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新たなはじまり

2007-11-28 | poem
果てしなく雨が降り続いています。すべてを洗い流すように。
私の服も髪も身体も、雨に洗い流されそうになっていました。
私はなにも出来なかったのです。何の希望もなかったから。
ただ灰色の空を見上げて、果てしなく降る雨の出所を探っていたのです。

本当に私には何もありませんでした。希望もなにもかも。
とても軽い生命だけが、私をここに立たせていたのです。
雨をよけようとすることも。なにかにすがろうとすることもなく。
ただ、重くうねり続ける雲の群れを見上げていたのです。

雨は容赦なく降り注ぎます。私の顔や身体に。
でも、なにも感じることはありませんでした。何の感情も抱いていなかったから。
ただ、空を見上げて、なにかの変化を待っていたのです。とりとめもないなにかの衝動を待ちながら、その場所に立ちつくしていたのです。

すべてのものを洗い流すように雨は果てしなく降り続いていました。
暗く沈んだ街。灰色の空。
私を包んでいたのは、雨の冷たさだけだったのです。
ただ、そんななかでも、なんとなく見上げていた空のむこうになにかがあるんじゃないかという、漠然とした思いを抱いたまま。

私は歩くこともできなかった。ただその場所で雨に打たれることだけ。
そんな時だったのです。私の目に飛び込んできた尖塔の十字架。
その十字が私の胸になにかを起こしはじめたのです。
それは衝撃でした。どんな意味があるのかその時の私にはまるでわかりませんでしたが、胸の奥に激しい衝動を憶えたのです。
それはあふれるばかりの献身性となって身体中にわき上がってきたのです。
すべてを投げ出しても惜しくないようん、そんな献身性が私を包んだのです
そして、私をそこへと駆り立てていました。

私はそこから歩きはじめたのでしょう。
暗い街の中を。灰色の雲が流れていく方向へ。
私は上を見上げていました。尖塔の十字を見失わないように。
私の求めているなにかがそのカタチにはあったから。
私は歩き続けていました。何も希望もなくただ立ちつくしたままの私だったのに。

私はなにかをつかみはじめていたようです。今までになかった力がこうして湧いてきたのですから。
なにがどうなのかよくわからないのですが、それは間違いなく私をかき立てるなにかだったのです。
私は暗い街の中を歩いていきました。果てしなく降り続く雨のさなかを。
でも、そんなことはもうどうでもよかった。
私は今歩み始めていたのですから。
カタチがわからないながらも、漠然としながらも希望ができはじめていたのですから。
私は歩みを早めていきました。雲の流れる方へと。尖塔の十字を見失わないように。
充実したなにかを手に入れるために。
軽々しく価値のなかった私の生命が、今とてもいとおしくなっていたのです。
それがすべてのはじまりでした。私の新たなるはじまりだったのです。


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