欅並木をのぼった左手にあるお店

ちいさいけど心ほっこり、French!テイストなお店♪

つたう涙のあとも

2011-06-27 | poem


泣き続けていた子供がふと泣き止みます。
それはカーテンのむこうに不思議なものを見つけたから。
大人たちは家の中をあわただしく動きまわっています。
窓辺に行って、話をする子供のまなざし。そこにはやさしい輝きがふたたび戻っていました。
母親が子供の名を呼びます。
返事をし、窓のむこうにそっと手をふって走っていく子供。まるで何事もなかったように・・。
大人たちは子供の気分がなおったのだと思っています。
でも、そこには不思議なヒカリが働いたのです。
"大丈夫だよ。ほら、僕の前で笑ってみな。"
不思議な姿とその声を聞いて、子供の気持ちはすうっと軽くなったのです。
"いつでも僕はそばにいるから。"
その声に自然と笑みがつくれるように・・。
母親の裾をにぎり指をくわえてついていく子供。
その心にはふたたび明るいものが宿っていました。だから、もう泣きはしないのです。
窓辺にいる友達の言うことがわかるから。
つたう涙のあともやがて笑顔が消してくれるのです。

月が教えてくれること

2011-06-21 | poem
ねぇ、ママのこと好きでなくなったの?
月明かりのもれるアパートメント。心地いい風がレースのカーテンを揺らす。
どうしたんだい?
なんとなく、そんな感じがするから。
わたし嫌よ、パパとママがしあわせに暮らせないなんて・・。
心配いらないよ。アンの悲しむ顔を僕もママも見たくないから。すこし疲れているだけさ。ただそれだけのこと・・。
ゆっくり休んだら、またいつものパパに戻ってくれる?
もちろんだよ。だからアンもゆっくりお休み。
真夜中に響くのら犬の声。寝息をとざすように、ドアの鍵があく。
毛布をはねのけ、アンが玄関の方へ。
ぼんやりとした明かりの中でふたりは話している。
しばらくして、アンがまた寝室へ。
毛布にくるまり、
パパ、ママはあっちの部屋で眠るって。とても疲れてるし、あっちの方が休めるからって。
そう。
ママ、なにか言ってた?
ううん。心配をかけてごめんねって。
あ、夜の街を歩いていて月がとても明るかったって。
月が教えてくれたんだよって。
今あるものがしあわせの種なんだって。大きくするのも枯らすのも自分次第だって。
あと、あまりわたしを悲しませないようにだって。
そう、いいこと教わったんたんだね。
ほんと安心した。お月様、ありがとうって。
アンの願いが通じたんだよ。お月様がちゃんと見ててくれるから、ゆっくり眠れるね。
アンは目をつぶり手を重ねている。
月明かりが部屋の中にヒカリを注いでいる。そんな夜ふけのお話。

自分というものを

2011-06-21 | essay


ある人が言うのです。
落ち着いてよく自分というものを見つめなさいと。
自分というものがわかりはじめると、自分の欲しているもの、これからのこと。そして、社会での成功が近づくのだと。
相手の求めているものがわかりはじめるし、自分と近い存在の人に出会い愛を育んでいけるのだと。
愛についてはわかり合おうと常に努力し、最後には思いやりが必要なのだと。
服装については自分というものを表現する大切で楽しみな手段であると。
その人はフランス人。とても気になるキーワードが満載のお話でした。

美しい人魚にまつわるお話

2011-06-21 | poem
街はずれ、海から入れる洞窟に美しい人魚がいるというのです。
しかし、そこに人が近づくことはありません。なぜなら、その美しい人魚は愛し合った男たちを食べてしまうからです。
ある月夜、ひとりの若者がその洞窟に泳いでいきました。
ほのかな月明かりの中で、人魚は男の体によりそい、こうささやくのです。
"ぼうや、どうしてここに来たの?
ここにきたことを後悔するよ。でも、そんな猶予もないかもしれないけれど・・。"
うっとりするような人魚のまなざし。そして、甘い声に男はなすがままになっています。
"ぼうや、この世界に別れを告げる前に、とっておきの甘い体験をさせてあげよう"
長い髪に包まれ、男は人魚とともに恍惚の時間を過ごしました。
そして、夜が明けたのです。
朝焼けの中、岸辺にうずくまっている若者の体。体はまだあたたかく、艶っぽい香りすら放っています。
若者は目を覚まし、遠い洞窟をふりかえるのです。
ぼんやりした記憶の中に、人魚のささやいた声を思い出しながら・・。
"不思議なヒカリを宿している人。わたしが求める欲望の炎ではなく、日ざしのようにピュアなヒカリを持つ者。
ぼうや、懐かしい思い出をよみがえらせてくれたから、今夜は街へ送り返してあげる。
願いがぼうやをここに導いたのね。そのヒカリを壊したりすることはわたしにはできないから・・。
美しいだけではない、その純粋なヒカリ。遠い昔に失ったものをふたたび見いださせてくれたお礼に・・。"

空を見上げて

2011-06-20 | poem
三階建ての建物。街を見渡せる絶好の見晴し台から足を投げ出してふたりの男の子が話をしている。
"この街に元気が戻るといいな。
通りに人は少なくなったし、大人の笑顔なんて最近見たことがない。
みんなどうしてしまったんだろう。明るい気持ちを忘れてしまったのかなぁ"
"今はみんなそうなのさ。
それが今って感じなんじゃないの?"
"僕は嫌だ。
昔みたいにいたずらして追いかけられて。街の隅で男と女がいちゃいちゃしててさ。
風船が空へ飛んでいくのをみんなで見上げたいよ。
どうしたらそんな街に戻っていくんだろう?"
"神様にお願いするしかないんじゃない?"
"神様はどこにいる?"
"あの空のむこう"
男の子は空を見上げ、手を合わせて。
"神様、どうかこんな暗い街じゃ僕は息がつまりそうです。
むかしみたいな明るい街に戻して下さい。
そのためだったら、今日のおやつは神様にあげますから・・"

壊れたものを

2011-06-20 | poem



壊れたものをいつまで抱いていたってもとに戻るわけじゃないんだよ。
祈りにかえても、嘆き悲しんだとしても・・。
愛する人が同じようなものを持ってきてくれるかもしれないけど、それでもまったくの同じものじゃない。
風合い、そして、ともにしてきた時間・・。
どうしたらそのものはふたたび見つかるのだろう?

しばらくして声が聞こえる。
"簡単なことさ。
同じものが心の中にあるんだ。
見つければいいんだよ。テレビのチャンネルを合わせるように。
あらゆるものがその胸の中にはそろっているのに・・。使えていない人の悲しい生き方・・"

行きなさい、そうすればわかりはじめるはず

2011-06-17 | poem
えぇ、そうです。
これは長い旅路になるかもしれません。
しかし、そのひとつひとつの歩みには大切ななにかが含まれているのです。
今は自分というより外の世界が気になるでしょう。
わたしたちは外のものと関わりながら内なるものを知ってゆくのです。
すばらしい自分を認識するための時間。
自分の中にあるヒカリを発見していく旅とも言えるでしょう。
やがて、自らの中にある美しいものをすこしずつ見つけていくことになるでしょう。
つらく味気ない足どりが、やがてうれしさをともなうように。楽しみすら生まれてくるようになります。
なぜなら自分というすばらしいヒカリを無数に見いだしていくのですから。
えぇ、これからのことです。
この道の向こうに明るみはあります。
今ははっきり感じられなくても、行きなさい。そうすればわかりはじめるはずですから。

鏡のむこうのわたし

2011-06-10 | poem


鏡のむこうのわたしは失ったものをまだ持っています。
やわらかな笑みを浮かべて、こちらをうかがうように。
静かな部屋。わたしは問いかけたい気持ちをおさえて、笑みをつくってみるのです。
心の中になにもないというのに・・。

声をあげて泣いていた、あの頃にはまだ持っていたのです。
美しいもの。手先は器用になったのに、今のわたしはなくなってしまった。
鏡のむこうのわたしはすました顔で、笑っている・・。でも、なんとなく悲しげに。
気持ちをくんでくれているとでも言うのでしょうか?

その口びるがかすかにでも動きはじめるのを、わたしは期待している。
唇を丸め、なにかを諭してくれるのではないかと・・。
首をすこし傾けて、わたしにささやいてくれるようなしぐさで。
名ばかりの人形ようなわたしに・・。

目をつぶり聞いてみようか・・。
とても求めているのです。失ったものをとりもどすすべを。鏡のむこうからの声を。
わたしを笑わせてくれる未来への言葉・・。気持ちがふっと軽くなるようなささやきを。
すぐ前の口びるがこれから動いてくれるのではないかと、期待しているわたしがここにいるのです。

わたしの前に横たわるもの

2011-06-07 | poem


いつも同じ態度をとるのね。
冷たくわたしを見つめて、かさかさの心になにが足りない?とささやいているかのように・・。
わかっているのよ。それでも口に出せないわたしの存在をとがめているの?
激しい嫌悪感を武器にひた走っていく人もいるわ。
ただ、わたしはそんな人とは違う。じっとしてもいられないし、走っていくこともしない。
どうすればいいのかわからなくなるのよ。そんないらだった顔をあなたはいつも冷たく見てるだけ・・。
表立って救ってくれるわけでもないし、いるかいないかのささやかな存在感をいつもわたしの前に示しているだけ・・。
うんざりするわ。激しくののしりたくなるのよ。
それでもなにもしないわたしがここにいるし、これからもそんなわたしで生きていくのよ、きっと・・。
なくならないなにかがいつもわたしの中にあるのよ。それが嫌いでいるのが問題なんだって、それはわかっているんだけど・・。
ねぇ、なにかささやいてくれない? 小声でいいから・・。なにか違った刺激が欲しいのよ。
心が壊れない程度の・・。甘いささやきなんて期待してないから・・。
ねぇ、なにか聞かせて。声を頼りにもう少し心を深く探ってみるから・・。
ねぇ、声を響かせて。自分の中にあるものを確かめたいのよ。
別の面にヒカリがあたるかもしれないから・・。
それをこれからの力に変えていきたいのよ、きっと今のわたしは・・。

これからの希望として

2011-06-02 | poem
ひとりの少年が教会のイスにもたれかかり泣いていました。
誰もいない教会の中、夜ということもありロウソクの明かりは灯っていました。
しばらく泣き続け、やがて、力もなくなりうずくまったまま寝てしまったのです。

そして、雪の降る中に少年はひとりで立っていました。
よく降り続く白い雪。しかし、寒さは感じませんでした。
"自分の心や体は自分で守っていかないといけないよ"
いつのまにか少年のとなりにいる男の子。白い服を来て、後ろに翼のようなものが見えるのです。
"やさしい気持ちのままでいいけど、生きていく君の体は君自身が守っていかなくてはいけないよ"
"僕だけが悪いんじゃないのに・・。僕も悪かったかもしれないけど・・。"
白い服の男の子はやさしく笑って。
"天におられる方はすべてわかっておられるんだよ。君は勇気を出してこれからを生きていけばいいんだ"
男の子の言葉に体の力が自然と抜けるでした。
"天におられる方すべてご存知なのだから・・。こんな境遇も意味あってのものだから・・"
"だから・・"
"そう、意味はかならず後で知ることができるから。なにかを伝えたいのなら祈りを捧げて。
天からの愛が祈りを通じて確かになにかを返してくれるはずだから"
"君は誰だい?"
男の子は笑っているだけでなにも答えてくれません。
何度か聞いてみるのですが、男の子はやさしく笑ったままなのです。

そして、目がさめたのです。腕や顔には湿った涙のあとが・・。
いつのまにかあたたかな毛布が肩からかけられていました。
教壇の方に神父様と若い女の人が話をしていました。
少年が立ち上がったのに気づいて、ふたりはそばにやってきます。
"風邪はひいてない?"
女の人の声に少年はあたたかいものを感じました。
少年はしばらくして。
"不思議な夢を見たんだよ"
神父様と女の人は顔を見合わせて、小さく笑って。
"それはなにかの伝言でしょう。先ほど窓を揺らしてなにかが出て行ったような気がしたのです。"
少年はぽかんとしたまま、ふたりの顔を見上げていました。
"さぁ、あたたかいお茶を用意しましょう。その夢を聞かせてもらってもいい?"
女の人は少年の肩に手をおいて誘(いざな)っていきます。

その夜、星はかぎりなく澄み切り教会の上には無数の輝きがありました。
少年の語ることを真剣なまなざしで聞き、神父様が言ったのです。
"それはあなたに祝福が訪れたのでしょう。いつも降り注がれているものを再確認してもらうために・・。
あなたのもとへ使者がやってきたのでしょう。
今を生きているご褒美としてね。そして、これからの希望として・・。"