日銀の黒田東彦総裁が「家計の値上げ許容度が高まっている」と発言した。黒田氏が発言の根拠として引用しているのは、渡辺努・東京大大学院教授が4~5月に国内の8383人を対象に実施した調査だ。
この調査は「いつも行っているスーパーでいつも買うチョコやビールなどの値段が10%上がった」際の行動を尋ねたもの。他店に行かずに「その店で買う」と答えた人が昨年8月の43%から56%に増えたという。
◆消費者にあきらめ感
だが、同じ調査で回答者の過半数は1年後も「賃金は変わらない」と予測する。賃金上昇が伴わない中での値上げならば、多くの家計にとって物価上昇は「許容している」のではなく「許容せざるを得ない」というのが実態に近そうだ。また「その店で買う」との回答も、資源高や円安は食品などの価格を全体的に押し上げるため、消費者は他店に行くのをあきらめたに過ぎない可能性もある。
値上げを許容できるだけの貯蓄がない家計へ黒田氏がどれだけ目配りできているかも問題だ。日銀の緩和継続は、利上げを続ける米国との金利差を拡大させ円安を促す。政府は物価高騰を重く見ており、補正予算を組むなど対応する。しかし、黒田氏は物価上昇2%の目標達成の好機と捉えている面もあり、政府と日銀の課題認識にズレが見え始めている。(皆川剛)
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