遠い昔、屋根裏部屋で寝泊まりしている女が遅い仕事を終えて部屋に戻ってきた。
疲れていて食べることも忘れてしまうような中で、ベッドへと倒れ込む。
シーツの感触を心地よく感じながらふと目をあけると、床には星々の明るみが降りてきていた。
静かな部屋の床に静かに降りている明るみを女は眺めていた。
その光はやさしく疲れを忘れるほどの純粋さが秘められている。
女はその明るみをじっと眺めていた。星々の語りかけには気づかないながらも、その感触は確かめられたようである。
ある天文学者が大きな望遠鏡の前に立っていそいそと歩きまわっている。
その歩き方は早く興奮を必死に押さえようとしているようである。
天文学者は明るい夜空を眺めていてふと感じたのだ。
星々にはメッセージ性があり、その意味合いが分かりかけてきたからである。
そう、この天文学者は星々の語りかけの存在を発見していたのだ。
それが確信に近いものとなり、今まさにその意味すらうっすらと理解しはじめているのである。
興奮を必死に押さえるように部屋を隅々まで歩き回る。
そして、今わかりかけた意味合いを思い返していた。
「う~む、これはすごい発見だ。しかし、この発見によって人の生き方は大きく変わるかもしれない。」
なぜならそれは神の言葉のようにはっきりとした現実へのメッセージであったからである。
「ねぇ、見てみて。お星様。すごいね。」
父親と母親のあいだで夜空を見上げるふたりの子供たち。お姉ちゃんはこの夜更けになっても眠らずに星の美しさに見とれている。
弟の方はもううつらうつらと夢見心地である。
父と母はゆっくりと幌馬車を進めている。
この家族は新たな地へ渡っていく、その途中の夜なのである。
夜更けはあまり動くのは危ない。しかし、この荒れ地を早く渡りたい一心の旅路なのである。
街はもうすぐあるはずである。両親の不安をよそに子供たちは天空の渦に見とれている。
弟にも見てみるように言うのであるが、もう目はつぶったままである。
仕方なくお姉ちゃんひとりでの星空見物である。
静かな荒れ地をおとなしい幌馬車が行く。
大いなる星々の輝きはこの大地になにかをささやきかけている。
この地のいたるところでそれを受け取っていく生命がある。
お姉ちゃんが眠たげにつぶやく言葉。
その聖なる言葉も両親にはただの寝言にしか聞こえてないようである。
"愛はいつの時にも降り注いでいる。
心の中に輝く星たちの力をどうか気づいて下さい。
その愛によって人は愛に生きていくことができるのです。
本当の意味で真実の感情で過ごしていくことができる。
それは遠いいにしえから変わらない真実。
わたしたちの愛はこの星々の空にこそ輝き、その胸の中にも灯っていくものなのです。"