秋風が舞う頃、わたしは父につれられて、いつもこの場所に来ていました。
ここにはわたしの夢があります。そして、父の笑顔と楽しい音楽が・・。
薄曇りの空にも負けない明るみがここには確かにありました。
白馬に乗って草原をかけまわるように、わたしは自由と楽しさを感じながら、あらわれては消える父のやさしい笑顔をいつも探していました。
そんな父の笑顔はどこか切なさの漂うものでありましたが、わたしの好きな笑顔でした。
肌に感じる風の冷たさも、この場所では何の意味ももっていませんでした。
父と手をつないで帰る途中、いつも甘いものを買ってもらったものです。
その味がしあわせの記憶として、今もこの体の中にはあるのです。
あれから長い年月が経ちますが、今も昔のわたしのような子供たちが親につれられてここにやってきます。
物悲しさすら感じるワルツの音色の中で、今も白馬や荷馬車が自由にかけまわっているのです。
寂しい秋の風景はあの頃と変わりありませんが、しあわせの記憶は今も色あせることなくあたたかさをもってこの胸になにかを語りかけてきます。
遠い昔、父からの愛の記憶として、今もこのわたしの胸の中でなにかが明るんでいるのです。