欅並木をのぼった左手にあるお店

ちいさいけど心ほっこり、French!テイストなお店♪

朝摘みのオリーブ

2011-08-29 | poem
ごつごつした岩場に腰かけ、その人は言うのです。
"あの街にはあらゆるものがそろっている。
しかし、心の糧はなにもない。
こうして街を眺められるこの場所、一見してなにもないように見えるが、あの街よりもはるかにいろんなものであふれている。"
その人の言葉を多くの人が聞いています。
"はるか空のもと、こうして心を澄ませられる場所があるということはありがたいこと。
自分のルーツや原点、これから行くべき道がおのずと見えてくるのです。"
まわりの人たちはこの腰かけた人の中にあるなにかを感じ集まってきたのです。
"多くのものであふれている街中より、こうしてなにもない自然の中こそが、自らの機微を感じとれる場所。"
そう言って、"丘にあるオリーブ畑へ行きましょう。"と、やがて立ち上がったのです。
"あの畑ではたくさんの実りをむかえている。
澄んだ空気の中、その実をかじってみると、味の中にあるなにかを感じることができる。
太陽の恵みがそこにあらわれている。
濃縮された恵みが体の中に入り、わたしたちは失いかけたなにかをとり戻せる。
そして、太陽からの示しもいただくことができる。"
"わたしたちがどこから来てどこへ行こうとしているのか?
今から、このわたしがすることとは?
そのようなものがおのずと心の中に浮かぶようになる。"
歩きながら、その人は空を指差し、
"あそこにおられる方の意向がわかるようになると、心のつかえはおのずととれていくもの。
それが束縛からの解放であり、自身の道を自由とともに生きるということ。
何にもまして、自分が大きな力に支えられていることを知ることになる。
朝摘みのオリーブの味が、そんな不思議な知らせを届けてくれる。
さぁ皆さん、自然の恵みをいただきに行きましょう。"

しあわせの近道

2011-08-21 | poem
ピアニストは誰もいなくなったホールでゆっくり鍵盤を流していきます。
その音はピアニストの思いがカタチになったもの。
静かで悲しいバラードです。
ひとりの女がホールの入口でその音をじっと聞いていました。
ですが、ピアノを弾く人に気づかれまいとじっと聞き耳をたてているだけです。
ピアニストはゆっくりと音を奏でていき、やがて、鍵盤を閉じました。そして、うなだれたまま涙を流していました。
音が聞こえなくなってはいましたが、女はホールに入ろうとはしませんでした。
ただじっとその場で待っているのでした。
ゆっくりと立ち上がりピアニストはその場を後にします。
やがて、入口近くで立っている女に気づきます。
力なく、でも、女を見つめて笑みを浮かべました。
"お疲れさま"女はそう言葉にしようとしましたが、かすれてうまく出ませんでした。
ピアニストはゆっくり女に近づいていき、抱きしめます。とてもやさしい抱擁。
女はぐっとこらえていました。
"これからのことをゆっくり考えよう。もうこの指に惑わされることもなくなる"
女はピアニストの顔を見上げることができませんでした。
ピアニストはそのまま女の肩を抱き、ホールを離れていきます。
冷たい冬の町並み。凍てつく夜の中をふたりは町の片隅の方へと。
"これからゆっくりしあわせを見つけていきましょう"
女の言葉にピアニストの体がすこしかたくなって。
"もう半分は手にしているんだよね。今までそれに気づかなかっただけなんだ。
今までどこを見て生きていたんだろう? もうすこしこの町のことを知らなきゃならないし、大人にならなきゃいけないからね・・"
鋭い輝きの月が頭上で明るんでいます。
"なにか食べにいこう。おいしいものを食べるのがしあわせへの一番の近道かも・・。そんなことも今まで考えたことがなかったけどね・・。"

砂漠の宝石商

2011-08-17 | poem
男のさし出した指の先には鋭く輝く宝石が・・。
太陽にかざし、そのきらめきをまわりにいる人々に見せています。
"この輝きは人に希望を与えてくれる"
男はさらに、
"美しさは愛そのもの。すくなくともわたしはこの輝きに、愛を感じます"
まわりの人々が興味のまなざしをむける中、
"これはわたしたちの愛そのもの。みなさまの中にも確かに輝く美しい愛の姿です。"
かざした宝石を人々の顔に近づけながら、
"愛をカタチにすることはできませんが、こうして代わりのもので感じることはできます。
美しいもの。そこにはわたしたちの希望が確かに宿っているのでしょう。
その証拠に人々はこの輝きに魅力をおぼえているからです"
人々の中にある種の真剣さをうかがいながら、男はにやりと笑って。
"この輝きに代価を払おうと思う方はいませんか? もちろんお安いものではありません。
しかし、代価を払う価値はその目で確かめられているはずですよ。
わたしはこの輝きを売りにきたのではないのです。このような美しさが人の中に宿っていることをすこしでも多くの人に知ってもらいたいのです。
わたしは彼方から来た宝石売りですが、この輝きの意味を伝える、いわば伝道師でもあるのです。
人の興味をそそるヒカリ。このような愛の輝きをすこしでもこの大地に広めていきたいのです。それがわたしの一番の望みなのです。"
男は歩み寄ってくる人々の顔をうかがいながら、
"この石はそれを表現できるもの。もちろん愛の代価として、与えうる最高のものでもあります。
この輝きの意味を人々が知るように、わたしはこうして旅をしているのです"

橋の上のアコーディオン弾きが謳うこと

2011-08-11 | poem
母親とけんかして家を飛び出した少年。
大きな河の橋の下でうつむいて、星を見上げることもなく。
橋のもとにアコーディオンを弾く男がやってきて、哀愁に満ちた歌を奏でます。
一曲、二曲と弾き終わった時に、ひょっこりと顔を出した少年。
ふたりは目があい、少年は気まずそうに顔を隠します。
"どうしたね? こっちで一緒に謳わない?"
それでも姿を見せない少年にむかって、男は希望の唄を奏ではじめます。
しばらくして、その曲に誘われるように少年は欄干を飛び越えてこちらへ。
その顔には涙のあとがまだ残っていました。
"これは悲しい時に唄う曲。これからの希望を胸に咲かせてくれる不思議な曲だよ"
そういって何度も同じ曲を弾きます。
少年の心はしだいに明るくなって、リズムに合わせて口ずさむように・・。
"ある人が言ったんだ。
この街に泣き声とともに生まれて。
ここでなにかをつかんでいくんだと。
いろんなことがおとずれて。それはけっして楽しいことやハッピーなことばかりじゃないけれど、生きるには希望を持って・・。
あの星が愛を与えてくれるから、僕たちはここでなにかをつかんでいけるんだと。
そのための人生。つらくも悲しくもあるけれど、けっしてそれだけではない。
喜びは自分で見いだしていけるもの。この体でこの頭で街のいろんな出来事の中で喜びや楽しさを見つけ出していける。
星が導いてくれる。この街で自分の笑顔がたくさん生まれるように・・。"
街灯に照らされてアコーディオンが輝いて見えます。まるで頭上の星々のように。
少年のはにかんだ笑顔。橋を渡る人もひとりまたひとりと足をとめます。
みんな惹かれているのです。この曲に含まれている明るみに。
"この唄のリズムにあわせて。さぁ、自分で生きる道だ。笑っていなよ。これからの希望をカタチにしていくために♪"

人の中にある輝きをふたたび

2011-08-09 | poem


人の胸にどれほどのあたたかさがあるか、本当に理解している人は少ないと思います。
なぜなら素敵な人生のはじまりは心の機転からはじまるということを知っている人がどれほどいるでしょうか?
現実の情景だけをこの世界のすべてだと決めつけて、本来ある潤った感情や喜び、希望を忘れかけている人たち・・。
どうかそんな人たちの心の中に今も息づくヒカリが、ふたたび見い出していけますように。
悲しみやつらさを乗り越えて、人が本来持っているしあわせという明るみに、どうかひとりでも多くの人が近づくことができますように。
夜空に輝く無数の星たちが教えてくれます。
自らのうちにある輝きをさらに輝かせられるように。愛のあるその胸に秘められた無限の可能性を見失わないように・・と。
幼子がもっている純粋なまなざしで、大人たちが天空を見上げられるように。
その人はその人のままで、自然に明るみへと変わっていける。
そんな輝きを自身の中にふたたび見いだしていけるように・・と。

liberteの頃

2011-08-06 | essay


わたしの学生時代は詩とともにあったと言っていいかもしれません。
日本の社会へ出ていくレールにわたしはどうしても乗ることができなかった。
いろいろなことが気持ちの中で処理できず、死にたいといつも口ずさんでいました。
死にたい・・。自殺とかそんなおおげさなものではなくて、死というイメージがあの頃にはこの世界からの逃避。
死にありがちな悲壮感や重厚な感情はまったくなかったように思います。
そう、わたしはまだまだ未熟で幼い感情の中で必死になにかを見つけようとしていました。
無人島のような幻想を。教室の窓のむこうを見つめながら、これから楽しい幻想がそこにあらわれてくれるのではないか・・と。
そんな期待とこの世界への嫌気で毎日が過ぎていた気がします。

そんなあの頃のわたしを岡村孝子さんの歌詞や唄はなぐさめになっていてくれたのです。
授業中、歌詞を書いて、仲間たちに書いたものをこっそり渡したりしていました。こんな詩をわたしも書いていきたいと、社会からの逃げ道のようにいろいろな創作を試みていました。
あれからかなり時間が過ぎましたが、その気持ちは今でもわたしの中に確かにあります。
そして、今になってあの頃の感情をもう一度なにかのカタチにしたいと、そんな思いがさらに強くなっているのです。

今でも思うのです。あの頃、この世界はこうなんだから!とそんな縦割りな考えを押しつけられていた。
でも、そんな狭い世界だけではけっしてないと・・、力強く言いたかった。
そんな感情を持った人たちがあの頃には確かにたくさんいたのです。
恋人をつくり、結婚し、子供ができて、喧噪の中であの頃の心情を忘れかけてしまってはいるかもしれないけれど、そんな気持ちをいまだに持ち続けている人たちは確かにいるように思います。
あの頃に作りたかったもの。
教室の窓のむこうに来てほしかったピーターパンのような存在を、詩を今の時代に表現してみたいと・・。

ちょっとした出来事があり、その頃のことがとても思い出されて、今こうして書いているのです。
社会からの逃げ道でも、現実を生きるなぐさめでもない、心の楽園をどういうカタチか表現していきたいのです。





涙を拭いて、もう一度

2011-08-05 | poem
涙を拭いて、わたしはもう一度聞いてみるのです。
"わたしにも確かに明るい未来が待っているのでしょうか?"と。
すると前の人がやさしいまなざしをこちらにむけて、こう言ってくれました。
"それはあなた次第ですよ。あなたがしあわせを望むなら、それは確かにあなたのもとへやってきます"
わたしは胸に手をあてて、
"しあわせにはなりたいです。でも、しあわせのカタチをいまだに見い出せないわたしがいるのです・・。"
"生きている指針を見失っているだけですよ。
ゆっくりとこれから思い出していけばいいのです。そんな時間はこれからいくらでも作れますから。"
手前にある美しい色のお酒をわたしはすこし口にして。
"見失ったものを、これから探していけるかしら? "
"見失い見つけ出すのがあなたの人生なのですよ"
"どうしていけばいいのでしょう?"
"気持ちをゆったりもつことです。全身の力を抜いて、まるでなにか大きなものに自分を委ねるように・・。
そして、わたしというものを心に問いかけてみるのです。答えを急いではいけせん。
なにもない静かな泉に、すっとなにかがあらわれるのをじっと待っていましょう。"
"そんな安心感をわたしは持てるでしょうか?"
"以前はだれでもあった気持ちです。幼い頃、時間にとらわれず躍動していた心・・。"
わたしは目をつぶり、静かになにかに心を委ねてみようと思いました。
"でも、気が散ってできないかもしれない・・。"
"この場所では難しいかもしれません。もっと心の落ち着く場所で。
月夜に静かな場所で、安心していられる場所で。もう一度心を澄ましてみるといいかもしれませんね"
"希望がそこに見えてくるかしら?"
"これからのことも、わたしという存在も。生きる充実もすべてそこで理解できる時がやってきますよ。すんなりとつながるような感覚が・・。
しあわせとは夢のようなとりとめないものではなくて、今からのあなたのヒカリの道筋なのですから。"
"わたしにも見いだしていけるでしょうか?"
前にいる人はもう一度やさしいまなざしをわたしにむけて。
"誰もがそうなんですよ。ただ日常が早すぎて、見失いかけているだけなのですから。
こうしてみんな自らのヒカリを見いだしていくのです。
そのために今の心の希求がやってきているのですからね"

ほほ笑みの残像

2011-08-04 | poem
雨の道を歩いていくというのは、淋しくもあり、時に悲しい思い出をよみがえらせてしまうこともあります。
水たまりをよけながら、ふっと見上げた空に暗い雲がおおいかぶさっていると、まるでこれからの未来を映し出している・・、そんな妄想にとらわれたりするのです。
今までなら、自分の暗い過去と対峙するしかなかった。
それは北の国の人にある、長い冬のうつむきと同じ。
ただただ白く寒い情景と向き合う、そんな時間を過ごすしかなかったのです。

そんなわたしを救ってくれたのはあの人の作り出すほほ笑み。
寒い状況の中でも、悲しみのただなかでも、あの人とともにいると不思議と安心感があるのです。
どうしてだかわかりませんが、そのほほ笑みを見ているだけでわたしの中に春の日だまりのようなあたたかさがやってくるのです。
現状はあいかわらず冬のただ中のような冷たく厳しい状況なのですが、あの人のほほ笑みがわたしの季節を変えてくれるような気がしているのです。
長い冬のあとに訪れる、春の足音が・・。

傘の先からおちていくしずく。鼻をくすぐる湿った風も。行き過ぎる車の音も。
わたしにとって二次的なものになってしまうのです。
心に気をむけるとあの人の日だまりが感じられるから。時折よぎるほほ笑みがわたしをあたたかな方へといざなってくれているのです。
悲しいことも流れの中で手放していける。寒くつらい視界はやがてあたたかなおだやかな景色へと変わっていくと。
わたしの心のほほ笑みはそう諭してくれるのです。そして、身をゆだねて歩いていけるのです。

まるでスローな映像であなたのほほ笑みがわたしの脳裏にはいつもあるのです。
愛を交わしたあの日から。胸の宝箱には輝くものがおさまっているのでしょう。
人とは不思議なものです。こうして見せられないなにかによって不思議な希望を植えつけられるのですから。
雨の道を行きながら、わたしは大切なものの存在、輝きというものが人を明るみへ向かわせてくれることを、ほほ笑みの残像によって知ることになったのです。

月夜の旅路 ~朝の日ざしに似た愛の輝き~

2011-08-02 | poem



昨夜わたしは夢を見たのです。
黄金に輝く三日月。そのうえに乗って夜空を旅する情景を・・。
とても静かな夜でした。時折街の明かりが集まる場所を通り過ぎながら、わたしは世界を旅しているのです。
不思議なダンスを踊っているわたし。三日月は金色に輝く水面のようで、ステップを踏むたびに小さな輪が月の中に広がっていくのです。
とても気持ちいい風がわたしの体を吹き過ぎていきます。
日常では考えられないほどの純粋な空気と感情。
とてもピュアなヒカリが頭上の夜空から降りてくるのを感じていました。
金色に輝く水面に星空の輝きがうつり、今まで踊ったことがない不思議なダンスをわたしは踊り続けていたのです。
世界を見渡して、眼下に森や街や海がゆっくりと流れていくのです。
旅路は朝になるまで続くのです。
地球の端から太陽がのぼっていく時、この黄金の世界はどうなってしまうのだろうと踊りながらふと考えました。
そんな時です。わたしの首もとによりそう影を感じました。
その影はささやきます。
"あぁ、ここで踊りをやめてはいけない。あなたの不思議な踊りがこの月の原動力となっているから。
踊り続けることでこの旅は永遠に続く。あなたにとってもそんなに悪い体験ではないはずだから・・。
街の明かりを見渡してごらん。広大な海のうねりを感じて・・。いまだ見たことのない山々の厳しいなりたちを・・。
自然はこうして生命を育んでいる。人として生きるあなたたちの思いとともに・・。
この輝きは生命の火花のように瞬間瞬間で放たれていくから。あなたの行動とともに。
躍動するあなたたちの意思がこれからの未来を担っている。
輝く愛の本質を知り、それを継ぐ者として・・。"
わたしは不思議なダンスに身を委ねながら、世界というものの情景を心にとどめることができたのです。
そして、現実へと戻ってきた。
とても安らいだ朝の空気の中でわたしが一番に感じたのは、まぎれもない朝の日ざしに似た愛の輝きでした。
そこここにある愛の輝きを、わたしはその朝から見つけることができるようになったのです。これからの生きる糧としての輝きを・・。
あの夢の中で見た星から降る輝きとしての愛を。

遠い輝きにささやく言葉

2011-08-01 | poem



見送りに来てくれてありがとう。
みんなで送れないのが残念ね。
駅の舎内に鐘の音が響き、列車が入ってくる。
ホームに立っているふたり。
忘れ物はない?
ないと思うけど、あればまた連絡する・・。
楽しい生活が送れるといいわね。
不安はあるけど、がんばってみるから・・。
誰だってそうよ。最初はつらいことも多いけど、そのうち楽しいことを見つけやすくなるわ。
孫がおばあちゃんの腕をつかむ。
しっかりやってきなさい。お星様はどこにいてもあなたを見守ってくれるから。
孫はうなずき。
おばあちゃんと一緒にいられないのが淋しい・・。
あら、あなた時計は?
いらない。携帯もあるし、どこにでも時間はわかるから。
おばあちゃんがコートのポケットに手を入れて、小さな黒い時計をとりだす。
持っていきなさい。わたしからのお守り。
いいわ。なんだか悲しくなっちゃうから。
車掌が発車をつげる鐘をならす。
じゃあ、行ってくるから。
ふたりは抱き合い。
心配いらない。素敵な生活があなたを待っているから。
ありがとう。
孫は列車に乗り込み、座席の方へ。そして、窓をあけて。
やっぱり時計持っていくわ。むこうで大切につけるから。
おばあちゃんは時計を渡して。
むかしおじいちゃんと一緒のものを持っていたのよ。
遠くに行く時はいつもお互いに身につけていたものなの。
これでおじいちゃんといつもつながっていたのよ。
そんな大切なもの、いいの?
だから、これはお守りになるの。
むこうに行ってもまた連絡する。
いろいろあるかもしれないけれど、お星様はいつも輝いているわ。気持ちはどこにいても通じ合えるから。
うん、がんばってくる。
そう、その調子。いい女になりなさい。
車掌のかけ声がホームに響き、列車が動きはじめる。
孫はうつむいて、黒い時計をにぎりしめている。
しばらくすると、窓の向こうに目をやってみる。褐色の空にいくつかの輝きを見て。
これからはよろしくお願いしますと笑みをつくってみた。
すると、気持ちがふっと軽くなって、おばあちゃんのささやく声がいつまでも耳の中に響いていた。