★★★ 芦坊の書きたい放題 ★★★

   
           毎週金曜日更新

第456回 肥満ビジネスinアメリカ〈旧サイトから〉

2022-01-21 | エッセイ
 <旧サイトから>の第8弾です。掲載時の2年ほど前から始めていたダイエットは、もう10年近く続いています。なので、ちょっぴり余裕で、肥満大国は肥満ビジネス大国でもある、という話題を再掲載でお届けします。なお、2回分を1本にまとめました。最後までお付き合いください。

★ ★以下、本文です★ ★
 2年ほど前、リタイヤ生活に入ったのを機にダイエットを始めました。腹8分目を守り、朝夕の散歩を日課としてきた結果、十数キロの減量に成功し、目標とした体重を維持しています。
 そんなわけで、肥満問題について、少しは語る資格ができたのかな、などと思っていたところ、興味深い本を見つけました。「アメリカン・スーパー・ダイエット」(柳田由紀子 文藝春秋社)というのがそれです。同書により、前半で肥満大国アメリカの現状を、そして、後半では、それをサポートとする様々なビジネス展開をご紹介することにします。

 まずは、アメリカの肥満に関する数字です。
 米疾病予防センターによると、肥満を含めた太り過ぎ成人の割合が、1999年から2002年で65.2%、2003年から2006年で66.9%で、着実に(?)増加を続けています。著者が、巨大スーパーの前で、1時間ほど観察したところでも、ざっと3分の2が明らかに肥満だったといいますから、この数字の信用度は高いです。

 そんな肥満大国アメリカを代表する人物が紹介されています。
 マイケル・ヘブランコ(取材時57歳)という男性です。小さい時からの肥満で、最高時の体重は、508キロというから、0.5トン!! 特製のエレベーターをほぼ独り占めする彼の写真です。(同書から)



 部屋から出られなくなって、部屋の壁を壊しての入院騒ぎを2度も演じています。原因は、本人いわく「フード・アディクション(食べ物中毒)」とのこと。ダイエット(318キロの減量というギネス記録を持つ)とリバウンドの繰り返しで死にかけましたが、取材時点では160キロを維持し(それでもすごいですが)、ほぼ常人並みの生活を送っているのはなにより。

 さて、アメリカが、ビジネスという切り口で「肥満」とどう向き合っているかです。さすがはビジネス大国。アメリカには、肥満経済研究者というのがいて、それによると、肥満経済には、「太らせる経済」と「痩せさせる経済」という二つの大きなマーケットが存在するのだといいます。

「太らせる経済」の代表が、ファスト・フード業界で、2006年の総収益が、13.4兆円とあります。ジャンクだ、肥満の元だといわれながらも低所得者層にとっては、ありがたいものには違いなく、今も成長産業です。
 一方、「痩せさせる経済」の代表が、低カロリー飲料、食料で、これだけで数兆円規模になるといいます。スポーツジム、ダイエット教室などのダイエット業界の総売上も、3兆円だとか5兆円だとかいわれます。「肥満大国」は、「ダイエット大国」でもあるというわけです。

 そんな中で、着実に成長しているのが、「太ったまま経済」とでも呼べばいいようなユニークな分野です。つまり、太っていることを前提に、その人たちのクオリティ・オブ・ライフ(生活の質)を維持するための様々なサービスやグッズを提供する企業が急成長しています。

 サービス分野では、服飾、スポーツ、趣味、ブライダル(!)など、50項目にわたって、肥満関連商品、サービスだけを掲載するウェブ上の電話帳サービスがあります。
 また、太った人だけが参加できるクルーズ、スキューバダイビングなどもあります。まわりの他人の眼を気にせずに、太った人たちだけで、心置きなく楽しめたら、というニーズに応えるサービスというわけです。

 グッズ関係では、長いスティックの先に爪切りが付いて、かがまなくても切れるもの、また、用を足しても、手が届かない人には、スティックの先に、トイレットペーパーをはさむ器具がついているもの、などアイディア商品(?)がいっぱいです。

 肥満者向け棺桶専門店では、特大棺桶(最大137cm×244cm)なんてものも扱ってるそう。「揺りかごから」はどうか分かりませんが、「墓場まで」肥満者のために至れり、尽くせりの感があります。う~ん、「肥満」大国は、「ビジネス」大国でもありました。

 いかがでしたか?それでは次回をお楽しみに。