欅並木をのぼった左手にあるお店

ちいさいけど心ほっこり、French!テイストなお店♪

ささいなことでもちいさなしあわせから

2012-11-30 | essay


たしかに筆が進まないときもあります。
プランはいろいろ出てくるのに、この先のときめく未来は描けていけるのに、作品ができていかない。

ただこの節目の時をむかえて、ひとつ思うことは・・、
できることからやっていこう。小さなものでも少しずつ刻んでいこう。
"ちいさなしあわせ"を。そう思う今日このごろなのです。

しあわせメリーゴーランド

2012-11-19 | une nouvelle
とある夜のこと。
ひっそりとした部屋のなかで、さびしい気持ちの男の子。
そんな時です。ちいさなキャンドルを持ってきて灯してくれたお兄ちゃん。
ほっこりとした明るい火を二人で見ているうちに・・。

メリーゴーランドにのっている男の子とお兄ちゃん。
楽しげに笑っているまわりの子供たち。
明るい金属音があたりのしあわせを呼び寄せて、まわっているそのむこうには不思議なきらめきが・・。
ふと気づくと、ちいさな人形が肩の後ろから声をかけてきたのです。

"やれやれいつまでまわってりゃいいんだ。
今夜は左回りだから、頭が痛くってしょうがねぇ。"
人形は眉間にしわを寄せて、
"あんちゃん、楽しくないのかい?"
男の子は答えられずにとぎまぎしてると、
"はは、だんまり決めこんだってその顔にちゃんと書いてあるよ。
しあわせを探しにやってきたって感じだな。"
メリーゴーランドはさらにまわり続けて、
"そうだな、人はとかく下を向きがちになる。
でもな、あんちゃん。そこはがまんして上を向いてなきゃだめなんだよ。
お天とうさんは見てるのさ。
やさしい笑顔でね、いつくしみのまなざしをこちらに向けてくれているんだよ。"
人形は鼻歌を唄いながら足をぶらつかせて、
"あんちゃん、楽しい日々は自分でつくり出していかなきゃならないよ。
まっとうな意見はご立派さ。
でもね、心が豊かじゃなきゃしあわせはやってこないんだよ。"
人形は立ち上がると、ジャンプして釣り棒につかまり、
"ここにあるものはね、ぜ~んぶ詩人の即興詩でできているんだ。
こんな素敵な世界を描ける力って何だと思う?"
人形はにたりと男の子の方を向きなおり、
"それはね、夢みる心さ。
大人になると忘れてしまうシロモノ。
まだ若い君の心にもほこりがかかりはじめているんじゃないかな?
夢見ることは大切なことだよ。そう、しあわせを呼ぶ笛のような役割をしているのさ。"

心へのささやかなプレゼント

2012-11-17 | une nouvelle
窓辺で月を見上げる女の子の目には涙が。
そんな時、願いが叶いそうな星たちの輝きは強まっていき・・。
三日月にのった紳士が夜空のむこうから、女の子にそっと声をかけます。
"お嬢さん、悲しい気持ちが離れないときは、どうか僕の言う通りにしてごらんよ。
その胸にきっと楽しさや喜びがよみがえってくるはずだから・・。"
不思議そうに見上げる女の子の耳もとで、
"笑みをつくってごらんよ。悲しい気持ちのままでもいいから。
ほっぺをあげたままじっと。そして、心に浮かぶなにかを見つめてごらんよ。"
笑顔など出せないような気持ちなのですが、女の子は紳士の言う通りにしてみるのです。
すると・・。
最初は苦痛でしかなかった笑顔が、やがて、なにかあたたかいものを運んできたのです。
それに気づいた時、なんと心の明るむことか・・。
"お嬢さん、ほらね。こんな不思議なこともあるんですよ。"
月の上で笑みをこぼす紳士。
"この世界には魔法のような明かりの灯し方があります。
しあわせととなりあわせの笑顔という存在。
はかないような明るいものは心の中でしっかりとした根をはっていくのです。
これは体から心へのささやかなプレゼント。
知らない魔法が今はあなたの手に。"

しあわせショコラ

2012-11-12 | une nouvelle
お嬢さん、そんな顔をしてちゃしあわせがそっぽ向いちゃいますよ。
そう呼び止められて、はっとする若い娘。
日曜の露天市、チョコレート屋の店主はにっこり。
そんなに悲観的かしら?
そうですねぇ。

どうすればいい?
店主は指で合図して、
お嬢さん、しあわせとはとっても気まぐれなもの。楽しい方へとささぁと流れていきますよ。
笑い声やうれしい気持ちにとっても敏感なんです。
うんうんと聞き入る娘さんに店主は、
それでも明るいなにかが見つけられない時は・・。
このチョコレートはいかがでしょう?
陳列棚の中を自慢げに披露して、
かならずや甘~いおとぎの国へと誘ってくれるはずですから。
そうね、たっぷりいただいちゃおうかしら。
こちらの南国カカオを使ったものはいかがでしょう?
店主はひときわ色濃いチョコレートを指さして、
おいしいの?
それは保証つきです。笑顔がたくさんこぼれてきますよ。子供の頃のような気持ちが戻ってきます。
子供はしあわせを見つける名人。

清算をすまし、紙袋をもらって若い娘はにっこり。
家に帰るのが待ち遠しいわ。
良い一日のはじまり。今日を満喫なさって下さいな。
行きかけて振りかえる若い娘。
それにしてもお口がお上手ね。しあわせを含ませたご商売が。

朝の訪れとともに

2012-11-05 | une nouvelle
"なにからも自由。それがわたしの生き方だと言ってきたわ。
そう、明日は違うところに寝るジプシーの旅のように。
すうっとあらわれて、煙のようにいなくなる。
良い香りを残してね。
それがわたしの理想、本当に望む生き方なの。"

たき火の消えかかる朝焼けの前。
膝をかかえて眠たい顔の少年に黒髪の女はそう言った。
少年にはその意味がよくわからなかったが、いままでに味わったことのない魅惑的な響きに気持ちをとらわれていた。
まだ味わったことのない感情のゆらめきにやわらかい心がくすぐられていたのだ。
朝の訪れとともにその女は消えた。横たわる木の幹に深紅のスカーフを残して。
少年の心にチクリとなにかの痛みを刻んで・・。

夢がかなう星降る夜に

2012-11-01 | une nouvelle
小さな島にある天文台。
そこに小太りの天文博士が夜な夜な星を見てはひとりごとを言っていました。
聞くのはペットで友達の"天秤"というワン子ちゃんだけ。
"う~む、今夜の星はいつもと違いとても美しい。
幻想的な星の位置をしているぞ。"
ワン子ちゃんは博士の足下でじっとご主人様を見上げています。
"やや、あの流れ星の群れはなにかな?
あんな隊列の流れ星ははじめてじゃが・・。"
博士ははっとなにかを思い出したようで、小走りに二階の書斎へ。
そして、大きな本を持ってきて、また望遠鏡を眺めるのです。
"こ、これはとても驚いた。"
大喜びの博士。その足下でワン子ちゃんは不思議なまなざし・・。
"おい、天秤よ。今夜はとっても良い日のようじゃよ。
なぜなら、一万年に一度の「雪の夜」という日なんじゃ。"
不思議そうなワン子ちゃんのテンションに、
"そう言ってもおぬしにはわからないだろう。
う~ん、簡単に言うと、今夜とても多い流れ星が流れ、そして、雪の女王という大きな輝きが見られるんじゃ。
そして、不思議なことにこの星は人の心に明るい灯を灯してくれるらしいんじゃ。
どんな灯かはワシもわからんが、とにかくめでたい日には変わりない。
お前にもその星があらわれたら教えてやるから、こんなは寝ている場合じゃないぞ。"
そう言いながら、博士は子供のようにうきうき寝ずの用意を始めました。
"どのような明かりが灯るのかわからんが、ワシのしあわせはもう約束されたも同じじゃ。"
いろんなものをすぐとれる位置において、博士はその美しい星があらわれるのを今か今かと待っていました。
しかし、流れ星は流れるものの光り輝く大きな星はいっこうにあらわれてきません。
そして、いつしか、眠気に誘われて・・。
気がつくと、とてもすがすがしい朝焼けが広がっていて。
"やや、しまった。ワシとしたことが・・。"
残念そうに天文台から外に出てみると、小さな島いったいにワン子の大好物の骨ころがいっぱい。
そして、リボンをつけたメスのワン子と天秤が楽しそうに駆けまわっていました。
ため息をつきながら、博士は朝やけの空にささやきます。
"あぁ、お星様、ワン子の夢をありがとうございます。できればワシの夢もかなえてほしかった。
はぁ~、ワシの夢・・。えっと、何だったけかな??"