代替案のための弁証法的空間  Dialectical Space for Alternatives

批判するだけでは未来は見えてこない。代替案を提示し、討論と実践を通して未来社会のあるべき姿を探りたい。

環境破壊と気候変動と感染症

2020年04月16日 | エコロジカル・ニューディール政策
 一週間ほど前になるが4月9日の東京新聞の特報面で、「環境破壊や気候変動によって新たな感染症が拡大していく」という記事が掲載されていた。今度のコロナウィルスについては、まだ詳細は不明であるが、一般論として気候変動が新たな感染症の拡大を生むことは多くの学者たちによって警告されてきた。たとえば以下のような根拠である。
 https://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2020040990105842.html

  
*自然破壊や温暖化でコロナウィルスの宿主のコウモリの分布域が狭まり、人里に侵入してコウモリとヒトとの接触が大くなる。(同様にコウモリ以外の野生動物でも人獣感染のリスクは増加する)
*コウモリは飛ぶときに高熱を発する。人間は高熱でウィルスを殺すが、宿主のコウモリに合わせて熱に強いウィルスに変異し、それが人に感染するリスクが増える。
*温暖化によって熱帯の感染症が北上する。
*北極圏の永久凍土が溶解すると、そこに閉じ込められていた未知のウィルスが蔓延する可能性がある。

 別に感染症に限った話ではない。昨年の台風19号水害やアマゾンやオーストラリアでの破局的な森林火災を見れば明らかであるが、このまま気候変動が進んでいくと、遅かれ早かれ、文明崩壊のカタストロフィは避けられない。この期に及んで、温暖化懐疑論を吹聴する輩がまだいるのには信じられない思いである。ほとんど犯罪行為である。「恥を知れ」と言いたい。

 今度のコロナ禍をきっかけとして、新自由主義のグローバル化を終わらせ、食料やエネルギーの地産地消を目指すローカル・エコノミーに移行していけば、感染症の拡散リスクも緩和できる。気候変動と感染症拡大の危機に対処する最良の方法は、新自由主義のグローバル化を終わらせ、食料とエネルギー(もちろん再エネ)の地産地消をできるだけ押し進めることである。
 これを契機に、経済システムのあり方を抜本的に変えることにつなげれば、長い目でみれば、より大きなカタストロフィを回避し、被害を最小化するソフトランデンングが可能になるかも知れない。災いを転じて福に変えよう。この危機が去った後、ふたたび新自由主義のグローバル化を復活させようとしないことである。
 もちろん知識や技術のグローバルな拡大はいいことだが、人の移動やモノの貿易のグローバルな拡大など、気候変動による文明崩壊のカタストロフィを速めているだけなのだ。
 バッタ被害も同時進行していて、このままでは世界的な食料不足による価格高騰もやってきそうである。日本はアメリカのアグリビジネスと結託した、食や農や水や森の外資への売り渡し政策を即刻やめ、自営農家と協同組合と地域資本と公的セクターを重視した地産地消に舵を切るべきである。
 
 今度の危機によってテレワークや在宅勤務が拡大するのは良いことだと思う。
 今後は政府レベルの会談なども、可能な限りすべてオンラインでやるべきではないか。首脳の外遊のために膨大な血税を投入した挙句、飛行機の移動で大量の二酸化炭素をまき散らすのはもう止めて欲しい。気候変動の会議を開催するために大量の化石燃料を消費して二酸化炭素をまき散らすなどブラックジョークでしかない。
 

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4 コメント

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帆船はいかが? (renqing)
2020-04-18 15:42:08
 上記、URLに弊ブログ記事「コロナ禍は肉食文明への報い」を貼り付けました。ご笑覧ください。
 どうも、久しぶりのコメントでちょっと気恥ずかしい限り。
 歴史に見るカタストロフは、たいていダラダラと100年ぐらいかかっています。西ローマ帝国の消失もゲルマン人に強襲されたわけでもなく、実質的には平和的な移住地域の浸食/拡大でした。
 おそらくこの21世紀は石油グローバル文明の「カタストロフの世紀」として人類の年代記に記載されることになるのではないでしょうか。
 現在の地球人口は約80億人ですが、これは「石油」という魔法の資源による人口支持力の上げ底によって支えらているに過ぎません。石油テクノロジーとグローバリゼーションの《合併症》みたいなものです。
 私、フリカケが好きでよくご飯にかけるのですが、玄米ご飯にフリカケながらふとパッケージ裏の原材料をみると、たらこの原産地に「アイスランド」とあり、そう言えば、自分も共犯者か、とギョッとしました。
 増えた人口はすぐに減ることはありません。そして、このコロナ禍でいろいろな経路/メカニズムでグローバリゼーションが縮小すると、それに支えられていた人口支持力は急激に縮小します。関さんも指摘されていた温暖化をきっかけとする蝗害などもありますので、80億人(人口)ー72億人(地球人口支持力10%down想定)=8億人、となったりします。冷徹に言って、餓死者8億人、です。先進国の肥満人が、反省して自分の食べる分を減らす、等と言う美談は妄想でしょうから、餓死者は、最貧国から発展途上国に集中することになります。日本列島の長期人口動態はむしろ理想的ですが、これは例外でしょう。
 コロナ禍のような「歴史の狡智」が働かなければ、石油グローバル文明は人類規模で破滅でしょうが、その是正だとしても、小規模のローカルな破滅は避けられない、と冷静に見ておいた方が良いと思います。この列島も、グローバリゼーションの逆回転で真っ先に悲惨なことになりそうなのは、ローカル人口支持力が極めて低い、東京地方となると思います。
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昆虫食の復活も ()
2020-04-19 17:17:52
 コメントありがとうございました。肉食文明の記事、また小野友五郎の記事も拝読させていただきました。
 牛肉食を可能な限り減らし、昆虫食などを取り入れていくことは、人口扶養力維持のため、温暖化対策のため必要なことですね。

>グローバリゼーションの逆回転で真っ先に悲惨なことになりそうなのは、ローカル人口支持力が極めて低い、東京地方となると思います。

 フランスでも今回の事態で、農業への就業希望者が激増しているそうです。グローバル化の崩壊と共に、日本では東京から地方への人口逆移動が起こると思います。
 今回のような危機的事態の小さなカタストロフを契機に、早めに気づいて移行を始められれば、大きなカタストロフを回避できる最善の道ではないかと思います。
 
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長期で見れば・・・ (renqing)
2020-04-19 18:08:32
関さん
上記、同感です。
 他国にくらべて、日本に関して言えば、私は長期的には多少楽観的です。
 松平忠固が開国に奔走してくれていた当時、この列島の人口は、約3600万人でした。これは現代の人口学の長期人口推計でいう2100年の推計値4900万人台にかなり近い数字です。150年前のテクノロジー、基礎物資の貿易なし、での列島の人口支持力が3600万人です。
 とすれば、現代のテクノロジー(全幅の信頼はおけませんが)による人口支持力up、土壌劣化/流失によるdownを差し引き計算すれば、5000万人弱はなんとか具体的に構想できそうではないですか。
 その大前提は、①「禁裏」様を京都にお返しする。②150年前のような、人口分散型の現代風「連邦共和国」あるいは「ミニ国家連合」という統治構造に戻す。
 こうすれば、分権型統治の上部構造と分散型人口5000万人の下部構造がうまく噛み合うと思われますので。
 しかし、人はパンのみにて生きるにあらず。近代日本をmisleadしてきたのは、長州靖国史観のillusionです。この仮想現実状態(映画「マトリックス」状態)から列島の住人の目を覚まさせておかないと、何度でも現権力者たちのような無能イデオロギストのゾンビ―が再生産されてしまいます。
 関さんのご著書はそのための一石に優になります。私もなんとか頑張ります。
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勝利は確実 ()
2020-04-19 20:00:37
renqingさま

 たしかに日本の場合、戦争や疫病などなくとも自然減少によって6000万人程度に減っていくと思われますので、軟着陸可能な幸いなケースですね。

>近代日本をmisleadしてきたのは、長州靖国史観のillusionです。

 だいぶ明治維新の幻想から目が覚めてきた人々は多いので、この点については、勝利は確実と思います。といっても、まだまだやるべきことは多いですが・・・・。引き続き、がんばって参りましょう。
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