代替案のための弁証法的空間  Dialectical Space for Alternatives

批判するだけでは未来は見えてこない。代替案を提示し、討論と実践を通して未来社会のあるべき姿を探りたい。

真田丸 第25回「別離」感想(第24回「滅亡」もあわせて)

2016年06月26日 | 真田戦記 その深層
 先週多忙で第24回の北条滅亡回の感想を書けておりませんでした。前回と今回の感想をあわせて書きます。
 
 千利休が小田原合戦で一儲けしようと北条側と豊臣側の双方に武器を売り付けていたという設定。これは三谷さんのオリジナル脚本と思われますが、戦争を利用して双方に武器を売り付けて儲けようという死の商人の設定は、戦国よりも現代に当てはめた方がより生々しくリアリティがありますね。ヒ〇リーもオ〇マもその一味なので、口先でいくら「平和」と言っても空疎でシラジラしいという・・・・。しかも現代はそれをやっても罪を問われません。

 さて、源次郎が小田原城に開城交渉に出向き、その決死の城中で奇跡的に義兄の小山田茂誠と再会し、それがきっかけで源次郎は、千利休が北条にも弾丸の材料になる鉛を売り付けていたという秘密を知ってしまって、それが利休切腹に結びつくという設定・・・・・。そこがこう結びついていくのかぁというアッという展開でしたが、ちょっと無理があったような気も・・・・。
 もっとも、深層的には、千利休切腹は、自治都市堺の商人の力を削ぎ落とそうという石田三成と大谷吉継の謀略という解釈でした。そちらの深層部分の解釈は、真実味があるように思えました。やはり三成や吉継であっても、政治はきれいごとだけでは片付かないという冷徹なリアリティです。

 ようやく小山田茂誠と松が再会できたのは本当にめでたいことでした。じつに第5話以来20話ぶりの夫婦再会でした。松と茂誠夫妻が、後年の真田家分裂の際にどのような決断を下していくのか、そこをどう描くのか今後の見どころの一つですね。

 前回の忍城水攻めは意外な結末が描かれました。昌幸が、水攻めに失敗する三成に献策して、北条氏政の無血の兜を城内に持ち込み「氏政は自分の命欲しさに戦うこともなく降伏した、忍城は見捨てられたのだ」というデマ情報を流して、開城させるというもの。ただ、この策で開城に応じたというストーリーはちょっと苦しかった。これまで大河で伝えてきたメッセージと矛盾していたような気がします。

 というのも、これまでの大河ドラマの中で、国衆というのは、戦国大名の家臣とは違い、おのれの領国と領民のために動いている。大名に従属しているが、大名の家臣とは違う独立性の強い存在であるということを描き出してきていました。国衆としての成田家は、北条譜代の家臣と違い、北条に忠誠など誓っていない。ただ国衆の論理の中で戦っていたはずです。(「のぼうの城」で描かれた通り)。なので、氏政の兜は、成田長親に降伏を促す道具としては使えなかったでしょう・・・・・。
 
 そういえば忍城主の成田家といえば、大河ドラマ「風林火山」でも描かれていました。上杉政虎の小田原城攻めの際、当時の忍城主の成田長泰は、関東管領を襲名したGacktの上杉政虎(謙信)の権威と勢いに押され、いちどは北条から寝返って、上杉に従います。しかし鶴岡八幡宮で上杉政虎から辱めを受けると、成田家はさっさと上杉から離反し、ふたたび北条に付くのです。この辺、真田丸の昌幸パパの行動を彷彿とさせるものです。まさに成田家は、信玄・謙信・氏康の「風林火山」の時代から国衆の論理で動いてました。
 
 なので、北条氏政の無血の兜くらいでは、忍城は揺らがないでしょう。また忍城の国衆の論理がよく分かる昌幸パパに限って、三成にそのような策を献策することはないはずでしょうと・・・。

 もっとも、忍城で石田三成が真田昌幸から膝を突き合わせて兵法について学ぶというストーリーはよかったですね。というのも、忍城攻めに参加していた豊臣方の武将たちは、後年、関ケ原の合戦の際にみな西軍につくのです。忍城攻めの際の交流で生まれた何らかの連帯感が彼らの中にあって、それが後年の西軍参加につながっていったという可能性は十分にあるのではないでしょうか。石田=上杉=真田のつながりが深まっていく様子が描かれたことは、関ケ原につながっていく重要なエピソードとして生きてくるでしょう。

 さて、三谷さんの脚本の仕上がりが遅れているという情報も飛び交っています。関ケ原の段の脚本がまだ仕上がっていないという情報も・・・・。きっと関ケ原の描き方では、相当なこだわりがあって、悩みぬいておられるのかと拝察します。
 つきなみですが、がんばってください!! このとき三成だったら、昌幸だったらどのようなセリフを発するだろう・・・・。悩んだら、草刈りさんや山本さんなど役者の皆さんに聞いてみれば如何でしょう。もうこの時期であれば、役者さんたちが当人たちの気持ちをいちばん理解しているでしょうから。


 
 



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