代替案のための弁証法的空間  Dialectical Space for Alternatives

批判するだけでは未来は見えてこない。代替案を提示し、討論と実践を通して未来社会のあるべき姿を探りたい。

再生可能エネルギー買い取り問題 ―これは技術で乗り越えられる

2014年10月17日 | エコロジカル・ニューディール政策
 九州電力続いて、北海道電力、東北電力、四国電力、沖縄電力が一斉に再生可能エネルギーの受け入れを中断した問題について一言。

 九州電力が買い取りを停止した理屈は、以下のグラフにあるように認定された太陽光発電の夏期のピーク発電量は、需要量を超えてしまう量になり、容量オーバーになると、系統や電圧や周波数の安定性を乱し、大規模な停電につながる可能性があるというもの。


出所)毎日新聞 2014年9月30日 http://mainichi.jp/select/news/20141001k0000m020080000c.html

 たしかに図にあるように、九州電力においては、認定された太陽光発電所がすべて稼働すると、ピーク時には需要を上回る発電があることになる。

 逆にいえば計画中のものもすべて稼働すれば、九州では夏期の晴天日は太陽光だけで再生可能エネルギー100%を達成できるということである。これってすごいことではなかろうか? 再生可能エネルギーで100%達成というのはそれほど難しいことではないことを如実に表しているといえる。こんな短期間で簡単に再生可能エネルギーで電力需要を満たすことができることが分かったのだから、喜ぶべきことではないかとすら思える。

 今回の一連の措置に関する疑問点はたくさんある。 

(1)なぜ四国電力まで買い取り停止?

 グラフを見れば分かるが、夏期の出力が需要を上回る量に達しているのは九州電力だけだ。四国電力など、太陽光の最大出力すべて足しても、需要の半分にも満たない量である。なぜ四国まで買い取り停止するのだ? 本音は伊方原発を動かしたいからではないのか?


(2)なぜ地熱、水力、バイオマスなども対象になるのか? 

 
 百歩譲って、太陽光が系統を乱すという九州電力の主張を認めたとしても、出力が不安定で系統を乱す可能性があるのは、太陽光と風力だ。買い取り停止の対象は太陽光と風力のみで十分なように思える。地熱、水力、バイオマスは問題がない。しかるになぜ、出力が安定している水力や地熱やバイオマスまで買い取り停止の対象になるのだ? 地熱や水力は出力が安定しているから系統は乱さない。
 

(3)この問題は技術的に乗り越えられる

 
 容量を越えなければ問題は起こらない。ならば、もっとも簡単な方法は、夏期のピーク時にはいくつかのソーラー発電所から送電網への接続を外せばよい。その期間は火力、バイオマス、水力などでカバーすればよいのである。

 太陽光や風力の出力の不安定性は以前から言われていたから、多様な再生可能エネルギーを組み合わせて出力を安定化させ、IT技術や電気自動車の蓄電機能なども活用したスマートグリッドの整備の必要性が唱えられていたはずである。この危機は、技術開発のチャンスである。日本の優秀な技術力を示すチャンスなのに、腰砕けになっては、諸外国からの笑いものだろう。

 
 これに乗じて再生可能エネルギーバッシングをしている人々は、結局、原発を再稼働させたいだけなのであろう。
 
 
 

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2 コメント

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素人考え・送電しなきゃいいじゃない、と思う (りくにす)
2014-10-18 15:32:35
高品位の電気と不安定な電気とを分け、安定しない電源でも作れるものを製品として送り出すようにすれば、風力・太陽光や小規模水力で起こした電気を無駄なく使えてスマートグリッドや膨大な蓄電池が不要になるのではないかと思います。あるいは発電施設の近くにてんぷら油の燃料を作る工場を建て、送電せずに何か製品の形で貯めていけばいいのではないか、と。
しかしこれまた補助金の争奪戦と利権の温床になりそうです。

日本政府はリニア新幹線と原発をセットで輸出したいので、それらが見本として動いていないと困るようです。自国で動いていないものを売り込むわけにはいきませんから。また、リニアモーターには「レールガン」などの兵器としての用途もあるようです。エンジニアというものは兵器に興味を持つと武器が優位なだけで勝ったも同然、と思ってしまうもののようです。
リニア新幹線はスピード以外の乗り物としての魅力に乏しいですし。
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水素で貯める方法も ()
2014-10-19 00:33:28
りくにす様

 本日の『東京新聞』の特報面でもこの問題特集していました。
 りくにすさんと同じ問題意識ですが、一つ有力な方法として、太陽光の余剰電力は水の電気分解によって水素に変え、トルエンと化合させて液体として貯留するという方法が紹介されていました。 貯留した水素から、いつでもエネルギーを取り出せます。究極的には、この方法が太陽光や風力の電力を有効活用する切り札になるのではないかと思います。

 私も、リチウム電池はコストも高いし、リチウムの埋蔵量も有限ですし、効率的にも環境的にも余剰の太陽光の電力は、水の電気分解で水素として蓄える方法がベストではないかと思われます。
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