欅並木をのぼった左手にあるお店

ちいさいけど心ほっこり、French!テイストなお店♪

澄んだ泉に息づく祈りのことば

2012-09-30 | une nouvelle
月の見える深い森の一角。そこには深い泉があるのです。
木々に囲まれた泉の中央にはとがった岩が空にむけて突き出ています。
誰も知らないこの場所に夜な夜な寄り添う女性の姿があります。
長い髪を岩になびかせ、月をみあげたり、指先で水面に波紋をたててみたり・・。
昼の間は姿を見せない彼女。この泉に昔から住む人魚なのです。
言葉も話さず、人という生活も知らない彼女は夜になると、いつもの岩場にたたずみ、なにかの祈りを捧げているのです。
森を通る獣たちがこの女性の姿をじっと見つめます。
見上げた夜空の星々が、彼女の視線に輝きを強めるからです。
夜の森を行き交う鳥たちも彼女がいると静かに枝を離れないのです。
彼女の澄んだまなざしの奥にあるもの。
深い泉と同じようなピュアで美しいカタチが胸のうちにあるのです。
星とのやりとりのなかで彼女が受けとるもの。
動物たちもその美しい響きを聞き漏らすまいと彼女の姿を気にしているのです。

"美しい星々の輝きがいつまでもわたしを見守ってくれる。
星と同じ輝きのこの胸になにかが共鳴して・・。
大地に息づくすべての命にも。はかなく尊い愛という力を・・。"

女の子の心の中には

2012-09-27 | une nouvelle
女の子がお空を見上げて夢見ること。
とてもおしゃれで愛に満ちた物語。
悲しいことは魔法の杖によってジョークの世界に。
王妃様のような気高く美しい一面。高貴な笑顔に、味気ない日々はみるみるうちに明るい一日へ。
とある男の子に声をかけられ、彼女は笑顔でこう答えるのです。

"お声をかけるならどなたか他の方にされてみては。
わたしの心は愛する人の胸へと捧げられているのよ。
そう、明るい日々の出来事ともにね。"

思い出の刻まれた指輪

2012-09-25 | une nouvelle
深紅の宝箱をひらいてみると、そこに入っていたのは輝くダイヤの指輪。
ぶどうをあしらったその房はまるで幻想の中の宝物のようです。
彼女はうれしいため息をもらし、彼の腕の中へ。
彼女の耳にささやく彼の言葉は・・。

"ねぇ、僕の大切な人。ぶどうはあの時の思い出の絆。
いつまでもあの頃のことを忘れないようにと。
君の指でいつも輝いてくれればいいって。
あの時の愛の言葉、その指に刻み込まれているように・・。"


秋、ぶどう畑で誓ったことば

2012-09-25 | une nouvelle
笑みをこぼし、彼方のぶどう畑をあなたは望んで。
これからの甘い未来をわたしに語って聞かせてくれたのです。
おだやかな風と金色の風景。わたしたち以外になにもありませんが、そんな時間がとてもしあわせでした。
わたしの指に触れて、永遠のしるしが巻かれたとき、わたしはなんてしあわせな気持ちになったでしょう。
永遠の愛のしるしと、細いぶどうの蔦を指にからめて。
あの時からこの指には愛のしるしが刻まれたのです。

時は過ぎて、ふたりの距離は離れていってしまったけれど、あの時の甘い思いは胸の中に・・。
別の人へと愛はうつってしまったけれど、なにかが心の奥底で宝物として輝いているのです。
あの日に誓った愛のことばが。
おそらくその言葉は、幻想として虚しく秋の空へと消えてしまったように思えたけれど、あの時のふたりの思いはとても純粋でした。
そんなピュアな感覚が、今もわたしの胸の奥に降り積もっているのです。

そばにいないあの人のことば。
秋のおだやかな空を見上げると、その時の甘い思いがよみがえってくるのです。
永遠というとても素敵な物語が今もわたしの胸の奥で心地いい旋律を奏でているのです。

これからのキーワードは

2012-09-25 | essay



最近、ひとつ思うことがあるのです。
それはどう生きていけば素敵な生き方ができるのかということ。
いろんなプランが明確に、順序だてて目の前にあればいいのですが、そんなにはっきりしたプランがあって取り組めている人というのは少ないと思うのです。
グレーゾーンの多い時間の過ごし方。
そこをどういう立ち位置で、これからに向かい合っていけばいいのか。
人の意見はいろんな角度からいろんな表現で答えを出していきます。
しかし、そのどれもがまっすぐすんなりと自分の中に入ってくればいいのですが、そうとばかりはいかないことが多いのです。
そんなとき、わたしが目にしたもの・・。
楽しそうに作業をしているパティシエの姿でした。
まるで子供のような好奇心と作るものにワクワク感をもって躍動している。
そんなパティシエは言うのです。
人をしあわせにすること、そんなモノをつくり出すことにわたしは喜びと充実感を生み出しているのですと。

人をしあわせにするもの。
しあわせになる基準が人によって違うし、あまり明確ではないために、間違ったある種の自己満足に終わらないためには・・。
そのパティシエは言うのです。
子供の時に食べたあの味。自分はそれを口にした時とてもしあわせな気分になりました。
今でもその味ははっきりと思い出すことができます。味わいの中に感じる喜びとともに・・。

人をしあわせにするには、まず自分がどんな時にしあわせを感じていたか。
そこにヒントがかくされているよう感じがするのです。
人をしあわせにするもの。自分がしあわせに感じるもの。すべてが同じではないけれど、相容れるものがそこにあるような気がしてなりません。
しあわせな気分になっていたこと。
それを思い出して、深く探っていくことが素敵な生き方の道筋であると、そんなことを最近思うようになったのです。

森のむこうに輝く花火を見つめて

2012-09-25 | une nouvelle
夏の終わりを告げる花火がお城のむこう、森の彼方にあがります。
王女はその美しい色あいを見ながら、悲しい表情を浮かべているのです。
なぜなら秋がくるということは王妃の友人もこのお城からいなくなるということだからです。
王女の友人。不思議な話をいつも携えてあたたかくなる春になるとやってくる旅人。
王女はその話を聞いてできない心の旅をすることが楽しみだったのです。
そして、その友人が語るだれもがもつ大切なこと。
愛のさまざまなカタチを聞き知ることができるのが、いつしか王女の気持ちの拠り所となっていたのです。
そんな友人が秋の終わりに旅立つ日をとても悲しい出来事に思われ、そして、旅立ちの日がいよいよ明日に迫っていたのです。

バルコニーで音の遠い花火を見つめていると、うしろから友人がよりそってきます。
美しい花火をそんなまなざしでご覧になられるのは、いかがなものですかな。
にっこりとほほ笑む友人に、王女は、
この願いが星に届くようにと祈りを捧げていたのです。
どのような願いです。
王女はいたずら気なはみかみの表情で、
わたしの心の友人をこの冬もここに留まれるように、どうかとりはからっていただけませんかと。
王女・・・。
わかっています。でも、こればかりはわたしにとってあまりに悲しい出来事に他ならないのです。
王女の真摯なまなざしからさけるように、バルコニーにもたれ、花火を見つめる友人。こう口ずさむのです。
王女。わたしの旅は意思のある仕事であるのです。真摯な旅路でいろいろなことがわたしの心に響いてくるのです。
その美しい旋律をまたあたたかくなったこのお城へ持ち運ぶのが、わたしの大切にな役割でもあるのです。
王女はじっと背中を見つめ聞きながら、
どうか、今年だけでもと・・。
お許し下さい。あの星がわたしをいざなっているのです。明日がその旅立ちであることを星がお示ししています。
どうしても行ってしまうのですね。
やがてくる再会の時のために・・。そのための今夜の美しい賜り物なのですよ、あの花火は・・。
王女は友人のとなりに行き、寄り添うように首を傾けて、
わたしが王女でなければ、明日おともしたいのに・・。
この森はここからの景色は美しいですが、中には心を切り裂くような仕掛けも含まれている。そんな生命の輝きを発することで、また話の中身に輝きが秘められるというもの。宝石の輝きを増すために、わたしのこの森を抜け、彼方へと歩んでいくのです。そう、それがわたしに示された道だから。
王女は小さな声で、
旅の無事をお祈りいたしております。そして、きたる春の再会を夢見て。
それまでは王女もお元気で。
わたしになにかお役にたてることはありませんか。
花火の美しさを指さしながら、友人は顔を近づけて、
美しいものの旋律をいつまでも心に止めておいて下さい。たとえ、日常の乾いた出来事が心を揺さぶろうとしても・・。人は幻想のような美しさを抱いて生きていくのが理想です。そう、あの星の輝きような、ピュアな輝きを秘めた胸のうちで。

結婚の日、下りる階段で

2012-09-24 | une nouvelle
たくさんの花びらがわたしたちの頭の上から降りてきまた。
ともに笑顔をつくって、わたしたちが見上げたもの。
そこにはピュアな光と見送る人たちの愛がありました。
多くの人が見守るなかで、お互いのほほ笑みをたしかめ、わたしたちは旅立ちを決めたのです。
それは新しい一歩目であり、また今までとは異なる生き方への決意でもありました。
ともに生きるというすばらしいヒカリの道を、わたしたちが歩きはじめる、その最初の日のことです。

司祭は言います。
"苦しみが訪れようとも、悲しみがふたりを切り裂こうとしても、今日の日のことを心にとどめ、愛のある道を歩みなさい。
暗がりはやがて朝焼けとともにピュアなヒカリへ包まれる。そのための心の研ぎ石であるのだから"と。

去り行く人の名残

2012-09-22 | une nouvelle
ホームに駆け上がった時には列車の姿はもうありませんでした。
高い屋根のむこうに見える雪。
時計台の鐘がけたたましい音を鳴らしはじめた、夕刻のことです。
わたしはバックの中からつながりのとれるものを出しはしませんでした。
なぜなら、それがわたしたちの終わりであり新たな始まりであることをわかっていたからです。
力なく歩いて、列になったベンチのひとつに赤い花びらが落ちていました。
だれかが愛のために携えていったものなのか・・。
手にとって、わたしは行った人の残像を追っていたのです。
雪はさらに激しさを増していました。やがて、ホームに響く列車の遅延の知らせ。
胸のポケットに花びらをしのばせ、ホームを後にするのです。
それが新たなはじまりでありました。
時折訪れる、人生の変わり目をあの時痛いほど感じたのです。

遠い魔法の国に

2012-09-21 | une nouvelle
古びた扉をあけた時、なにか懐かしい匂いが漂ってきたのです。
その明るい匂いにわたしの心はなにかの期待を抱いたのかもしれません。
ひらかれた扉のむこうにあったもの。昔わたしが抱いていたクマのぬいぐるみ。
くたびれてはいるものの、まだ生きているようなまなざしが・・。
クマを抱いて、あの頃のわたしが話しかけていたこと。
なにを思い、なにを求めていたのか、幼い頃の気持ちがすぐそこまでやってきたのです。

すると、今まで鬱屈としていた心の隙間から、なにかがこぼれはじめたのです。
部屋に足を踏み入れ、クマに手をのばすと・・。
あの頃よく言っていた口癖がよみがえるのです。

"お母さんはどこかに行ったの。お父さんはお仕事場かな。
でも、寂しくないの寂しくない。
だって、クマさんが魔法を使ってすてきな国へと連れて行ってくれるもの。
とおいとおい魔法の国に。
クマさんの友達といっぱい遊んで笑ったりできるから・・。"

星形の不思議なリング

2012-09-16 | une nouvelle
ある昼下がり、海から遊んで家へ帰る女の子に、後ろから声をかける者がいます。
振り向くと、背のまがった老婆がなにかを渡そうとしているのです。
不審そうに見つめる女の子に、老婆は、

これは昔、お前がわたしと約束したリングだよ。

見ると、老婆の指先にはきれいな星型のリングが・・。

聖なる輝きという意味のリングだ。
お前さんとの約束の品さ。

女の子がリングを手にすると、老婆の姿はいつのまにか消えていました。
そして、どこか高いところから老婆の声が聞こえてくるのです。

これで約束は果たしたよ。
わたしはもう自由の身さ。お嬢さん、そのリングを大切にな。
夜の星に願いをかけるように、その指輪にも話しかけてみることさ。
これからのお前にきっと必要な明るみをリングは与えてくれるはずだ。
わたしも欲しかったリングだ。でも、仕方がない。長い時間を越えた約束だからね。

女の子は意味が分からないながらも、そのリングを大事に持ち帰りました。
不思議な出来事の一部始終をママに話してみると、やさしく頭をなでてくれるのです。

これからはこのリングがあなたのお守りね。
いろいろことがこの先もあると思うけど、星があなたのことを守ってくれる証よ。
けっして怖がることはないわ。これからわかってくるはずよ。あなたの未来を守る不思議な力の存在を、ね。