代替案のための弁証法的空間  Dialectical Space for Alternatives

批判するだけでは未来は見えてこない。代替案を提示し、討論と実践を通して未来社会のあるべき姿を探りたい。

丸山茂徳氏がすべきことはクズ本の出版でなく謝罪である

2020年12月26日 | 温暖化問題
 地質学者の丸山茂徳氏は、2008年に書いた『「地球温暖化論」に騙されるな!』(講談社)で次のように主張していた。

 「温暖化か、寒冷化か」 
 この問題は、おそらく10年もしないうちに決着がつくと思います。21世紀の地球の気温変化は2035年頃が最低値となる寒冷化を示します。一方、IPCCの予測は一方的な温暖化ですから、2つの予測の差は毎年大きく開いていきます。(46頁)


 当時の丸山氏は10年以内に地球は寒冷化に向かうと断言した。これは科学的に厳密に検証可能な予測だったので、白黒はっきりできる。いさぎよい態度ではないかと感心したものだった。そこで私は12年前に、この本を批判したブログ記事で以下のように書いた。(以下の記事)
 https://blog.goo.ne.jp/reforestation/e/ff209de4e8d9fa24d6d07e43c939a53e

 
丸山氏が言うようにあと10年以内でどちらが正しいのかはハッキリします。ならば、それまでは人々の対策への努力の足を引っ張らないようにしていただきたいと思います。正のフィードバックが本格化したらもう取り返しがつかないことを考えれば、その10年の時間が決定的に重要だからです。万が一、10年経って丸山氏が正しいということになったら、IPCCの幹部全員で丸山氏に謝罪させるようにでもすればよいでしょう。しかし、それまでは全く根拠のない空想論で、温暖化対策の足を引っ張らないでいただきたいのです。


 12年前に私はこう書いて、大炎上したものだった。
 あれから12年。地球は寒冷化するどころか、気温上昇はとどまるところを知らない。IPCCの予測通りだ。いよいよ地球温暖化正のフィードバックが本格化しているようだ。
 丸山氏は、「寒冷化」という予測が外れたのだから、科学者としての良識があるのであれば、世間を騒がせたことに対して謝罪すべきであろう。
 なぜ日本の「知識人」なるものは、自分の言論活動にちゃんと責任を負えないのだ。なぜ間違ったことを言っても、どこ吹く風で、平気な顔をしている人間が多いのだ。なぜ日本人は、こうした「知識人」たちを許すのだ。

 信じがたいことに、丸山氏は何ら反省しないばかりか、意気軒高にさらなるクズ本を出版しておられる。『地球温暖化「CO2犯人説」は世紀の大ウソ』(宝島社)と。
 


 丸山氏が、12年前に主張していたのは、あくまで10年で「温暖化するか寒冷化するか」という科学的に厳密に検証可能な話であったはずだ。寒冷化はせず、ますます温暖化しているという結果が出たのだから、まずは誤りを認めるべきではないのか。

 ところが、地球が寒冷化せずに温暖化しているのは否定できなくなったものだから、今度は、「温暖化の犯人はCO2ではない」と威勢よくアジっておられるのだ。論点のすり替えも甚だしい。このように論点をすり替えれば、あとは適当なトンデモ説を出せば、素人の目をごまかせるとでも考えたのだろう。ウソの予想がいくら外れても、厚顔無恥に次のウソを出してくる。まるでオオカミ少年だ。
 2035年にピークになるように寒冷化するはずが、この本では、「いつか寒冷化する」と表現を変えている。「2035年」はどこに行ったのだ? 「いつか」って、1000年後か、それとも1万年後か? 予想した以上、自分の発言にちゃんと責任を取りなさい。

 このクズ本では「温暖化が原因であるというのはまったくの嘘であるが、地球で現在、異常気象が起きているということは事実」(214頁)と書く。では、なぜ異常気象が起きるのかといえば、原因は温暖化ではなく「編成風の蛇行」にあるという(215頁)。では、偏西風の蛇行はなぜ起きるのかといえば、「大陸の配置の複雑さに原因がある」(216頁)という。

 ハリケーンや台風の巨大化も、線状降水帯発生の頻発化も、カリフォルニアやオーストラリアなどでの干ばつによる森林火災も「偏西風の蛇行」が原因なのか? おいおい、いつ異常気象を起こすように大陸の配置が変わったのだ? 
 トンデモに拍車がかかって、もはや正常な思考とは思えない。
 
 このクズ本は、冒頭でいきなり、IPCCのモデルを信じれば「混乱の時代を導く。そして混乱は、次の混乱を招き、世界はもっとカオス化して、最悪の場合は大三次世界大戦を導く」(9頁)というのだ。ほとんど「風が吹けば桶屋が儲かる」レベルだ。
 断言するが、IPCCの予測をもとに、最悪のシナリオを回避するよう正しく対策をとっていけば、世界の平和と安定を導きこそすれ、第三次世界大戦になどならない。逆に、丸山氏のようにIPCCはウソだねつ造だとわめき立てて、何ら対策をしなければ、環境難民が激増し、それこそが戦争の原因となるだろう。

 他にも、「地球環境問題は左翼の政治活動に利用されている」、グレタさんを支える「環境団体に、中国政府の代理人である疑い」(281~283頁)と根拠も示さずにアジっている。ほとんどネトウヨの陰謀論レベルである。そもそも、最近まで中国政府は地球温暖化対策に背を向けてきた丸山氏の同類なのだ。丸山氏こそ、温暖化対策に背を向けていた中国政府を擁護すべきではなかったのか?
 
 あげくの果てには、「日本は2035年に崩壊する」(324頁)である。ノストラダムスもびっくりの大予言だ。「科学者」が言うべきことか?

 このクズ本の帯にはこうある「『グレタ騒動』で、いったい誰が儲けているのか」と。
 懐疑論を煽って、情弱B層に媚びて、儲けているのは丸山氏であろう。

 共著者の一人のデビッド・アーチボルド氏は、石油探査に従事していた石油業界の人間。丸山氏が、この本で「化石燃料なしの持続可能社会は不可能」(255頁)などと、あからさまに石油・石炭産業の利益代表のように訴えておられるのも頷ける。
 


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