代替案のための弁証法的空間  Dialectical Space for Alternatives

批判するだけでは未来は見えてこない。代替案を提示し、討論と実践を通して未来社会のあるべき姿を探りたい。

参院決戦を前に ―血に飢えたウォール街に郵貯を渡すな―

2005年08月08日 | 郵政民営化問題
 今朝のサンデープロジェクトを見ていて気分が悪くなった。亀井静香氏が登場して、なぜ郵政民営化法案を否決しなければならないのか熱弁をふるったときのことである。
 コメンテーターの草野厚氏が、「亀井さん、新党を結成したとしてどんな政策を掲げて闘われるつもりですか?」と尋ねた。亀井氏は、それに対して「本来の自民党の政策、つまり地方を重視する、中小零細企業を重視する、さらに農山漁村がキチンと維持される中で、日本経済を・・・・」と自らの政策内容を喋りかけた。そしたら草野氏は亀井氏の発言を遮って「亀井さん、それはもう時代遅れなんです!」と怒鳴るように横槍を入れて、発言を封じ込めようとしたのである。
 草野氏によれば、中小企業と農山漁村が元気でいることは「時代遅れ」なのだそうだ。日本には農林漁業も中小企業もいらないとでも言いたいのだろうか。一部の大企業だけが繁栄すれば、農林漁業者など滅びてもよいとでも言うのだろうか。開いた口がふさがらない思いがした。時代遅れなのは草野氏の方である。こんな討論のマナーもわきまえることもできず、知性のかけらもなく、そもそもまともな学問的業績など皆無なのに、市場原理主義者であることによってマスコミの覚えがめでたいというインチキ学者たちが世論をミス・リードしているのだから日本も救われないわけだ。それにしても草野氏の場合、基本的な経済知識もなさすぎ、あまりにもあまりにもひどすぎる。
 
 番組では次いで、郵政民営化論者の中川秀直氏(自民党国対委員長)が発言した。その中で中川氏は、法案が否決されれば日本株などが大量に売られる、つまり「日本売り」の状態になると、視聴者の危機感を煽り立てるように述べておられた。もしかしたら、ハゲタカからそのように脅されているのかも知れない。「日本売りが怖いから民営化せよ」というのは本当におかしな論理である。
 こんな論理がまかり通れば、これからの日本政治は、有権者の意志によってではなく、ウォール街の意志によって行われることになる。つまり、日本政府がウォール街の意図に反する政策(つまり市場原理主義に反する政策)を行おうとすると、彼らは「日本売り」で脅し、その政策にはブレーキがかかるというわけである。こうして「日本売り」怖さに市場原理主義以外の政策は選択不可能になっていくのである。かくして日本は、実質的に民主主義が存在しないという、米国の植民地になっていくのである。

 郵貯が民営化されれば、郵貯の資金がウォール街に流れて、ウォール街がさらに多くの日本株を保有することになるだろう。つまり、日本の政治がさらにウォール街のコントロール下に置かれることを意味する。そして、ますます日本政府はウォール街と米国政府の指令に従わざるを得なくなっていくのである。つまり、「日本売り」が怖いというのなら、なおのこと絶対に郵貯と簡保を民営化してはいけないのである。

 最近の国際政治を見ていても、ブラジルで左派・労働党のルーラが勝ちそうになればブラジル株が売られ、ドイツで社民党・緑の党が勝てばドイツ株が売られという形で、ウォール街がお気に召さない政策を実行しそうな政党が登場すると、必ず横槍(=内政干渉)が入る。これの何が民主主義なのだろうか?
 
 だいたいウォール街が日本株を購入するための資金など、もともと金融ビックバン以降、日本から米国に流出したものである。本当にバカバカしい。ウォール街に資金を貢いで、それで日本株を買ってもらうくらいなら、始めから日本人自身が日本株を購入すればよいではないか。

 郵貯の資金だけは絶対に、血に飢えたウォール街と米国財務省に貢いではいけない。ウォール街の金融業界は、対イラク開戦を支持する論調を煽って戦争を引き起こし、戦争を利用しながら石油を投機して、世界中の人々を困らせながら儲けているような人々である。最も公共性に反する資金の使い方をする人々である。何かを造るのではなく、破壊を通して利潤をあげようと考える人々である。彼らに資金を貢ぐくらいなら、日本国内でバカなダムや道路を造っていた方が、まだマシだと言いたい。少なくともそちらの方が、人を殺すようなことはないからである。
 自民党の中川氏は、「小さな政府」をつくるためにはどうしても郵政の民営化が必要だと言っていた。日本が郵貯を失って「小さな政府」(=「思考停止政府」)になると、その分のお金は米国に流れて、「大きな米国」になるのだ。
 そこまで行ってしまって、日本の政府機能もマヒした場合、米国の植民地状態でいるよりは、私たちは51番目の州になることを要求すべきだと思う。1億2000万人の日本人口が投票行動に訴えることができれば、少なくともブッシュのような人物が大統領になることはないだろう。日本国は滅びても、日本州の投票行動によって米国政治が変われば、世界にとっては良いことである。はたして日本の親米派に、そこまでの覚悟はあるのだろうか?
 
 ウォール街は戦争を欲する。何故か? デリバティブで儲けるためには、株価や為替などが安定的に推移していては困るからである。何かが急激に上昇する、あるいは急激に下降するというイベントがなければ、彼らは儲けることはできない。つまり「世界の安定」はウォール街の敵である。そして何かを急激に上昇させたり下降させたりするには、戦争というイベントは願ってもない材料なのだ。

 ウォール街はホワイトハウスへの影響力によって、インサイダー情報を握ることができる。つまり、戦争が起こるかどうか分からない状態で石油を投機するという不確実性の高いことをする必要はなく、政治的影響力によって戦争を100%確実に起こさせながら投機をすることができる。ホワイトハウスに近い分だけ、イベント発生の日時を正確に読めるので、彼らは誰よりも儲けることができるのである。究極の「インサイダー」とは彼らのことだ。
 
 いよいよ本日は参院決戦の日です。かけがえのない郵貯の資金を、この地球上でもっとも反社会的、反公共的な人々に奪われてはなりません。歴史はきっと本日反対票を投じた議員の皆様を評価するでしょう。100年の大計を考えれば、解散が自民党にとって有利か不利かなど本当に些細な点だと思います。どうか勇気をもって反対票を投じて下さいますよう、お願いいたします。
  

最新の画像もっと見る

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
郵政民営化賛成派 (マイケル)
2005-08-14 21:21:11
関さん初めまして。現在22歳の大学生です。反対派の意見を探しているときに偶然にもここに辿り着き、目から鱗です。

今日のサンプロを見ていて亀井氏の発言を聞いていて郵政民営化に疑問をもち情報を探していました。郵政民営化にアメリカが絡んでいると始めて聞き、納得できると共に恐怖を感じました。

もし亀井氏がその事を踏まえて反対したのであれば大きな誤解が生じています。

アメリカとは「対等」な付き合いをするべきだと思います。ありがとうございました。また情報を集めたいと思います。
返信する
ありがとうございました ()
2005-08-21 17:11:29
 しばらく自分のブログも見ていなかったので、返信が遅れて申し訳ございませんでした。

 郵貯が米国に奪われたらどうなるのか、郵貯は日本国債を買っているからいけないと言われるが、竹中氏の狙いは郵貯によって暴落寸前の米国債を買い支えさせることではないのか、といった論点はマスコミは一切無視して報道しません。

 本当に困ったことです。何か報道管制が引かれているようにも思えます。

 私の過去の記事も見てくださると嬉しく存じます。郵貯を利用した公共投資で新エネルギー分野などの新産業を勃興させ、民間の資金需要が増大した段階で、自然に郵政公社の資金が民間に流れていく方策を論じています。

 いまのままでは、決して郵貯の資金は日本国内の民間には流れず、米国に流れるだけでしょう。

返信する
国内に使い道がないだけです。 (デルタ)
2006-03-16 00:08:41
こちらにもコメントをば。



こちらのご意見を読んでおり、一番感じたことは、

郵貯にお金を預けている人が、この使い方に不安を覚えないか、という疑問でした。

端的に言って、100%の政府補償があるから、安心して預けているわけです

政府相手だから政治家の力を使って、このご時世にありながら、金利がつくわ、払い出しはいつでもできるわ、ATMはいつ行っても無料だわ、という考えられないほどの好条件(金融機関側から見れば悪条件)でお金を「強制的に貸し付けている」わけです。

一方、提案されているような事業ですと、償還までに30年くらいの期間が必要と思われます。これだけの長期にわたり事実上引き出せないようなかたちで、我々自身お金を貸すでしょうか?もしその気があるなら、みんなこぞって長期国債を買うと思います……が、実際にはそういう動きがありませんよね?

以上のようなマインドは、政策とか、経済状態だとかによるものでなく、国債すら信じられないというオカミや金融市場への不信感によって発生しているのです(第二次大戦を知っている人たちは、有価証券を殊に嫌います。デフォルトを経験しているからでしょうね)



米国債だけを買っても巧い運用でないです。

ウォール街の金融機関にお金の運用を任せることと、

USAの経済体制下に組み込まれることとは、別物です。

彼等にしてみれば、偏った投資をしてリスク管理を怠ったために、みすみす世界最大の金融機関(郵貯・簡保)にそっぽ向かれるのが一番怖いこと。いっぺん信用を失うと、お金を運用させてもらえませんから。



(追記)

ウォール街の現場で働く人たちは、グローバル主義者で、できる限り戦争を避けたがっています(戦争が始ると商売あがったり)。また、彼等の多くは民主党支持です。

ブッシュを支持し戦争を期待するのは、実業界(石油資本とか、機械とか)の人たちですので、そこのところ、ぜひ再考ください。

……って、私は実業界の一労働者なので、こう決めつけると逆に困るのですが(汗)
返信する
デルタ様 ()
2006-03-22 20:55:32
 貴重なコメントありがとうございました。

 私は、対イラク開戦を煽り続けた『ウォールストリート・ジャーナル』の論調を見るにつけ、金融業界は戦争支持一色だと思っていました。一方で米国の製造業の方は戦争反対論が強かったように思えます。

 この問題、自分でももう少し調べてみます。



 

 
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。