後ろ歩きの不思議おじさん

あっちこっちにポケットを一杯もった不思議なおじさんの特技は後ろ向き歩き。その右往左往振りは滑稽で、ちょっぴりもの悲しい。

「人殺し」

2010年03月16日 | Weblog
藤沢周平の短編集「驟り雨」のなかに
「人殺し」が収められている

以前読んだときは何気なく読み飛ばしたが
昨夜読んでみて、どうも何かが引っかかってしょうがない

ストーリーは単純である
江戸でも最も条件の悪い長屋の住人の話
一年を通して陽が当たるのは夏のいっ時だけ
家賃は他の半分
だから住民はほとんど居ついてしまう
江戸の中でも最下層の住人たち

そこにある男が表れた。
いきなり男は長屋最強といわれてきた住人に喧嘩を売り
それに勝って覇権を握ると、後はやりたい放題

井戸を優先的に使うことから始まって
近所の住人を訪ねてきた16の娘を強姦し、
隣の住人の連れ合いを半分奪う形で取り込み
気分が悪ければ誰でも殴り放題
長屋の誰もが男と顔を合わせようとせず
早くあの男が死んでくれたらよいとか
どこかに引っ越してくれることを願うのみ

普通なら、たちまちこの長屋は空っぽになるはずだが
最貧の住人たちには逃げていく場所が無い

そんな男にあまりかかわりを持たなかった17歳くらいの若者がいた
まだ子供と感じていたのか、男も若者に注意を向けなかった

若者は、強姦された娘に密かに恋していたことを自覚した
娘に一、二度会って、どういう気持ちで過ごしているか
ぎこちなく確かめようとする。そのうち、
嫁にもいけなくなった娘の敵討ちこそが自分の使命だと意を固めた

覇権の座を追われた元最強の男や
嫁を寝取られた男達に復讐を呼びかける
男たちは面目を完全に潰されてきたにもかかわらず
若者の話には乗り気を見せない

若者は匕首を腹に収め
嫌われ者が井戸で顔を洗っているときに喧嘩を売る
一瞬の隙を突いて匕首を腹に差込み
さらに背中からも一突き
おびただしい血と、腸が地面に広がる

若者は思った
これで長屋の皆が喜んでくれると
大きな歓声が上がると

実際には、長屋の皆は押し黙ってみているだけ
元最強の男が出てきて若者の頬を張り飛ばした
「なんてことをしやがったんだい!」
長屋の連中も言った
「あいつはひどいやつだったが、誰にも怪我はさせていなかった」

若者は呆然と立ちすくむばかりだった

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浅沼書記長を襲った右翼青年の孤独を思い起こした
周平さんのメッセージが解けない

もし映画にするとしたら、どんな脚本にするのだろう
寝ながら構成を考えている不思議おじさんだった

何本も植えていたはずの椿
多くはは消えてしまったが
この白椿は元気である
椿も、一重に限る



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