代替案のための弁証法的空間  Dialectical Space for Alternatives

批判するだけでは未来は見えてこない。代替案を提示し、討論と実践を通して未来社会のあるべき姿を探りたい。

学者の利益相反行為を取り締まるために

2014年01月13日 | 利益相反 その傾向と対策
 今期は授業の中で、学者の conflict of interest (利益相反)の問題を扱ってきた。ダム、原発、遺伝子組換作物、金融規制緩和、子宮頸がんワクチン・・・・いずれも政府の政策決定かかわる審議委員会等に所属している学者が、審査対象の民間企業等から研究費や役員報酬等の利益供与を受けていたことにより問題を引き起こしてきたという点で、構造として同質である。

 
 ノバルディスファーマ社が研究費用を提供した大学で同社の新薬の臨床データの改ざんが行われていた事件、グラクソスミスクライン社の社員が身分を隠しながら子宮頸がんワクチンの費用対効果についてデタラメな分析を行った論文を書いていた事件などが次々と発覚し、製薬ムラ・医学ムラが、原子力ムラや河川ムラに負けず劣らずの、唖然とするばかりのモラルハザードに陥っている実態が明らかになった。

 もはやいまの日本では、専門家の言うことなど全く信用できなくなったと言ってよい。
 

 ノバルディスファーマ社の問題で前参議院議員のはたともこさんは、ツイッターで以下のように述べていた。(はたさんのツイッターより引用)

  厚労省がノバルティスファーマをやっと告発したが、薬事法違反(誇大広告)は筋違い。巨額寄付でデータを捏造した詐欺罪であり、公務員に対する贈収賄罪だ。検察は告発内容に拘わらず、厳正に捜査すべきだ。同様に猪瀬氏も贈収賄罪。となれば石原元知事も捜査対象。徳洲会疑惑解明は新都知事の責務だ。
 

 
 同感である。 
 八ッ場ダム問題に関連して、国交省が数々のウソ、ねつ造、データ改ざん等を行っている事実を私も指摘してきた。虚偽公文書作成の犯罪なのだが、学者たちが官僚と固くタッグを組んですべて隠ぺいしてしまい、結局、誰も逮捕されなかった。

 こうした一連の問題にどう対処すればよいのだろうか?

 大学生たちに conflict of interest が引き起こす諸問題に対処するためにどうすればよいのか聞いてみた。学生たちの意見をいくつか紹介する。



 4年生 男子
 真実を伝えることを正義としなければならないマスコミすら懐柔されてしまっている中で、当事者に解決・改善させるのは不可能なので、私たち自身がインターネット等の情報を比較・検討する等、自己防衛するしかないと思う。

 3年生 女子
 第三者機関を複数設置することが今の日本では最善なのではないかと思います。複数設置すれば多角的に評価されるようになるが、しかし全て買収されてしまう可能性もありますが・・・・

 3年生 男子
 権力のある監視機関を外部に完全に独立したものを作ればよいと思う。特定秘密保護法や政府の癒着を考えると夢物語な感はあるけど……。

 3年生 男子
 市民が監視する第三者機関をつくる。政治家や専門家がダメなら市民がやるしかない。

 3年生 女子
 チェック機関を作るとき、利害関係者を一切入れない、献金を受けない、受けたことのある者は入れないという法律を作った方がよい。

   
 

 日本学術会議は、学者の利益相係にどう対処しようとしているのか? 朝日新聞(下記サイト)で報道されているところによれば以下の二点である。
http://www.asahi.com/articles/ASF0TKY201312170267.html

 ① 研究費の申請の際、研究者や大学院生への倫理研修の受講の義務化。
 ② 不正の疑いが判明したときに、研究者が所属する大学や研究機関が第三者委員会を設置。委員会の半数以上を外部の有識者とする。
 

 これで不正を防止できるだろうか? 利益相反を生み出す温床であるところの研究機関の内部に「第三者機関の設置」という発想が、すでに絶望的な錯誤に陥っている。第三者でないものを「第三者」と呼ぶ形容矛盾……。日本学術会議とは日本語も正しく使えない人たちの集まりなのだろうか?

 学生たちの提言の方が100倍はまともといえるだろう。

  



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