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第454回 大阪弁川柳で初笑い 大阪弁講座48

2022-01-07 | エッセイ
 新年最初の記事ですので、大阪弁川柳の第2弾で「初笑い」していただこうという趣向です(文末に前回(第404回)へのリンクを貼っています)。
 
 ネタ元は、前回と同じく、田辺聖子さんのエッセイ「川柳でんでん太鼓」(講談社文庫)です。川柳と大阪弁の面白みを存分にお楽しみください。

★はくじょうな会社と入社時から思う★(岩井三窓)
 堪忍(ゆるす)、往生な(めんどうな、やっかいな)など漢語系の言葉を日常的に使うのが、大阪人は好きです。薄情(はくじょう)もそのひとつ。人の冷酷な性格とか、冷たく理不尽な仕打ちに対してよく使います。会社に対して使うのですから、よほど会社への恨み、つらみがあるのでしょうね。しかも「入社時から」。そんな会社に捧げた一生。どんな会社人生だったのか。川柳とは言え、辛い句です。

★達筆で腑甲斐ないこと言うてくる★(生島白芽)    
 「言うて」の大阪的「う音便化」で取り上げました。「達筆で」というからには、それなりに年齢も重ね、世の中を達観しておられるはず。そんな方が、気弱なこと、愚痴っぽいことでも書いてよこしたのでしょうか。いろいろ事情はありそうですが、川柳的に、そのギャップをつい楽しんでしまいます。

★ついていてあげねば駄目な人と添い★(古沢蘇雨子)  
 句意はどうってことありません。「添う」という大阪的な言い方(根っからの大阪弁かどうかの自信はないのですが)に魅かれて取り上げました。
 女性の方から「身を寄せる」「寄り添う」というニュアンスです。なので、この結婚も女性主導だったのだろうと想像されます。まあ、そんな相手に限って、駄目なのが多い、というのも世間にはよくある話ですが・・・・

★不細工な妻に子供はようなつき★(後藤梅志)   
 「不細工な」といういかにも「大阪的響き」の言葉を臆面もなく使っています。額面通り受け止める人はいないでしょうが、う~ん、コメントが難しいです。大阪人特有のテレと、ノロケがないまぜになった句、とでも評しておきます。我ながら歯切れが悪いですが。

★出世しよっていやらしい声となり★(岩井三窓)
 「しよって」というのが、いかにもの大阪弁です。怒りに軽蔑の気持ちも込めて、標準語なら「しやがって」というところです。「いやらしい声」というのはどんな声なんでしょう。エラくなったからといって、威張ったりはせず、あくまで謙虚なものの言い方に徹する・・・つもりが、猫なで声になってるでぇ。卑しいヤツやな。そんな作者の声が聞こえてきます。 

★せっかちでお好み焼きをわやにする★(岩井三窓)
 片面が充分に焼けてないのにひっくり返そうとして、ぐちゃぐちゃにしてしまいました。「わや」というのがコテコテの大阪弁です。モノを壊す、駄目にするというのが基本ですが、どうしようもない事態に立ち至った時にも使えます。「嫁は出て行くし、息子はグレるし、ワイの家(うち)も「わや」や」という具合に。
 「せっかちで」というのが惜しい気がします。大阪弁だったら「いらち」を使いたいですが、字足らずですから、仕方がないですね。
 
★台風の進路でんがな周遊券★(古川美津江)
 「でんがな」がすべての句です。よっぽど楽しみにしていた旅行なのでしょう。共通語だと「です」で済むところに、悔しさ、無念さ、自然が相手の無力感・・・いろんな思い込め、五七五に収めています。

★かしこい事をすぐに言いたくなる阿呆★(亀山恭太)
★阿呆は阿呆なりに阿呆を抜けんとす★(岩井三窓)
 「阿呆」の句2つを取り上げました。大阪人の「阿呆」好きにも困ったものです。「阿呆」を立派な芸にまで育て上げた藤山寛美という役者さんがいらっしゃいました。こちらの方。



 阿呆は阿呆なりに、ちょっと気の利いたことを言いたくなったり、抜け出そうとしたり・・・「馬鹿」とは違うユルさ、憎めなさがあります。おっと、他人(ひと)事とは思えません。くれぐれも自戒しなければ。
 前回(第404回)へのリンクは、<こちら>です。合わせて「2倍」初笑いしていただければ幸いです。

 いかがでしたか?それでは次回をお楽しみに。