欅並木をのぼった左手にあるお店

ちいさいけど心ほっこり、French!テイストなお店♪

真夜中に響く愛のささやき

2012-08-24 | une nouvelle
真夜中の庭園に飛び出していった彼女。
バラの咲き乱れる庭園でなにかをささやき、踊りをはじめるのです。
ひとつひとつのバラが愛をささやいてくれているかのように・・。
ドレスの裾はバラの刺で乱れています。
それでも彼女は笑みを浮かべたまま、しあわせそうに庭園を歩いていくのです。
夜露にぬれた小道を。なにもはかないままに。

物音に起きてきた庭師の夫婦、白いドレスの王女を見て驚きます。
しかし、そのまま気づかれないように様子をうかがっているのです。
かわいそうな王女様・・。
いいや、あの方は誰よりも明るみへと向かれているんじゃ。あんなことのあった後だで。
どうかけなげな心が癒されますように。
ここに咲くバラが王女の心に明かりを授けて下さいますように・・。

美しい庭園をぬけて、噴水のある広場へとやってきた王女。
噴水のふちにうなだれるようにうずくまり、涙を流されるのです。
彼女をやさしく包むように満天の星が頭上で輝いています。
やがて、やさしい声が彼女の心へと届くのです。

"いばらの道を歩もうとするのはもうやめにしましょう。
あなたの心にはあの庭園のバラのような明るい笑顔が似合います。
人の世界は時に厳しい試練に出くわすこともあります。
しかし、どんな時にも自らを尊び、見守っている者に祈りを捧げることができれば、愛は降り注がれていきます。
頭上にある星々をごらんなさい。願いを放ちなさい。
かならずや不思議な力がその痛む胸にあたたかいものを授けてくれるはずです。
庭園のバラがいつも美しく愛をささやいていられるのは・・。
バラたちがなにを願い祈るのか、よくわかっておいでになるからです。"

とある橋の上での物語

2012-08-23 | une nouvelle
橋の上から投げられた金貨。
川の中に入っていって、まるでなくなってしまったかのように。
しかし、不思議な物語はここから紡がれていくのです。

幾年も過ぎたとある夜のこと。
ふたたびそこに訪れた女性が目にしたものは・・。
川の中に揺らぐ繊細な美しい輝き。
まるで頭上の月が反射しているかのように、やわらかであたたかいなんともいえない輝き。
まぎれもなくあの時に投じた金貨だと、彼女にはわかったのです。
胸に訪れる不思議な感覚。

"あぁ、あのときの愛がこの胸によみがえってきそうな・・。"
そして、物語は月明かりのような幻想性をはらんでいき・・。

彼女の後ろに立っているのは・・。
あの時別れを決意した、愛しい男性(ひと)の影。
揺らぐ輝きを指をさして、振り返る彼女にやさしい笑みを。
ふたりは川底の輝きを見つめながら、お互いの笑みを確かめるように。
やさしい口づけを。

祈りに似た願いが金貨の輝きを通じて身をむすんだ、橋の上での小さな奇跡。

こんな時代ですもの。多少は・・

2012-08-21 | essay
ケ・セラ・セラ  雪村いづみ.




なるようになるさって、ちょっと抜けたような顔をして笑えたら一番いいですよね。
どんなにつらいことがあっても、先の暗がりが気になっていたとしても、
こんなときこそ神さまにお任せして、今を明るく生きていこうって。
ある種のひらきなおりの気持ちがなにか大きな変化を呼ぶのかもしれませんね。
意外にあっけらかんと笑い飛ばせたら、その人のまわりには明るいものが集まってくるような気がします。
こういう生き方って意外と難しいんですよね。
でも、こんな時代ですから。多少はなるようになるさって生きていければ、素敵じゃないですか?

あぁ、神さま。今日も・・・

2012-08-20 | message




あぁ、神さま。
今日も街ではたくさんの物語が生まれています。
つらいこと、悲しみ、苦労に義務・・。
人はそれでもたくましく、苦しい中でも笑顔をみせている人たちがたくさんいます。
日常は頭で考えているようにはけっしてならないですけど、その時その時に思うこと。
その実りが不思議な仕組みによってわたしたちに享受されていくのは、どうも間違いないことのようです。
だから、わたしはこう記していたいのです。
"生きている中で人はいろんなことを思い描くけれど、そんなわたしたちを神さまはいつも見守ってくれていて、真摯に生きるわたしたちにその人その人にあったすばらしいものを贈って下さるのだと。
日々いろんなことで思い悩むけれども、生きているだけで魔法のような日々は不思議な展開をみせながら、わたしたちになにかを伝え与えてくれているのだと。
だから、けっして自分で答えを早とちりすることなく、また狭い枠の中に自分をはめることなく、不安や苦しい時には祈りなさいと。
どんな人にでも神さまからの贈り物はその人の生き方にあったカタチで享受してもらえるのだからと。"
これは最近、わたしが切に思うことなのです。


これはどこの宗教にも属さない考えなのです。
一番近いものは、幼子が泣いた後に笑顔になってお空を見上げてお礼を言う、その神さまに近いものなのです。



                                          2012.8 makoto.s

小高い丘でわたしたちは

2012-08-12 | une nouvelle
小高い丘にのぼってきたのは、金色の蝶々と異邦人のわたし。
とても明るい月明かりの中で、わたしたちは夜があけるまで踊り続けていたのです。
それは願いを叶える不思議な催し。
蝶々はわたしに言うのです。
このまま踊り続けて、楽しい人生をいただきにまいりましょうと。
わたしは肩のあたりを舞う蝶々とともに月明かりを受けて踊り続けていました。
やがて、くるっと顔をまわしたお月様が・・、
楽しく踊るお前さんたちにわたしにできることはないかね?
蝶々とわたしは顔を見合わせて、
お月さん、ひとつ叶えてほしいことがあるんですけれど・・。
それは何だね?
わたしたちは遠い国へ戻りたいのです。
蝶々もわたしの後に続いて、
この地はわたしたちの国ではありませんから。
月は大きな顔を傾けて、
ほう。で、どこに戻りたいというのだね?
遠い遠い詩情の国。まだわたしたちが一度も足を踏み入れたことのない土地です。
それはどこにあるのだね?
神秘の国の隣。とても愛にあふれた魅力ある土地なのです。
月はさらに、
さっき君は戻ると言ったね。なぜ一度も行ったことのない国に戻るなどと言うのだね?
蝶々とわたしは目配せして、月を見上げて、
それはわたしたちの心にいつもあるからです。そこのことを考えると、心に明るみが戻ってきます。
月はにんまりと笑いながら、
では、わたしの国でもあるのかな?
そうですよ、わたしたちはその国に戻る夢をいつも見ているのです。
心がとても必要としているから。

その街に息づく願いの仕方

2012-08-07 | une nouvelle
外灯にもたれかかりピエロは夜空を見上げているのです。
ああ、星よ。この言葉が届くのなら僕の願いを聞いておくれ。
そのまま力なく歩きはじめ、郊外の小さな家を目指して。

裏路地を歩いていくと、夜中にもかかわらずあいている小さなカフェがありました。
その明るさに目がとまり、店の中をのぞいてみると、白い髭をははやした店主がのんきに新聞を読んでいるではありませんか。
ピエロは行き過ぎようと思いましたが、なにかが心にささやいたのです。
あなたの求めるものがここにはあるんだよと。
入口に近づいて、中をうかがってていると、
ほう、めずらしい珍客だ。いらっしゃい。
カウンターの向こうから、白い髭の店主が手招きしているのです。
さぁ、なにをためらっているんだ。入ってきてあったかいものでも飲んでいきなさい。

ピエロはカウンターに腰かけて、お茶を待っていると、
う~む、ピエロにしては元気のなさがにじみ出ているぞ。どうした? 心の暗がりは早くとりのぞいた方がいい。
ピエロは言います。
実は・・、僕の彼女がいなくなってしまったんですよ。突然に、さよならも言わず・・。
ほう。
ピエロはさらに、
もともと活発で明るいのが取り柄の彼女だったのに、こんなに突然いなくなるなんて・・。
深いため息をつくピエロに、店主はうなずきながら、
う~む、これはなにか深い理由があるに違いない。で、連絡のとりようはないのかね?
ピエロは残念そうに首をふるのです。
う~む。だったら、もう上にお願いするしかないな。
ん?
ピエロはちょっと意味がわかりかねて、
上とは、どこですか?
上だよ。見上げたことはないかね、夜のお星様を。
驚き目を丸くしているピエロに、
そういう時にはな、お星様にお願いするのが一番なのさ。
本当にお星様に願いをすると、叶うのですか?
当たり前じゃないか。わしゃ、この年まで何度お星様に助けてもらったことかね。

店主は自分の人生に起こった不思議なことをピエロに話して聞かせました。すると、ピエロの気持ちもだんだんと軽くなり・・。
そういうことじゃからな、帰りの道ででもお星様と話をしてみるといい。きっとお前さんに良い贈り物をしてくれるはずだから。
あったかいカモミールティーを飲み干し、ピエロは席を立ちます。
ありがとうございました。とても気持ちが明るくなりました。
店主は髭の奥に笑みをうかべて、
その調子だ。しっかりやりな、ピエロさん。涙を浮かべるのは芸の中だけにしてな。

静かな夜更け。帰りの道で空を見上げながら歩くピエロ。
川沿いを歩き、家が見え始める頃、星はひときわ輝いていました。
しかし、そんな変化もピエロは見逃して・・。
家にたどり着くと、一枚のカードがドアに挟まっていました。
そこには、探していた彼女からの文字が。
愛するあなたへ。やむない理由で突然消えてしまったけれど、けっして愛を忘れたわけではないのよ。もうすこし待っていてね。
ピエロはカードをにぎって家の中に。
電気をつけるでもなく明るい窓際に立って、星々を見上げ、話しかけてみるのです。
ああ、お星様。このような不思議な出来事をどう説明したらいいのでしょう。今は彼女の無事を祈るのみです。
しかし、明日への希望は生まれました。またあの明るい笑顔の彼女とともにわたしが暮らしていけるようにと。
そして、あのカフェのおじいさんにも祝福を与えてあげて下さい。
忘れかけていた大切なものをふたたび気づかせてくれた人ですから・・。

街には今日もたくさんの

2012-08-05 | essay




街には今日もたくさんの車が通り過ぎ、人々が思い思いの目的地へと足を運んでいます。
ふと立ち止まり、大時計を見上げる人。
大道芸人の演奏に耳を傾ける人。
小さな子供たちがメトロの行き過ぎた時の風が面白くて、鉄柵のあたりで飛び回っています。
鐘を鳴らしながら行き過ぎていく大きなバス。
この街には、今日もいろいろな物語が展開されています。
おもしろさも悲しみも含んだ奥深いシナリオが・・。
今日という日の演出でこうして繰り広げられているのです。

たくさんの舞台役者さん、今日という舞台はもう今かぎり。
せっかく与えられた晴れの舞台です。しっかり役になりきって動いてみようではありませんか。

そのキュートなカバンにはたくさんの

2012-08-05 | une nouvelle
そのキュートなカバンにはたくさんの夢がつまっていて、あけると虹色の蝶々が青空へと飛び立っていくのです。
とある娘さん、いつも笑顔でいられるわけじゃないけど、そのカバンをもっていることで花のような気持ちを忘れずにいられるのです。
カバンはおばあちゃんからもらった素敵な誕生日プレゼント。ピンクを基調にしたやさしいストライプ柄。
目をくりくりさせておばあちゃんの言うこと。
"この街ではいろんなことがあるけれど、このカバンがあれば大丈夫。
心に明かりを欲しい時はこのがま口を大きくひらいてみなさい。
たくさんの蝶々がお前の願いをもって空へ飛び立っていくから。するとね、空からお前への愛がたくさん届いてくるんだよ。"
ある時、娘さんがカバンをあけると、あら不思議。いつもの街がちがったものに早変わり。
人の笑顔が、あざやかな車のカラーが、褐色の家々の屋根が、すべてが心にほほ笑みかけてくれるのです。
"だから言ったでしょ"って、そんなおばあちゃんのしたり顔と一緒に。
ひらいたカバンは、娘さんだけじゃなくて、通りを歩いていく人にも、屋根の上のハトにも、路地の片隅に丸まる猫にも、いたるところで心を晴らしてくれるのです。
なにかが空まで届いている。
おばあちゃんの不思議な魔法が。
"メルシー、おばあちゃん。夢を見るってとても大切なことなのね。"
カバンのそばにはいつしか集まってきたハトに猫に道行くおじさんに・・、みんな笑顔で空を見あげて。

心の奥にある水源

2012-08-01 | essay




その街にはまだヒカリが身近に存在していました。
傷つくことも苦しいことも日常に起こっていましたが、その根底に脈々と流れるやさしい水源のようなものを、わたしはたしかに感じたのです。
それはまだ日本ではあまり見かけられないものでした。
その水源こそが、わたしの力の源である事に気づいたのはそれからすぐのことです。
旅の日々のなか、わたしに響いてきた言葉。

この水源は世界のどこにいても存在しうるもの。
遠い異国に戻っても、心静かにこの水源を求めなさい。
やがて、心は水源とつながり、そこからあふれてくるものが不思議な物語を生むからと。

本当のところはよくわかりませんが、今のわたしにはその水源が心の指標となっているのです。
これからの日々、水源からあふれてくるものを丁寧に書きとめていこうと思っているのです。

不思議な夜更けのヒカリ

2012-08-01 | une nouvelle
月のない夜の橋。輝く外灯のそばをうなだれて歩くひとりの女性。
ぼんやりと橋をわたって、川沿いを力なく・・。
鳥の鳴き声が時折響く夜更け。女性は並木のひとつにもたれ立ち止まっていると・・。
男の子のような声が聞こえてきたのです。
女性を呼ぶ声に、はっと顔をむけてみると、
橋の上に立つ天使の像が女性の方を見ているではありませんか。
驚きとまどっている女性に天使は、
"人はいろんなことで嘆き悲しみます。
ですが、日々を真摯に生きている人に蒼いものは寄り添いにくくなるものです。
だから、あなたはこのままでいいのですよ。
時とともに暗がりは不思議な力で晴れていきますから・・。"
女性はしばらくぽかんと立ち尽くしていました。ですが、鳥の鳴き声に我にかえり、ふたたび歩きはじめたのです。
ゆっくりと、寄り添われるように家の方へ。
すると、帰った家に明かりが灯っているのです。
女性が扉をあけてみると・・。
愛する人がはにかむような笑みを浮かべ出迎えてくれます。
さっきは言い過ぎた。君のことを思うがゆえに熱くなってしまったのだと。
テーブルには甘いものと熱い飲み物が置かれていました。
そして、謝罪の気持ちと、君のへの愛にと、真ん中に一輪のバラが・・。
夜風にあたって冷たくなった女性の肩を抱いて、愛する人は家の中へと招き入れます。
テーブルに腰かけて、あたたかな飲み物を口にすると、女性はあの時聞いた天使の言葉を思い出したのです。
そして、夜更けの窓の向こうを見ると、不思議な輝きが暗闇のむこうに流れていったのです。
なにかのヒカリ。女性はそのときはじめて力なくも笑みを浮かべることができたのです。