生の指摘に思わず膝を叩きました。

 いかがでしたか?ほんの一部をご紹介しただけですが、これ以外にも、初級から、ペラペラ実践編まで多彩な内容に溢れています。ご一読を心からオススメします。それでは次回をお楽しみに。
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