欅並木をのぼった左手にあるお店

ちいさいけど心ほっこり、French!テイストなお店♪

結局、人は・・

2012-04-22 | message


日常にいると、目先のことでイライラしたり、悲しくなったり、怒りがわきでてきたり。
でも、とてつもないなにか大きなことがあると、ぽかんと意識がいつもとは変わります。
そんな時、ただ生きていることだけが今の自分になって。
あたりの自然に意識をむけると、なぜかやさしく、自分をかこむいろいろな関係がすうっと心の中に入ってきて。
おだやかな気持ちになれるのです。
力が入っていない状態というのでしょうか。そんな状態が健康というものなのでしょうか。
これからどうしようと、そんな漠然とした思いだけを胸に・・。


生きているというシンプルな瞬間。
結局、人は日常であまりにも頭を使い過ぎているのかもしれません。

男のはしくれ

2012-04-19 | une nouvelle
そのお城にはとてもおそろしい悪魔が棲んでいるという。
誰も近寄らない薄暗いお城にひとりの男がやってきました。
いばらの庭を通り、古くなったドアを開け、閑散とうす汚れたホールをあがっていくと。
そこには大きな絵画が。痩せた女の人の肖像画。
男が前を通ろうとすると、
誰がこの城に入ることを許したね?
驚いて男がふりかえると、絵画の女性がこちらを見ているではありませんか。
あ、あなたは・・。
失礼だが、自分から名のるのが礼儀でありましょう?
わたしは、このお城にどんな悪魔が棲んでいるのか見にきたのです。
しかし、けっして物めずらしさで来たわけではありません。わたしにはひとつの決心があるのです。
それは何であるのか?
この土地はとても豊かな作物を育てます。以前はここもたくさんの草木、花々が植えられていたはず。
そんな作物をわたしはもう一度ここで作ってみたいのです。
女性はにらむように男を見ます。
なぜこの場所で?
はい、今ここは薄暗い土地でありますけど、土はとても豊穣です。
ここでなにがあったのか、わたしにはわかりませんが、いずれまた豊かな実りをつけるような気がするのです。
女性はなにも言わず黙っていましたが、
昔ここはたくさんの作物の実る土地であったのだ。しかし、異国の攻撃を受け、ここが最後の砦となった。
永遠に朽ちてしまうような仕打ちを受け、ここはその時から生命を絶たれたようになってしまった・・。
わたしはここの最後の意思を持つ者。人間を寄せ付けぬ最後の楽園の番人なのだよ。
男は真摯な表情で、
もう一度、彩りをとり戻してみませんか?
女性はじっと男を見ていたが、やがて、
あまり人を信じるというのは好きではないが、お前をここの住人にむかえてみよう・・。
そうしてもらえますか。
しかし、ここの番人はわたしであることを忘れぬように。この額をはずしたところでわたしはここを離れることはないのだから。
それはわかっています。
ここがもう一度彩りをとり戻せた時、お前にこの城をやろう。
人の噂に振り回されない、一途な気を見込んでな。今はめずらしい男のはしくれだと、わたしは見込んだのだから。

おりてくる飛行機に

2012-04-15 | une nouvelle
瀟洒な高い屋根。ホームへと走ってかけあがってきた痩せたワンピースの女性。
きょろきょろとあたりを見回して。
よかった。まだ来ていない。
そこへ列車が入ってきて、ドアがいっせいに開きます。いろんな人が列車からおりてくるのを、女性はすこし離れていたところから見ています。
人だかりのむこうから手を振ってくるのは、スーツを片手にした背の高い男性。
待ったかい?
ううん、今来たから。
ふたりはすこし見つめあって、人の流れにそってホームを下りていきます。

地下にある静かなカフェ。
ふたりは向かい合い、でも、あまり話はせず。
コーヒーに添えたスプーンを手にしようとする男性の指をつかんで。
こんなに早く戻ってきてくれるなんて、うれしい。
男性は笑みを浮かべながら、
僕にも信じられないけど、不思議な出来事が重なったんだ。
どんな素敵な出来事?
うん、あとでゆっくり話すよ。でも、こんなしあわせもあるんだね。

首都高を走る車の中、やさしいピアノの曲が流れていて。
君からこの手紙をもらって、ここにいるまでがあっという間だった。
女性は運転しながら、道路のむこうの空を見て、
さっき不思議な出来事って言ったけど、なんとなくわかる気がする。
どうして?
ゆっくりハンドルを切りながら。
最近、わかるようになったのよ。なんとなくだけどね・・。
へぇ、僕にも教えてもらいたいものだね。
女性は空のむこうに下りてくる飛行機を指さして、
願っていい気持ちになってたの。それが続いたら不思議と現実が寄り添ってくれるって。
おりてくる飛行機を見ながら、あなたが乗っていることを喜んでいたのよ。わたしはしあわせをこの胸で育んでいたのかもしれないわ。

メリーゴーランドがゆっくりとまり

2012-04-13 | une nouvelle
メリーゴーランドがゆっくり止まり、おりてきた客たちの中にひとりの女の子が。
"お嬢さん、この乗り物はどうだったね? "
入口の切符きりのおじいさんは言います。
"楽しかったわ。これが最後のメリーゴーランド。"
"どうして最後なの?"
"だって、わたし明日引っ越すのよ。"
"どこか遠くに行くの?"
"わたしの知らないところ。車で十時間もかかるのよ。"
"お父さんの仕事で?"
"ううん、お父さんはいないの。お母さんも・・。知らないおじさんのところに行くから・・。"
おじいさんはやさしいまなざしを女の子にむけて、
"あっちにもメリーゴーランドがあるはずだよ。
白馬や素敵な馬車におじさんと乗って楽しんだらいいよ。"
"ありがとう。これからが楽しかったらいいなぁ。"
"きっと楽しいはずさ。君のような笑顔の子を神様が悲しませるわけはないからね。
お願いしておきなさい。素敵な未来が訪れますように、とね。"

素敵な夜にしよう

2012-04-11 | une nouvelle
ワイングラスを重ねて、笑みのあとに口づけをする男と女。
ビロードのカーテンにもつれあいながら倒れかかり、お互いの吐息を感じながら。
このまま愛してもいいのね。
僕が君の中で本当の安らぎに変わるまでね。
他の女性を見ちゃいやよ。わたしは焼きもち焼きなんだから。
そんな君だから放っておけないのさ。
もっと酔いたい気分よ。
僕だってさ、今夜は素敵な夜にしよう。

屋根の先で夜空を見上げる黒猫。今宵はすこしセンチに目をうるませながら。
おだやかな夜更け。きちんと座ってしっぽを弓なりにのばして。
僕のママはどこに行ったのかな。
小さい頃から一匹ぼっち。でも、近所の猫たちもおなじことだけど、ときどき切なくなるんだ。
でも、きれいな夜空を見上げると、気持ちが軽くなる。
これってあの遠いところにママがいるからかな。
どうかママに会わせて下さい。きれいなヒカリの星たちよ。
そしたらうれしさで倒れてしまうかも・・。僕は安心できるものを得たいのです。
そしたら、今夜がどんなに素敵な夜になることか。

こっそりと窓から抜け出し、暗い庭を通って大きな木の根もとへ。
草の中で寝そべり、女の子が見つめるものは・・。
にわか作りのタマゴの巣。何の鳥かもわからない三つのタマゴ。
夜風にパジャマ姿の女の子は身ぶるいしながら、タマゴを手で包んで。
どんな鳥が生まれるんだろう? もしかしたらしあわせの青い鳥?
だったらぜったいこのタマゴはわたしが守ってあげなきゃ。
でも、親鳥が探しにきたらどうしよう。その時は返してもいいけど、なんだかさみしくなっちゃうわ。
部屋に持って帰っちゃおうか。でも、なじみの場所の方が安心ね。
しあわせの青い鳥。わたしの部屋に住み着いて翼を広げていったりきたり。
あぁ、すぐに生まれて飛んで遊んでくれればいいのに。
早く顔を出してくれないかなぁ。そしたら、どんなに素敵な夜かしれないわ。

素敵な夜を望む思いは数知れず。
そんなひとつひとつの思いを、夜空はすべて引き受けて魔法のヒカリを降り注ぎます。
そこにはあるメッセージが込められているのです。
"夜という魔法の時間。純粋な思いがすべて素敵なカタチへと変わりゆくように・・"と。

ナポリの街を歩く女(ひと)

2012-04-08 | une nouvelle


ひっそりとした路地裏を力なく歩くひとりの女性。
冴え冴えとした月の下、行くあてもなくぼんやりと・・。
何の音もしない夜の街。長い髪もそのままにまなざしは彼方をむいて。
動くもののない風景を歩いていると、路地のまんなかにバラが落ちています。
女性はそれを拾い、あせていないバラの赤みに目をとられていると。
突然夜の静けさを破る教会の鐘の音が。
何度も鳴り響いて、女性の足は自然とその音の鳴る方へと。
やがて、高台にあがる坂道へとやってきます。そこからは海が見渡せるのです。
月明かりがあざやかなヒカリをおとす水面。女性はそれを眺めながら坂をゆっくりあがっていきます。
すると、耳にささやきが聞こえてくるのです。

"あなたの希望はまだ消えていない。
悲しみはやがてくる大きな明るみへの足がかり。
このまま行きなさい。安らぎがあなたの胸を軽くしてくれる。"

バラをたずさえ、やがて小さな教会の建物へとあがってくると、閉じたドアの前に小さく輝く石を見つけます。
星のかけらのようなその石を握ると、とてもあたたかな気持ちが胸いっぱいに広がったのです。
多くの星々が輝く夜更け。鐘はもう止んでいましたが、女性の胸には不思議な輝きがふたたび力をとりもどしていました。
まだ胸の中で鳴り響いている言葉たち・・。

"疲弊した心は愛のあたたかさによってやわらかくおだやかに。
心の希求がもたらした奇跡。これからはバラのように華やかな生き方を・・。
愛の石がこれからの指針。石と同じような輝きがあなたの胸にも確かに。
それは星の輝きと同じで、純粋な愛に満ちたすばらしい宝物。"

雨がすべてを流してくれる

2012-04-08 | une nouvelle
街に霧雨のような雨がおりてきて。
傘をもたない人や街路樹、道路をぬらしていく。
窓辺で外を見上げた老婆の心にも、追いかけっこをしながら、口を大きく開けて空をみあげる子供たちにも。
子犬にレインコートをつけ玄関を出る華やかな傘のご婦人にも。
暗い雲がやがて街を低く包み、わずかなオレンジを染めて夕闇へ。
豪奢なビルの最上階。ベランダで柵の間から街を眺める女の子。
洗濯物をとりこみに出てきたママにむかって。
ママ、今日の雨はなんかやさしい感じがする。
そう?
ふたりはじっと街の方を見つめながら、
雨にもいろんな表情があるのね。きっとだれかの傷ついた心を静かに癒してくれているのよ。
ぽつりぽつりとグレーに染まった街に灯りが。
公園の子犬、どうなったかな?
子犬?
首輪はしているのに、一匹でうろうろしてて。親が見つからないみたい・・。
そう。ほら、あの公園にも灯りがついたわ。きっとご主人が傘を片手に探しにきてるかしれないわよ。
そうかなぁ・・。
ほら、雲の切れ間がぼんやりとあからんで見えるわ。
ほんと。なんだかとってもあたたかそう。
このまま降り続くのかと思ったけど、すこし明るくなりそうね。
すこしだけの雨?
だれかの気持ちを察して、心の中のいろんなものを雨が流してくれたのよ。だって、空気がこんなに澄んでる。
魔法みたい。
たまにあるのよ。こんな不思議なやさしさに出会えることがね。

良い面ばかりが愛じゃない

2012-04-08 | une nouvelle
夜になるとホテルの屋上ではギターのソロ演奏がはじまります。
ゆるやかなリズムで、プールサイドの客たちの疲れを癒していくのです。
バーでは新婚の夫婦がゆったりとした気持ちでギターを聴いています。
カウンターでひとりサングラスの紳士がスーツの上着をぬいで、ビールを傾けています。
まばらなバーの客にむけて、ギター奏者は自作の曲を弾きはじめます。
その曲は切なくも悲しみのともなわない愛の唄。
今はなき恋人のために作った曲でした。
曲が終わり、ソーダ水を口にしていると、ステージにウェイターが近づいてきて、
"あそこのカップルがもう一度今の曲を弾いてほしいってよ。とても良い曲だからと・・。"
"愛がいつまでも続かないってことを痛感する曲なのにさ"
"そんなこと関係ないじゃないか。聞く方が満足するんなら"
"言っといてくれよ。その笑顔がいつまで続くかなってさ"
"わかったよ。悲観的なシンガーの結晶をもう一度演奏します、愛をこめてとな"
ふたたび自作の曲を演奏しながら、ふとバーに目をやると、言い争いをはじめているカップルの姿が・・。
"そらみたことか。愛は水もの、良い面ばかりが愛じゃないってことさ。"

心は不思議な力を

2012-04-07 | une nouvelle
"人の悲しみは心を通って夜空へとながれていきます。
そして、彼方のやさしさをともなうヒカリがその人の胸へと帰ってくるのです。
心とはそんなもの。だから、つらいことも悲しいことも、すべて夜空を通ってヒカリとなっていくのですから・・。
ヒカリはやがて活力となり、この世界での喜びや笑いへと変わっていきます。

安心して歩みなさいと彼方の声はささやきます。
あなたの胸にある心とはそんな不思議な力をもっているのだからと。"

気ながな願いごと

2012-04-05 | une nouvelle


"あると思う気持ちが希望を生んでいくのかもしれません。
ですが、あると思いきることは心にとても負担をしいることになります。
いつまで続くかわからない強い気持ち・・。
それよりもあるかもしれないという一見弱々しくも明るい気持ちが実は気ながに実を結ぶものなのかもしれません。
だれもが希望を叶えたいと思っています。
この世界にはこの世界のペースというものがあります。
気ながに願いましょう。力強く張りつめたものは不意の力に折れやすいものです。"