華やぐ時間

時の豊潤なイメージに惹かれて 。。。。

映画  ”  マンダレイ  ”

2006-03-17 19:14:28 | ★映画  
デンマークのラース・フォン・トリアー監督の 米国3部作の第2弾作品である
あの戦慄の  あの衝撃的な  あの演劇的美の構成の ”ドッグ・ヴィル”の続編になる
大きな倉庫のような建物の床に白線で家の間取りを引き  畑や道や小屋が現れる
少しの家具を配置したその家の中で人がそれぞれの生活を動き  道端で子どもが遊んでいる
舞台上の芝居を観るような臨場感 緊迫感が  とても新鮮で  物語の中にぐいぐい引き込まれた
力のある俳優たちでなければ演じれないのではないだろうかと思わせた構成だった
その ”ドッグヴィル”の同じ主人公グレースが登場する ”マンダレイ”  
心の中で てぐすね引いて  いそいそ観に行った

マンダレイ農園にクルマでさしかかる車中のグレースと父親の会話が 物語を要約してる印象だった
ギャングのボスである父親を「傲慢」と言ったグレースが  ラストでは傲慢な黒人を鞭打ち
父親は グレースのその「傲慢さ」に満足して立ち去るのである     物語の円環
一人の黒人女性が鞭打たれる者を助けてほしいとグレースに頼む  奴隷制が残っているその農園
グレースは黒人たちに自由を与え解放し  民主主義を説く使命感のために農園に残る
若いグレースの独り善がり 理想の押し付け  物語が進むほどに彼女の危うさに はらはらさせられる

死の床の農園主も 黒人たちのまとめ役のような老人も 奴隷制の終わっていることは知っていた
そのうえで農園内の決まり事を書き  働く人々も甘んじて奴隷制を生きていたのである 
ずるがしこい者  人を笑わせる者  番号を振られた個々人はその役割の中で生きていく
なにかよくないことが起きたときは農場主であるママを悪者にすればいい
世の中の準備が整っていない今 奴隷制が消滅したとて 農場から出て行って まずいことが起きたら
自分を責めなければならない   自由も解放もなくてもいい  この農園の中では不要でさえある

この映画の物語を 現実の世界に寓話的に当てはめてみる見方をする人もいるようである
グレースがマンダレイを解放しようとすることは アメリカがイラクにしたことと同じだろう と言う
監督いわく 「自由になりたい人を自由にすることはすばらしいことだと思うが、 相手の考え方が
正しくないからといって、 自分たちの考えをそのまま持ち込むのはよくない。 」
政治のことはともかく  狭い生活の場で ある意味で農園主に守られながら生きてきた奴隷という
身分の人々は  その共同体の中で自分らしい役割を認められて 指図されたことを信じて生きていく
この農場から出なければ  外の世界を知らなければ  これは安泰といえるのではないだろうか
「まだ準備が整っていない 」と まとめ役の老人が呟いていたが  そうかもしれないと思う
この世の中 社会は まだまだ 人種間のことだけではなく いろんな偏見差別が横行している
                             

コメント (4)
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