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第304回 「転」でキメる

2019-02-01 | エッセイ

 このブログを書き始めた頃、まず心掛けたのは、「独りよがりなことや、つまらない日常のことをグズグズ書く」のではなく、「他人(ひと)様に読んでもらえることを書く」ということでした。
 そのためには、広く読者の皆さんに興味、関心を持ってもらえそうな話題を選んで、コンパクトに、分かりやすくを第一に・・・・そんな想いは今も変わらず、それなりに態をなしては来たかな、とも思うのですが、まだまだ試行錯誤と苦労の連続です。

 あとは適度なユーモアでしょうか。以前にも書きましたが、お店で親しくしていただいているKさんからの「もうちょっとユーモアが欲しいね」の一言が骨身に沁みました。こちらも試行錯誤の連続ですが・・・

 そんな折、書店で「エッセイの書き方」(岸本葉子 中公文庫)が目に止まりました。我がエッセイ(のつもり)の質の向上に少しは役に立つかなと、我ながら殊勝な覚悟で読んでみたら、あらためて教わることが多く、十分に元はとれました。



 中でも、目からウロコ、というか、腑に落ちたことを私なりに要約すると、「エッセイのキモは、起承転結の「転」である」ということです。

 「転」といいますが、急に話題をガラッと変えるということではないんですね。エッセイである以上、読者に「へぇ~」「ほぉ~」と思わせたいコアな事実なり、エピソードなりがあるはず。「起承」でうまく前フリをして、流れを引き寄せた上で、「転」に落とし込めというわけです。
 学術論文じゃないんだから、「結」は、どうでもいいとは言わないけど、重視しなくていいと書かれてあって、思わずにっこり、随分気が楽になりました。

 著者自身による実例をご紹介します。

 「恋文」という女性にとっては微妙なテーマが、出版社から与えられました。
 「起承」は、石坂洋次郎の「青い山脈」で描かれた女子校でのラブレター事件です。「「変」しい、「変」しい×子様、ぼくの胸は貴方を思う「脳」ましさでいっぱいです」という懐かしい小説を引用しながら、恋文における誤字の問題が前フリです。

 パソコン、ワープロの時代になって、こんな誤字はなくなったと思いきや、そうでもない、実は危険がいっぱい、と思わせぶりに流れは「転」へ。

 彼女の元へ、仕事の依頼状が来ました。
 「岸本葉子様、・・・これこれのテーマについて書いていただくには、岸本様をおいてなく、岸本様独特の筆で綴っていただきたく云々・・」とあります。

 ところが、「岸本様」が途中から「××様」と別人の名前になっているというのです。はて、と考えた彼女は思い至ります。パソコンに保存してあった依頼状の名前だけを差し替えたのだが、途中から差し替え忘れたに違いないと。そういえば、〆切が切迫しての依頼というのも怪しい。××氏に断られて、急遽こちらに依頼してきたに違いない・・・と探偵ばりの推理が笑いを誘います。

「教訓。手紙を出すときは。誤字をよくよくチェックすべし。特に宛名関係は。」というのが「結」です。さすがプロのエッセイスト。鮮やかなものですね。

 自分で書いてきたものを振り返った時、それなりに納得できるものって、話が拡散せずに、「転」にストンと落とし込めたものが多い気がします。これは自信につなげたいです。

 毎回毎回のテーマも悩みのタネですが、大きなテーマから入らず、まずは「転」になりうるコンパクトなネタから、というのも、少し気を楽にしてくれます。

 というわけで、岸本流「起承転結」を意識して、今回は書いてみました。岸本さんの実例が、うまく「転」として、キマってればいいんですけどね。

 いかがでしたか?次回をお楽しみに。

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