欅並木をのぼった左手にあるお店

ちいさいけど心ほっこり、French!テイストなお店♪

美しい星のもとでの街にて

2011-12-09 | poem
今夜、眠りにつく前にこの街がどんなに素敵な街か、あなたにお伝えしておきましょう。
普段なに気なく通っている街の片隅にも素敵な物語は生まれているのです。

大通りをすこし脇に入ったあやしげな通り。そこには娼婦やホームレスたちが通りすがりの人になにかを求め声をかけてくる場所があります。うっすらと昼でも暗がりがともなう通り。
今夜もそんな通りに入っていく大人たち。ひそひそと会話が交わされ、近くの建物へ入っていく人たち・・。
夜の零時をまわると、小さい鐘の音がなります。通りのむこうにある教会がならす夜の響きです。
ひとりの娼婦がそばにすわるホームレスの男にこう言うのです。
"わたしはこの鐘の音が好き。なかでも夜中の鐘はなにか不思議な響きが感じられるのよ"
"なにが違うって言うんだい?"
ホームレスは座ってうつむいたままなにかを磨いています。
"なにかってそれはわからないけど、しあわせの匂いがするんだよね"
"それはおめでたいこったな"
"ほんとなんだよ。うまく言えないけど、夜空の奥になにかあったかいものを感じられるんだ"
ホームレスはなにも言いません。
"わたしなんてなにがしあわせなんてわかるわけじゃないけど、この時間は何かしあわせの感じがわかるんだよ"
"いいことじゃないか。もしかすると知らせかもしれないし・・"
"ちゃかさないでおくれよ。でも、ほんとなんだから。
しあわせはこうすればとか、なにかがあるわけじゃなくさ。う~ん、なにか空気のようにやってくる時にはやってくるような・・。
甘くたって悪くたって、そんなの関係ないような、そんな気がするんだよ。ただ、それは感じだけなのはわかるけど、それを感じる時だけはいろいろなしあわせを頭に思い浮かべることができるのさ。"
"どんなしあわせだい?"
"わたしの場合はやはり男。素敵な男とあたたかな家庭をもつことさ。
ふだんはそんなこと考えないけどさ、この時間には不思議とそんな甘い思いに期待がもてたりするんだよ。"
"神様になにも不可能なことはないからね。"
"そう、ただなんというか、そんなことじゃなくて、とても単純に夢はむこうからやってくるって。まるでクリスマスのプレゼントのように、朝なったらそこにあるみたいな不思議に現実味がたっぷりの夢を描けるわけさ。"
"毎日夢を描けてしあわせなもんだ"
"やっぱりちゃかしてる"
女は軽い声で笑って、
"でも、その時間はたしかにしあわせ。一日平凡に過ぎていく人もいるだろうけど、わたしはそんなしあわせの音を毎日聞いていられる。そう思うと、今のわたしもまんざらじゃないって思えるから・・・"
"俺もそんな夢を描きたいものだね"
"やっぱりわたしの夢はなにかとつながってる。そう思えるから、今はしあわせ。そう思えるから、明日また生きていける。"
"小娘がたいしたものだ"
"あ、ばかにしてるね。でも、いいわよ。わたしのしあわせは分けてやんないから。
また、明日鐘が鳴ったら、しあわせは夜空の奥からやってくる。ね、ロマンチックな女でしょ?"
"そうだね、まぶしいくらいに・・"

人々が眠りについた夜中にささやかれる会話。
多くの星が美しく輝くその下で、この通り以外にも美しい物語がたくさん生まれているのです。
そう、ここに書ききれないくらいに・・。


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