子供の頃、わたしが眠りにつけず、リビングのソファーに寝そべって、夜風に揺らされている葉の音を聞いていると、廊下を通りかかった旅人のお兄さんがわたしのいる部屋に入ってきて、笑みを浮かべてこう言った。
「どうしたんだね。もうこんな時間なのに。眠れないのかい?」
わたしがうなずくと、旅人のお兄さんはわたしのとなりに座って。
「長い旅をしているとね、とても寂しくなるときや不安になる時がある。それは場所がそういう雰囲気をかもしだしている時もあれば、一日のどこかで心にひっかかっている事柄がある時もある。」
「そんなときはどうしてるの?」
「テントの外に出て、空を見上げるんだ。そこには多くの星たちが輝いている。それをじっと眺めていると、なにか不思議な感じが僕の胸にくるんだ。それはとてもあたたかい勇気に満ちたもの。そして、その空に思いの丈をあかし、素直な気持ちをとりもどすんだ。
人はいろいろなことから心のどこかで強がっていたり、変わっているように思い込もうとしていることがある。そんな歪んだ心では本当のひっかかりが見つかりにくんだ。だから、夜静かな空を見上げて素直さをとりもどすんだ。こんなに多くの星が僕の頭上には広がっている。そんなおびただしい数を僕たちは理解することができない。だから、祈り、乞うんだよ。この大いなる空を司る大きな力に自らをゆだねてみるんだ。そうすると、とても心が満たされていくんだ。そして、今ある自分に勇気がわいてくる。この世界で疲れた気持ちをリフレッシュさせてくれるんだ。
雨や曇りの日には星は望めないけど、そんな時はいつも見ている星たちを雲の向こうに感じるんだ。慣れてくればいつでも星たちに会えるようになる。大きな力をいつも感じられるようになるのさ。これは僕の旅で培った、最大の恩恵なのさ」
「僕にも星たちの力を感じられるようになるかな?」
「それは大丈夫さ。僕だって旅に出る前は知らなかったことだから。昼は騒々しさや働きで大いなる力を感じるのは難しいけど、夜更け静かな時間にはそれが直で感じられるんだ。自分は一人なんかじゃないって、子供の頃母親に見守られているような心強さを今も感じられることができる。そう、大いなる力はいつも僕たちとともにいるのさ」
そう言って、旅人のお兄さんは笑った。
わたしもなんだか心が軽くなった気がした。このお兄さんはある年冬のあいだ家(うち)に泊まり、あたたかくなると北へ旅立っていった。
わたしはこの旅人のお兄さんからいろんなことを教わった。その中でもこの星空の話は今でも心が萎えそうな夜に心に浮かぶ話なんだ。
「どうしたんだね。もうこんな時間なのに。眠れないのかい?」
わたしがうなずくと、旅人のお兄さんはわたしのとなりに座って。
「長い旅をしているとね、とても寂しくなるときや不安になる時がある。それは場所がそういう雰囲気をかもしだしている時もあれば、一日のどこかで心にひっかかっている事柄がある時もある。」
「そんなときはどうしてるの?」
「テントの外に出て、空を見上げるんだ。そこには多くの星たちが輝いている。それをじっと眺めていると、なにか不思議な感じが僕の胸にくるんだ。それはとてもあたたかい勇気に満ちたもの。そして、その空に思いの丈をあかし、素直な気持ちをとりもどすんだ。
人はいろいろなことから心のどこかで強がっていたり、変わっているように思い込もうとしていることがある。そんな歪んだ心では本当のひっかかりが見つかりにくんだ。だから、夜静かな空を見上げて素直さをとりもどすんだ。こんなに多くの星が僕の頭上には広がっている。そんなおびただしい数を僕たちは理解することができない。だから、祈り、乞うんだよ。この大いなる空を司る大きな力に自らをゆだねてみるんだ。そうすると、とても心が満たされていくんだ。そして、今ある自分に勇気がわいてくる。この世界で疲れた気持ちをリフレッシュさせてくれるんだ。
雨や曇りの日には星は望めないけど、そんな時はいつも見ている星たちを雲の向こうに感じるんだ。慣れてくればいつでも星たちに会えるようになる。大きな力をいつも感じられるようになるのさ。これは僕の旅で培った、最大の恩恵なのさ」
「僕にも星たちの力を感じられるようになるかな?」
「それは大丈夫さ。僕だって旅に出る前は知らなかったことだから。昼は騒々しさや働きで大いなる力を感じるのは難しいけど、夜更け静かな時間にはそれが直で感じられるんだ。自分は一人なんかじゃないって、子供の頃母親に見守られているような心強さを今も感じられることができる。そう、大いなる力はいつも僕たちとともにいるのさ」
そう言って、旅人のお兄さんは笑った。
わたしもなんだか心が軽くなった気がした。このお兄さんはある年冬のあいだ家(うち)に泊まり、あたたかくなると北へ旅立っていった。
わたしはこの旅人のお兄さんからいろんなことを教わった。その中でもこの星空の話は今でも心が萎えそうな夜に心に浮かぶ話なんだ。