お席は、4人掛けの赤いソファー席の対面にある二人掛け席だった。テーブルの中央部はスポットライトが当たる構図になっており、短焦点レンズのフードの陰が現れるぎりぎりまで近寄ってお料理を撮影した。ほどなくしてアミューズブーシュが運ばれてきた。二段プレートになっており、上段は、レモン風味のチキンのムース、米粉で作製したパンケーキ(要するにガレット)の間にサワークリームを挟んだ物、そして黒胡麻のゼリーであり、下段はトマトと木苺のゼリーを寒天でくるんだ物を小スプーンの中に納めた一品であった。「下段のゼリーは大変デリケートなので一口で召し上がれ」とのご指示である。これらはいずれも非常に美味しかった。高級そうなカメラを目ざとく見つけたウエイター氏は「お料理の写真を撮るのは角度とか難しいんですか?」と尋ねて来たので「ええ、角度も大事ですが、ライティングが最重要ですね」と答えてあげた。同じソニーα99でお料理を撮影しても、島内の季節風景写真ブログのそれと画質が格段に違うのは、14万也のカールツァイスのレンズのお陰である。一眼レフカメラはカメラ本体よりもレンズの質の高さが物を言うのさ!5万円のタムロンのマクロレンズと14万也のカールツァイスの単焦点レンズとでは所詮物が違いますよ。あの島内ブロガーのお料理写真が筆者にかなうわけないじゃないですか。と、毎回同じ事を言っておこう。
前菜には「かますとジロール茸を大根コンソメに浸した一品」を選んだ。四つ切にしたかますを「井」の字型に組み合わせてあったが、やや生臭く、期待したほどの味では無かった。パンは暖かいもののたった一切れのフランスパンしかなく、バターなども無かった!お水もワイングラスではなく、タンブラー型のコップに注いで持って来た。だから、ホテルのレストランのような高級感はほとんど感じない。メインにはフランスのシャラン産の牛フィレ肉のソテーを選んだ(800円増し)(画像)。フランスのシャラン地方は放牧地として有名で、ここで獲れる鴨はシャラン鴨と言うブランドになっている。二口で食べられる分量の牛肉が三切れほど温野菜の周囲に配置されており、ソースはフォンドボーをベースにした黒オリーブソースであった。2012年の12月に帝国ホテルの「レ・セゾン」で食べた牛フィレ肉のソテーと同じ調理法だが、シャラン産のお肉は和牛に比べ、やや弾力性に富んでおり、甘味も薄い感じである。こういうお肉がフランス人好みなのだろうが、筆者はやはり和牛派であり、ちと物足りなかった。グレープフルーツとブラッドオレンジの生ジュースでお口直しをした後、デザートとして「白ワインで煮込んだ無花果(いちじく)のコンポート」が運ばれて来た。アプリコットのソースにアーモンドが混じっており、非常に美味しかった。紅茶と共に運ばれて来た小菓子のお皿には絵心豊かなアンドリオ氏に寄り、ピカソ風の女性の顔がチョコレートで描かれていた。こんなおまけが今日のランチの最大の収穫であった。会計時にはアンドリオ氏自らがお見送り!筆者が氏に向かい、「セボン(good)、トレビアン(very good)」と言うと、彼は「メルシー(有難う)」と答え握手を求めて来た。筆者はその手を握り返しながら、今度はフランス語をもっと勉強してからこのお店を再訪しようと堅く心に決めた。
アミューズ
パン
前菜
スムージー
デザート
アンドレオ氏がお皿に描いた女性の顔と小菓子
紅茶