欅並木をのぼった左手にあるお店

ちいさいけど心ほっこり、French!テイストなお店♪

ちょっと一息って感じで

2012-07-12 | essay





たしかに詩なんて今どきって感じかもしれないけど。
詩には詩の魅力ってものがあるんですよ。
星空を見上げて、いろんなことをお願いできるし。
そんな心も詩からも育っていくんです。

夢見ることも大切。こんな時代には特にね。
しあわせの方に気持ちが向くように。
そんな詩がたくさんできると、もっと人も詩を大切に思ってくれると思うしね。

僕はどうでしょう。たくさんの言葉があるけど、やっぱり美しい響きの言葉が好きかな。
フランス的な詩が生まれたら素敵ってもの。
かっこつける訳じゃないけど、シャレてる方が今の時代に合ってる気がするから。
だから、書き継いでいこうと思うのかもしれない。いろいろな煩悶、不安もあるけれど、それはそれで誰もが経験するものだから。

こうして言葉を紡ぐことができる。
使わないともったいないし。
ゴールは遠いかもしれないけど、今日を踏み出して、笑みを浮かべてって感じでね。

残された伝言のそのあと

2012-07-12 | une nouvelle
月明かりのきらめきが寝静まった港の町に。
狭い通りの居酒屋。煙草の煙と熱気で白くかすむ店内。
サテンのドレスを着た踊り子が髪を振り乱し踊っているさなか、カウンターに座る男はじっと熱い視線をステージにむけるのです。
やがて、踊りが終わり、彼女はカウンターの方へ。
ねぇ、いつになったらわたしをここから連れ出してくれるの?
男はうつむいたままなにも答えません。
ウェイターにお酒をもらって、一気に飲み干す彼女は、
男ってみんなそうなのかしら? はっきりしないもの言いで女の心を揺さぶるばかりで・・。
もうひとりの踊り子が彼女に近づいてきて、耳もとでなにかをささやきます。
今日もこれで見納めかしら。また明日がわたしたちになにかをもたらしてくれるかしら・・。
彼女は男の横顔を鋭く見つめて、
ね、おやすみなさい。
ふたりが店の奥へと立ち去って、ウェイターがグラスを片付けにきます。
それはオレが払おう。
よろしいんですか?
男は財布から紙幣をとりだして、
伝えてほしいことがあるんだ。釣りはいらないから。
紙幣の大きさににウェイターは驚いて、
いいんですか。
男は静かに立ちあがって、誰もいないステージを見ながら、
ここにくるのも今夜が最後なんだよ。さっきあそこで踊っていた彼女に伝えてくれないか。
悪いけど、この町を離れることになったからと。
それだけでいいんですか。
ああ、頼むよ。
そう言って、男は店を出て行きます。

客のひいた夜更け。もうひとりの踊り子がウェイターの近くでお酒を飲みはじめて。
あの男の人、もう来ないんだってね。
ウェイターは親しげな口調で、
なんかひさしぶりに男の人を見たって感じだった。
ふたりにはつらい別れね。
でも、なにかすばらしいものを感じるよ。あのふたりにはまだなにか残されているような・・。
まだ続くってこと?
わからないけどね。不思議な巡り合わせはこんなんじゃ終わらない気がする。
そうなの?
でも・・。ウェイターは言います。
あんな恋愛を一度はしてみたいな。ああいうのを人生の輝きって言うんだ。
へぇ、そういう人、今いるの?
え、いないけどさ。
そう。踊り子の声が明るくなって、
わたしはよくわからないけど、人生の輝きなんて響き、嫌いじゃないよ。女心にうといどこかのだれかさん。

凍てつく夜の窓際

2012-07-11 | une nouvelle
夜が寂しいと泣いている男の子に姉は、
大丈夫よ。わたしがついているから。
やさしく抱いて、小さな木の枝を渡すのです。
不思議そうに見上げる男の子に、
これは魔法の杖。いい子にはお星様が力を貸してくれるのよ。
男の子は不思議そうに枝を見つめて。
なにかお願いするの?
そう、今夜はお星様がたくさん出ているわ。きっと願いを叶えてくれるはず。
男の子の表情がやわらいで、杖をふってみると、
わぁ、すごい。
暗闇の中に金の粉のようなものが見えかくれするのです。
なにをお願いするの?
ううん、内緒・・。
かわいい笑顔に、姉はほっぺをさわりながら、
これからもいい子にしていなきゃ魔法は消えてしまうわよ。
こくりとうなずく男の子に、姉は体を寄せて、
お姉ちゃんも一緒にお願いしてあげるね。お星様がいつも見守ってくれるように・・。
いい子にしてるから、早くママが帰ってくるようにね。

街中に響く、魔法の国への誘(いざな)い

2012-07-07 | une nouvelle






"人生はいろんなことがあるけれど、良いことも転がっているから生きていける。
暗がりもあったり、悲しみとぶつかったりもするけれど、そんな時はこのワルツの響きに耳を傾けてよ。
いつでも魔法の国へと誘(いざな)ってくれるから。
笑いや楽しさの中に、ありし日の自分と出会えるはず。そしたら、これからは明るい未来が期待できる。
最初は不慣れな笑顔でもいいんだ。人生は笑顔のあるところに明るい贈り物をしたがるものだからね。"

三日月に乗った黒猫は

2012-07-06 | une nouvelle
三日月に乗った黒猫、目指すはいとしのあの子のいる場所へ。
寝静まった街。路地裏で見上げている少年の願い。
お星様、どうかパパが無事に戻ってきますように・・。
かの地より届いた嵐の知らせ。こんなに静かな海がそばにあるというのに・・。
黒猫は街に向かってにゃ~んと声を発します。
すると、かの地で・・。
必死に船をあやつる父親に少年の声が届くのです。
ずぶぬれになり冷えてくる体。しかし、少年のいとおしい姿を思い、父親の力はみなぎってくるばかりです。
ほかの船員を叱咤激励しながら、向かう先は・・。いとしい家族の待つわが街へ。

窓辺の机で眠っている若い娘。三日月の黒猫がふと惹かれたものは・・。
耳に輝く真珠のピアス。まるで星々の輝きのように純粋にきらめくのです。
娘は眠りつつも口ずさみます。愛する人の名を、幾度となく。
もうすぐおとずれる人生のきらめき。指輪に刻まれた深い愛情。
今はなき母への思い。
お母さん、純白のドレス姿は見せられなかったけど、このしあわせはきっとお母さんに届くはず・・。
三日月に乗った黒猫は街に向かってにゃ~んと声を発します。
すると、窓のむこうに笑みを浮かべた母親が・・。
ふと目がさめて、驚きとまどう娘。懐かしくも楽しいふたりの会話。
あぁ、これが夢であっても・・。彼女の気持ちが素直なきらめきを放つ夜更けのこと。

橋のたもとでペンを走らせる青年。
そこで書き紡がれるものは、詩という人生への愛情。
夜になると、言葉がどこからともなくやってきて美しい世界に詩人をかりたてるのです。
しかし、青年の生活は困ることの連続。家を追い立てられる日々。
こんなに言葉は綴られていくのに・・。今夜も星を見上げながら悲しげなまなざしでペンを走らせます。
黒猫は首をひくく橋のたもとを眺めていましたが、やがて、街にむかってにゃ~んと声を発します。
すると、橋を横切る黒い車が・・。ゆっくりと橋のたもとでとまり、背の高い女性がおりてきて・・。
あのぅ、ちょっとよろしい?
詩人がふりむくと、
わたしの妹は病に伏しているの。世界を旅したいとそんな願いを持ちながらも・・。
よろしければあなたの言葉で心の旅にいざなってくれません? 不思議さがおとずれる夜の間だけでもいいので。
詩人をのせたシックな車は夜の街を駆けていき・・。
窓の向こうについてくる三日月。詩人は月にこう語りかけるのです。
不思議な出会いをありがとう。まだ見ぬ親愛なる君へ。

黒猫をのせた三日月はゆっくりと山のむこうに。
いとしのあの子がいる場所へ。
寝静まった街に響く、人の織りなす音色。
そんなひとつひとつをたずさえて。
なにより愛の響きが大好きな、あの子への素敵なプレゼントとして。

空想はわたしだけの宝箱

2012-07-06 | une nouvelle
Edith Piaf - La foule



空想はだれにもじゃまされないわたしだけの宝箱。
からっぽの箱にもたくさんの宝石がたまっていくよ。
空想を忘れて笑顔の少ない人生なんてまっぴらだから。
心の中の宝箱が、今もあなたの想像力をかきたてているよ。
さぁ、今夜はいろいろなことを忘れて、空想に身をゆだねてみよう。
きっとあの頃のような素敵さが、あなたの中にもよみがえってくるはずだから。

悲しいこともあるけれど上を向いて

2012-07-04 | une nouvelle



階段にすわって泣いている女の子。外灯の明かりがともる夜のこと。
ひとりの紳士が階段をあがろうとして、女の子に気づくのです。
どうしたんだね、こんなところで。もうお家に帰らないとご両親が心配するよ。
そう声をかけられても、女の子は泣いたまま。
なにか悲しい出来事があったんだね。
ぐずっていた女の子はようやく口をひらきいて。
うちの猫がね、死んでしまったの。
そうなの? それは悲しいことだね。
紳士は女の子のとなりにすわって、
ねぇ、猫ちゃんは今どこにいると思う?
え、もう死んじゃったんだよ。
でもね、猫ちゃんがいなくなったわけじゃないんだよ。どこかで悲しそうな君のことを心配してるんじゃないかな。
女の子は不思議な顔をして。
ミィがどこかにいるの?
そうだよ。死んだからっていなくなるわけじゃないんだ。君の心の中にも思い出がたくさんあるよね。
女の子の表情がすこし明るくなって、
君がこうして泣いていたら、猫ちゃんも悲しいよ。いつも楽しく遊んでくれた人が元気がないと悲しくないかい?
女の子はこくりとうなづいて、
おじちゃん、ミィはどこかにいるんだね。
そうだよ。君の心の中にも、今もどこかで君のことを見守ってるはずさ。
女の子は赤い目をこすりながら、
もうお家に帰る。そこを曲がったところだから。
そう、気をつけてお帰り。
女の子は立ち上がり、ぺこりと頭をさげて、
ミィのためにがんばる。
そうだね。時に悲しいことだってあるよ。でも、元気をだしな。猫ちゃんもそれを願っているよ。
階段をかけおりて、女の子はまた振り返り、
ミィはよくないていたから。またどこかで声が聞こえるよね。
仲良しの君になにかを知らせてくれるはずさ。だから、上を向いて過ごしていてごらんよ。ミィの不思議な知らせがやってくるはずだからね。

強い悲しみにこそ純粋な光はひらめく

2012-07-03 | une nouvelle




"強い悲しみを前にすると、人は暗がりの中。
そこで目にするのは・・、お日さまのようなヒカリ。
どんな癒しよりも強烈な、自らの中にある希望の光。
だれでも持っているものだけど、ふだんはなりをひそめている。

世の中は一見暗闇がとり払われているようにみえるけど、
グレーにひろがる試練の空気は今もたしかにわたしたちのまわりに・・。

旅人よ、油断なさらぬことだ。
生きるための力は知らず知らずのうちに削がれていく。
自らを守る手段を。
明るみを見る力、切実な希望が今を生きる力になるのだからと。

これは今も昔も変わらない、世界の空気がなしている業。
そして、人に定められた向かい風。
しかし、忘れてはいけない。自らの中に輝く純粋な光があることを。"