東京都知事選で3選を果たした小池百合子氏は、支援を受けた自民党などの政党色を抑える選挙戦術が奏功し、立憲民主、共産両党が支援した蓮舫前参院議員は3位に沈んだ。2位に食い込んだのは政党の支援を受けず、若い無党派層を中心に支持を集めた石丸伸二前広島県安芸高田市長だった。
与野党は選挙結果を、既成政党に対する有権者の不信の表れと深刻に受け止め、政治の信頼回復に努めなければなるまい。
派閥裏金事件で厳しい逆風にさらされている自民党は、小池氏を自主支援したものの、水面下での組織票固めに徹し、党幹部が応援演説に立つ場面はなかった。
本紙の出口調査では、知事選で裏金事件を「重視した」との答えは70%に上り、小池氏3選は自民党の信頼回復を意味しない。
自民党に対する有権者の厳しい姿勢は都議補選に反映された。自民党の当選者は、擁立した8人中2人にとどまり、選挙前の5議席から大幅減。裏金で処分を受けた萩生田光一前政調会長の地元・八王子市選挙区では、自民党新人が諸派の候補に大差で敗れた。
一方、立憲民主党が実質的に全面支援し、鋭い舌鋒(ぜっぽう)が持ち味の蓮舫氏も、小池氏批判票の受け皿にはなれなかった。
小池氏を表立って支援しなかった自民党を相手に、共産党とともに国政での与野党対決を持ち込んだ選挙戦術が妥当だったのか。
都知事選での勝利を、次期衆院選での政権交代につなげたい気持ちが先走りしすぎて、都民の意識と離れていったのではないか。
蓮舫氏は立民、共産両党の支持層をそれぞれ7割程度しか固められなかった。共闘効果の有無も検証する必要があるだろう。
無党派層が最も支持したのは、ほぼ無名から150万票超を集めた石丸氏だった。交流サイト(SNS)を駆使して政治の再建を唱える戦術が若い世代を投票所に向かわせた可能性があり、若者の政治参加を促すために、学ぶべき点も多いのではないか。
都知事選と違い、衆院選は政党同士が政権を争う選挙になるが、支持する政党を持たない無党派層が当落を左右するのは共通だ。
政党不信が突き付けられた今回の選挙を踏まえ、政治への信頼をどう回復し、無党派や若者の政治への関心を高めるのか。与野党ともに論議を尽くしてほしい。
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