欅並木をのぼった左手にあるお店

ちいさいけど心ほっこり、French!テイストなお店♪

深い深い夜空に思いをはせて

2012-03-28 | essay


毎日なに気に床について眠りの世界へ導かれていく。朝になればまた同じような日常をひたむきに生き続けて・・。
時に悲しい夜もあるでしょう。つらさが身にしみたり、淋しさにぐっと胸をさされたり。
ただ、そんな心と対になっているもの。夜空の広さとそこにある美しさや豊かさを知れば、日常のささいなわだかまりや傷などはすぐに癒されていくでしょう。
なにも寒い山の上から夜空を見上げる必要はありません。
広大な夜空の海を頭の中に抱きながら、そこにある無数の光があなたに力を与えてくれる、そう描ければいいのです。
夜空はあなたに語りかけてくれるでしょう。
なにをそんな小さなことで心を暗くしているのですか?と。どれくらい自分の可能性を限定的に、悲観的に見ているのですか?と。
夜空の無数の輝きが教えてくれること。
それは見上げる大きな海と同じくらい深い力があなたの中にも宿っているということ。
深い深い頭上の海を自分の心と重ねてみて。
思いが空へ届けば、あなたの心はありし日の姿を取り戻していけるはず。
また明日からの一見同じような日常の中にも、可能性に満ちた明るい未来を見いだしていけるはずです。

三日月に乗って吟遊詩人は

2012-03-28 | une nouvelle
三日月にのって吟遊詩人は世界を旅しています。
ポロロン、ポロロンと竪琴をならしながら。
ある山のふもとにさしかかった時、テントを張る山登りに出会います。
そこのお方、あなたはなぜ山に登るのです?
一番高いところから世界を眺めるとなにかが変わるような気がしてね。でも、君の高さには負けるけどね。
雲と雲の切れ目。崖のそばにそびえたつ古いお城。
城の窓から顔を出している紳士に詩人は声をかけます。
いったいなにを眺めているのですかぁ?
君のような来訪者がいないか探していたのさ。
お一人でお城に?
そう、ワインのように血をすする友人など、誰も近くにはおいてはくれないだろう。君が友人でもこのお城に住むのは尻込みするだろうね。
風が強くなり、草原を走る幌馬車が右に左に傾いては進んでいきます。
こんな夜にどこへ急ぐのです?
ウチのカカァがもう生みそうなんだよ。となり町のお医者まで大急ぎだ。
この先に雨雲がせまっていますよ。
ええぃ、雨でも槍でもやってこいさ。さぁ、馬よ。ここが仕事のしどころだぞ~。
静かな湖、ぼんやりと湖面に映る星空を見つめるひとりの女性がいます。
お言葉をかけてもよろしいですか?
あら、そんなところに。なにかご用かしら?
なにをさっきから眺めているのです?
湖に映る天体を見ているのです。これからの未来を占うためにね。
水面にはどう示されていますか?
今夜不思議な来訪者がしあわせを運んでくれる、とあります。わたしの気持ちを癒してくれる人が・・。
あなたのお役に立てるかわかりませんが、竪琴を披露いたしましょう。
ありがとう。でも、なぜわたしに?
月にお願いしたのですよ。わたしを乗せて素敵な人のいる場所へと連れて行ってくれないかと。
長い旅でしたが、ようやく月の意図が理解できましたよ。

異国の街の屋根裏部屋のお話

2012-03-23 | une nouvelle
ある異国の街の屋根裏部屋を借りている女の人のお話。
その人は貧乏で着る服を一着しかもっていませんでした。しかし、その一着を大切に使っていたのです。
ある日、街のふとした出来事で袖の部分が破れてしまいました。同じ布はなく、補正にだすお金もありません。
そんな時です。どこからともなく声が聞こえてきたのです。
天窓から入ってくる月あかりに願い事を言ってみなさい。願いはかならず叶うからと。
誰の声かわかりません。
女の人はなにかのまちがいだろうと思っていました。そんな魔法のようなことはこの世界にはないはずだと。
その夜、強い月あかりが部屋におりていました。その魅惑的な明かりを前に、女の子とはだめもとでお願いをしてみたのです。
どうか、この服の袖がなおりますように・・。いいえ、この服がどうか新しく素敵なものになりますように・・と。
すると、自分のまわりがぼんやりと明るみはじめました。急に眠気がやってきて、ベッドに倒れかかったのです。
しばらくして・・、目覚めてみると、ちゃんと毛布にくるまり、ベッドで寝ていたのです。
そして、洋服は・・。
ま新しい素敵なデザインの服がベッドの横にきちんとたたまれていました。
まだ暗い月明かりの中で。
ああ、本当に願いがかなった。信じられないこと。服を取り、女の人が窓から空を見上げてみると、そこには大きなお月様が・・。
今まで見たこともないような明るい愛くるしい表情で浮かんでいました。
じっとお月様を見ていると、こうささやいているような気がしたのです。
"お嬢さん、この世界もそんなに捨てたものじゃないんだよ。これからの未来に期待が持てるし、そう思うことで人生は明るさをとり戻していけるんだよ。"

夢かなう前の夜に

2012-03-22 | une nouvelle
何十年も探し求めていた宝物がようやく見つかりかけた夜。
無人島を前に海賊船の女船長が声を張り上げます。
お前たち、よぅくがんばった。ごちそうはもう目の前に。
今宵は心行くまで飲もうじゃないかぁ。
大柄な者、痩せた者、男に女。みんな歓声をあげて喜びます。
夕闇迫るおだやかな海。そんな歓声を聞きつけて海鳥もマストの上からおこぼれを狙います。
年老いた機関士が船長の前にすわり、
島の宝物はどのくらいの価値がある?
じいさん、モウロクしたかい? あすこに眠る財宝はこの星のどの宝石よりも純度の高い貴重なものさ。
古代ローマのはじめから消えちまった財宝。
こんなぼろ船ではいずりまわらなくても、一生いい暮らしができる、そんな代物があそこに眠ってるんだよ。
だれかに発見されたとかはないのかい?
今日はやけにからんでくるじゃないか。発見されてたら、とっくに世界中に知れ渡っているやな。どうしたい? ここに来て、怖じけづいたかい?
機関士は首をふり、
ただ気になったまでさ。歳をとるといかんな。心配ばかりが頭に住み着きやがる。
すこしぼけた方がいいんじゃないかい? 若い者たちの姿を見てみなよ。やつらときたら、これからの人生を考えて、ギラギラ陽気に酒盛りさね。
あいつらの様にはもう生きれんね、ワシにはな。
けっ、笑わせるね。
その分奥ゆかしさがあるというもんだ。
その奥ゆかしさで何人の女をモノにしてきたんだい?
ははは、みたらわかるさ。ないものねだりで、いつも夢ばかりみている目の前の女ぐらいしかゲットできない男なんだよ、ワシはな。

No.1スイーツの発表会

2012-03-22 | une nouvelle
大きな宮殿に連なって馬車がとまります。
今宵はNo.1スィーツの発表会。
恰幅の良い紳士方。頬のぷっくりしたドレスの婦人方が集まっておしゃべりに夢中。
すると、チロリロリン。
幾人かのパティシエが紹介されて、さっそく実演開始。
どんなすばらしいお菓子ができるかみんな興味深々です。
甘い匂いとともにひとつまたひとつと作品が完成していき・・。
各自の前にスィーツがならんで、試食のスタート。
一口食べてはヒソヒソ。もう一口食べてヒソヒソ。
だんだんとスィーツの優劣が決まっていき・・。
やがて、優勝者の発表が。とても太ったパティシェが表彰台へとあがります。
たくさんの拍手のあとで、司会者から勝因を聞かれやや困ったパティシエは・・。
"ありがとうございます。今宵はとても思い出ぶかい夜となりました。
わたしが勝ったことで皮肉にも証明されたことがひとつあります。
それはこの作品をつくっている時にわたしが思っていたこと。
見た目、感触、味、すべてにおいてこんなに太ったわたしが食べたくても食べられないものを完成していったのです。
スィーツとは本当に魔物なんですね。魅力的でいてその実おそろしいものだということがはじめてわかりましたよ。"

白い髭をはやしたスズラン売りのおじいちゃん

2012-03-22 | une nouvelle
五月のおだやかな日ざしの下で鈴を鳴らしながら通る荷車。
そこにはいっぱいのスズランが。
白い髭をはやしたおじいちゃんが街に響かせるスズランの唄。
イタリアオペラのような野太い声に、家々からご婦人たちが出てきて・・。

"お嬢さん、このあまったスズランをひとつだけどプレゼント"
女の子はもらっても表情を変えず、じっとおじいさんを見上げています。
"どうしたことだ。スズランをもらって喜ばない人はいないんだよ"
"だっておじいさんの気持ちをもらってもうれしくないわ"
"ほう、じゃあ誰の気持ちならうれしいの?"
"わたし好きな子がいないから。"
"それは残念なことだ。このスズランが役にたたないことを嘆いているよ"
"おじいちゃん、どうしたら好きな人ってできるの?"
"そんなの簡単なことさ。愛をささやいてみるんだよ。思いついたらどんな時でも。
そしたら、自分の気持ちまであたたかくなって愛がどんなものかわかりはじめるはずさ。
そこでスズランの出番さ。人生がより豊かになるよ。"

風船がつなげたあったかいお話

2012-03-13 | une nouvelle


ごきげんよう、坊ちゃん色あざやかな風船はいかが?
公園で道行く人に風船を配るピエロ。
どうぞ、カラフルな風船をもらえるのはここだけですよぅ。
花屋のオープンを知らせる風船。噴水のまわりでピエロが渡していると、ひとりの女の子が足をつかみ、
ねぇねぇ、お母さんがいなくなっちゃったみたい。
んっ?
それにしては平然としている女の子にくわしくわけを尋ねると、そこの草むらで見つけた子ネコのこと。
ミィミィと抱いてみせたのはかわいい三毛の子。
お嬢ちゃん、もとの場所にお返しよ。お母さんが迎えにくるかもしれないから。
だって小さな箱に手紙も入っていたのよ。
箱のところにいってみると、この子をかわいがって下さいという文面が。
う~ん、これは困ったね。
ほんと、今日からかわいそうな赤ちゃん。なにかいい考えはない?
そうだ、風船にネコの似顔絵を描いてとばしてみたら?
それはいい考え!!  さっそく描いてみて。
いやいや、それはお嬢さんが・・。
気後れしながらも女の子の描いた子猫の絵が、ひだまりの空へいくつも・・。
いい家族が見つかるといいな。
大丈夫だよ。天の神様があんなすばらしい絵を見過ごすはずはないから。
ミィミィとないている三毛の子にあたたかい家族が見つかったのは、そんな数日後のこと。
風船を見つけた幼い子供が母親に頼み込んで叶った、あったかいつながりのお話。

王様が気づかない大切なこと

2012-03-12 | une nouvelle
何人もの弾き語りの者を招いては罵声を浴びせている王様。
今夜もビクビクしながら語り師が口上を述べていると、
もうよい! 下がっておれ!と手厳しいおコトバ。

わたしの耳を満足させる者はいないのか?
この世はつまらぬ芸術ばかりか・・。

王様、わたしの語りを聞いて下さいな。
ひとりのやせた旅芸人が王様の前に出て、アコーディオンで弾き語り。
しばらくして・・。

お前はすばらしい腕の持ち主じゃな。このような感動ははじめてじゃ。
また聞きたくなる口上、この城のおかかえ弾き語り師にならぬか?

旅芸人は旅があるのでと断りながらも、感謝の意を唱え、

王様、わたしは愛を讃歌したまでです。
この語りが心に響くなら、まわりにもっと愛を与えてみてはいかかでしょう?
そうすれば、毎日がもっと色づき心が満ちていくはずですよ。

ワイン工場のやや込み入ったお話

2012-03-11 | une nouvelle
山の方へ太陽が沈んで静かな田舎町に夜がやってこようとしていました。
ワイン工場の外でタバコを吸うふたりの従業員。
いつもは楽しくこれからの夜をどう過ごすか話すのですが、今日ばかりはちょっと違うようです。

おまえ、あの話は聞いたか?
ああ、聞いた。
驚いたこともあるもんだ。あさかあのじいさんがなぁ。

そこへ工場のドアを開けて、女の従業員が出てきました。

お疲れさま。またふたりして、これからの悪巧み?
そんなんじゃないや。
なにかあったの?
昨日の泥棒を話、聞いただろ?
聞いたけど、それがどうしたの?
あの泥棒が話したこと、本当だと思うか?
わたし、あまりくわしくは聞いてないんだけど・・。

そこで、ふたりがくわしく説明する泥棒の話とは、

都会から借金のために逃げてきた中年男。なんの目的もなくやってきた先には大きな工場が・・。
夜になり、そこに忍び込んで、はじめてここがワインの工場だと気がついて。
すると、赤ら顔のおじいさんが後ろから声を。驚き動揺している中年男におじいさんが言ったこととは、

ここのワインはなんといっていいか、不思議な味が宿ってるんじゃ。
その不思議さはな、この土地にタネがあるんじゃよ。
昔、ここに流れ星がいきついたという逸話があってな、それはたいそうな穴があいていたそうじゃ。
だから、この土地にはどこかの星の石ころなどが巻き散らかされているらしい。それがワインにひと味つけるというものさ。
なんだってかなう魔法のワイン。
どうじゃね、お前さんも飲んでみては・・。

必死に断る中年男を自分も飲むからと強引に誘って、

どうじゃ? おいしいのは折り紙付きじゃが、この不思議な甘み。
お前さんの願い事はなんじゃね?

次から次にすすめられ飲んでいるうちに、ふたりはぐったりと樽の壁のお世話に・・。
中年男がおぼろにおぼえているのは、

お前さん、若い時からすこし嘘が過ぎたようじゃな。
ただ、嘘は癖になるから気をつけなきゃいかん。
いつまでも嘘にすがっていてはしあわせにはなれないぞ。
どうだ? このワインに正直者への道を願ってみては・・・。

翌朝、千鳥足で警察に引き渡された中年男。
警察にて、いろいろ聞かれているうちに泣けてきて。
もう一度あのおじいさんに会わせてほしいと。
しかし、工場主だった赤ら顔の社長は昨年この世界を後にしていて・・。

それって本当の話なの?
どうもそうらしいぜ。
だったらあなたたちももうすこししっかり仕事しないと、また出てきちゃうわよ。
そりゃ勘弁だな。
また言われるんじゃない? こら、またお前たちか。よし、今夜もワシの酒にたっぷりつきあってもらうぞって。

ひっそりした沼地で

2012-03-11 | une nouvelle
ひっそりした沼地でケロケロ。星のいっぱい出た夜空にむけてケロケロ。
水面から半分顔を出して、虫のごちそうが通りかかるのをしずかに待っている。
そんなカエルの夢は虹色の体を手に入れること。
たくさんいるカエルの中でも美しくてきらびやかな特別な存在になること。
今も遠い一番星にむかって願いをささやいているのです。

お星様、どうかこのわたしをとびっきり目立つ存在にして下さいな。
羨望の的で、オスたちがこぞってわたしのごきげんをうかがうように・・。

そこに一匹の虫が水面すれすれを飛んできました。
ぱくり、と見事にしとめて、ゴロゴロ口をうごかしながら、さらに願い事を・・。

お星様、できれば小さな虫たちが列になって飛んできて、お腹がすいた時だけぱくりと食べられるようにして下さいな。
ハエや蚊などの小さな虫でいいのです。いつも同じだと飽きるので、たまに違ったものが飛んできてくれるとなおオッケーです。

モゴモゴと口を動かしながら、そうささやいているカエルのそばに、さあっと近づいてくるものがあります。
白い水鳥が沼に浮かぶ石におりてきて。

そこにいるカエルさん。お気をつけて。うちの彼氏が狙っていたことよ。
でも、今はそんなにおなかがすいていないからいらないんだって。
そんな見栄えでよかったことね。うちの彼氏はきれいなものが好きだから、あなたはお眼鏡にかなわなかったみたいよ。よっぽどお腹がすいていないかぎりはね。

静かな沼地に声が響き、また水鳥は空高く飛びたっていきました。
夜空で二羽の水鳥が森の方へ消えていくのを見送っていたカエルは、

お星様、虹色の体はもうけっこうでございます。
この体でもわたしはとても満足。
でも、ちいさなごちそうは定期的に贈って下さいな。わたしは虫の見た目など気にしたりはしませんから。