代替案のための弁証法的空間  Dialectical Space for Alternatives

批判するだけでは未来は見えてこない。代替案を提示し、討論と実践を通して未来社会のあるべき姿を探りたい。

分断統治への反撃 ―こんどはこっちが分断する番だ

2008年04月25日 | 運動論
 すいません。またもや忙しくてブログを放置しておりました。
 まず、一つ前の記事がだいぶ物議をかもしだしたようですので、続きを書きます。なぜあんなことをを書こうと思ったのかを説明します。
 あの記事は、少なからぬ団塊の世代の方々を傷つけてしまったようです。私は、あの記事で「ニヒリストかつナルシスト」という精神的傾向を持つ全共闘崩れの一群の方々を批判しました。もちろん私は、前向きにポジティブに生きておられる元全共闘の団塊の世代の方も少なからず知っています。ですので、心の中では「ああ、ステレオタイプなこと書いちゃってすいません」と謝りながらも、なおかつ敢えて書きました。

 というのも、「俗流若者論」で若者が攻撃され、若者が打ちひしがれているという現状があり、それに対するささやかな抵抗として「俗流団塊論」で少しくらい言い返してやったって、バチは当たらないだろうと思ったのです。レッテル貼りにはレッテル貼りで対抗し、レッテル貼り攻撃してきた上の世代の方々に自省を促したかったという点があります。
 赤木智弘さんの『若者を見殺しにする国 -私を戦争に向かわせるものは何か』(双風社、2007年)の第1章は「強大な敵としての俗流若者論」でした。それは、上の世代から放たれる「最近の若者は・・・・」という不当なレッテル貼りに対する抗議の文章です。それを読んで、共鳴したというのも、あれを書いた動機の一つです。

 私は、このブログを始めてからというもの、若者たちとの論争をだいぶしてきました。中国・韓国に対する差別的バッシングにあけくれる若者たちとの論争です。私もカーッとなって「差別はやめろ」などと口泡飛ばすような論争をしてきました。

 しかしながら、最近になって、「自分は分断の罠にはまっていただけなのではなないだろうか?」と自省するようになったのです。中国・韓国を叩いてウサを晴らそうとする、絶望的な状況に追い込められた若者の気持ちも分かります。絶望的な状況に置かれて未来が見えない中、しかも自己責任論で上の世代からバッシングされる中、「自分よりダメな人々」を求めて、韓国・中国に攻撃の矛先を向けてしまっているのでしょう。人間は弱いものです。これだけ格差が増大したら、そうなってしまうのも仕方ないです。

 市場原理主義のグローバル化によって絶望的な状況に追い込まれた若者のやるせない不満のはけ口として、中国・韓国を利用しようとしているのは、『諸君!』や『正論』などに寄稿するご老人方です。そしてその背後には、アジア諸国を分断して混乱させながら、日本の従米状態を恒久化させようとする米国の戦略があります。日本人に「中国は怖い」というイメージを徹底的に刷り込むことによって、日本が米国の半植民地状態にあることを恒久化させ、日本を米国とって便利なATMマシーンとして機能させ続けようというわけです。ちなみに、『諸君!』という雑誌は、そもそもCIAの工作資金で創刊されたものです。
 西洋帝国主義のお得意は分断統治戦略。大英帝国はインドを植民地統治するにあたって、イスラム教徒とヒンドゥー教徒が互いに争うように仕向けさせ、彼らの怒りの矛先が英国に向かわないようにしました。そのせいでインドとパキスタンの分裂とその後の抗争の悲劇が生まれたわけです。

 日本国内で、米国のエージェントのようになって反中・反韓論を威勢良く展開しているご老人方、豪邸に住んで何不自由なく暮らしている方々は、いまの若者の絶望的な状況に共感できる一片の感性も持ち合わせていない。彼らは、自分たちの世代の責任でここまで日本をダメにしてしまったという、その犯罪を覆い隠そうとするかのように、若者の目を国内矛盾からそむけさせようと、意図的に中国・韓国に対する敵意を煽りたてようとしているのです。だから右派雑誌ときたら、中韓批判やら民主党批判やら朝日新聞批判の特集ばかりで、格差社会批判の特集など組もうとしないのです。それで「日本の格差など中国に比べればはるかにマシだ」などという、およそ反論にもなっていないハレンチな開き直り論を展開するのです。

 あれらの雑誌に寄稿する人々は、中国・韓国批判の一方では、自己責任論をあおりたて、市場原理主義を礼賛する人々でもありました。宮台真司氏の言うところの「ネオリベ右翼」です。「ネオリベ右翼」は、方法論的個人主義を大前提とする市場原理主義を礼賛しながら、なおかつ国家主義を煽りたてるという、とてつもなく矛盾した人々です。
 それで、市場原理主義を正当化するところの新古典派経済学がどんな学説なのか分かっているのかといえば、彼らは不勉強で全然知らない。知らないままに、ただただ米国に迎合して資本主義万歳、構造改革万歳を唱和してきただけ。だから、自分の思想がとてつもなく矛盾しているという事実そのものにも気付かない。救いようのない愚かな人々です。

 しかも、ああした反中・反韓雑誌に寄稿している方々の少なからぬ人々が、元左翼活動家だったりするで唖然とします。そのような無節操な人々が信用できるわけないでしょう。「左翼はバカだ」という若者の皆さん。少なくとも日本の左翼は本当にバカだと私も思います(ただ、外国の左翼はあまりバカでない人たちも多いですが・・・)。そのバカな左翼思想にかぶれていたような浅薄な人々なんて、右翼になった今も変わらずバカなのだと思いませんか?
 絶対にあの無節操な元左翼右翼たちを信頼してはいけません。若者たちを、彼らバカな元左翼右翼の影響下から引き離すにはどうしたらよいのだろう、私たちが分断されるのではなく、彼らを分断するにはどうすればよいのだろう、それがあの文章を書いた主要な問題意識です。手始めに全共闘崩れの構造改革礼賛論者の精神的病理の分析をしようと思ったのです。
  
 「分断統治戦略」とはよく言ったものです。私なんか、まんまと支配層の策謀に引っかかって、分断の罠にはまりこんでいたのかも。私は、格差社会を批判する、中国だけでなく米国もちゃんと批判するような右派の方々は好きです。いままで、私たちが分断されてしまっていた。これからは彼らを分断してやりましょう。まずは政治的ヌエのような存在である「ネオリベ右派」を社会的に孤立させ、その思想的影響力を消滅させることだと思います。


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14 コメント

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真実を伝える媒体が必要ですし、受けとる側の心構えも要求されますね (9/3)
2008-04-25 14:10:41
「愚かなものは、すべての言葉を信ずる」という諺を聞いたことがあります。
現状、日本のメディアはどこも同じような薄い報道内容で、問題の深層部分まで洞察した記事、報道がほとんど見られません。そこで探究心のある若者の穴を(結果として)埋めているのが、一部の週刊誌とか月刊誌なのでしょう。私の周りでも社会問題に興味のある人ほどそういう雑誌を読んでいます。ただ、そういう類の雑誌は関様のおっしゃる通りの実態ですから、そのまま受け入れるにはあまりにも危険です。ましてや、経験の少ない私たち若者はえてして目新しいものや、ラディカルなものに惹かれてしまう傾向があるように思えます。
やはり、表面的な報道の奥で本当に何が起こっているのか伝えるメディアがぜひとも必要です。その意味でも関様のようにネットを利用した情報発信もひとつの効果的な手段だと思います。あとはYoutubeなど、個人が映像を配信することが容易になっていますから、それを使うのも一手だと思います。但し、個人が発信する報道系の映像も物事を深く知ろうと言う姿勢は見せながら結局、バイアスのかかった情報、偏った人選など問題だらけなのが現状ですが。
とまれ、それを受け取る側にも問題があるのは事実です。
偏った情報だけで満足するのではなく、賢く情報を精査し、吟味することがこれまでに増して求められているように思えます。

関様、まだメール送っていません。申し訳ありません。
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「敵の最大の長所は最大の短所と等しい」法則 (Unknown)
2008-04-25 18:03:06
 同感です。タイトルの通り、彼ら支配者達は、自分たちの最も得意とする戦法として、「分断統治」戦略を使う訳ですから、この法則に基づけば、彼らにとって実行されると一番困る戦略は、この「分断統治」である事に成ります。
 敵の得意とする戦法は、同時に最大の弱点なのかも知れません。彼らを仲違いの上、相互不信、相互不和に陥れるように戦略を練り、工作を行いましょう。
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Unknown (Unknown)
2008-04-26 18:25:07
まさに今日本人に必要な(知るべき)事そのものをズバリ書いてますね。
この記事ちょっと拡散してきます。
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Unknown (ななし)
2008-04-27 00:08:12
分断統治は植民地支配する時の基本ですよ。
階級分化を進めてるのもその一環でしょう。
若年層や地方の切り捨て、貧困化は対外戦争への準備でしょうね。
おそらく米の代理戦争をやらされるんじゃないでしょうかね。
日本の海底資源を欲しがってると言う噂もありますしね。
その為の布石でしょう。
若者にはもっと大きな視野で世の中を見て欲しいもんですね。
表面的な現象やマスコミの扇動に惑わされない事が必要です。
今五味川純平の「戦争と人間」を読んでるんですが、
現在の日本の状況と似てる気がします。
また個人では大きな流れ、国家権力には抗う術がない事も良く分かります。
肝心なのは連携を図って大きな流れにする事でしょうね。
日本が再び道を間違える事がないように切に願っております。
お互い微力ですがあきらめて流されちゃダメです。
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賛成。 (Chic Stone)
2008-04-27 11:48:31
僕自身は分断統治というより、「心地よい絶望」による統治だと思っています。
ここまで…もう中年になりかかっている世代、そして今大人になろうとしている世代を徹底的に黙らせることは歴史上どの統治者にもできなかった偉業ですよ。
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9/3さま ()
2008-04-28 17:27:16
>私の周りでも社会問題に興味のある人ほどそういう
>雑誌を読んでいます。

 じつは私のゼミの学生にもその手の雑誌の読者が多かったりします。彼らは非常に問題意識が高いので、別の視点を提示すれば、別の視点にも興味を示して反応します。あとは自分でも勉強するようになります。やはり情報が偏っていることが最大の問題ですね。
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unknownさま ()
2008-04-28 17:48:15
>彼らを仲違いの上、相互不信、相互不和に陥れるよ
>うに戦略を練り、工作を行いましょう。

 いいですね~。確信犯的なネオリベ右派の周囲で揺れている層を引き離し、孤立させた上で叩くことですね。がんばりましょう。
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ななし様 ()
2008-04-28 17:53:22
>若年層や地方の切り捨て、貧困化は対外戦争への準
>備でしょうね。おそらく米の代理戦争をやらされる
>んじゃないでしょうかね。

 最近の穀物価格の高騰で途上国では暴動による死者も出ていますし、それがエスカレートすると戦争に発展する可能性も大ですね。
 穀物投機でまずヘッジファンドが儲け、途上国が飢えて戦争に発展すると今度は武器輸出で軍事産業が儲けるというシナリオ。ああ、恐ろしい・・・・。
 それを防ぐために何をなすべきか。今後とも議論して参りましょう。
 

 
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Chic Stoneさま ()
2008-04-28 17:59:06
>歴史上どの統治者にもできなかった偉業ですよ。

 本当に、日本人ってここまでおとなしかったっけ?と不思議です。中世でも近世でも、あれだけ頻繁に一揆を起こしたってのに。しかし、自由と生存のメーデーみたいな動きもこの数年で出てきたわけです。希望はあると思います。
 
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Unknown (Unknown)
2008-05-02 23:33:00
私見では、アメリカは既に中国と組んでいると思います。中国はとっくに資本主義大国であり、米中は格差社会の元凶たる市場原理グローバル経済の車の両輪です。分断ではなく、日本は孤立し、包囲されているのです。もはや第三の道、ロシアとの提携を探るしか生き残る道はないのではないでしょうか。
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