●遮蔽能の確認
遮蔽装置ができたら、一回は遮蔽空間内線量率のふらつきを確認する。
PA-1000「RADI」の位置は重要である。
後述する、「やさしお」を測定するときと、同じ条件にすること。
筆者の場合(RSR-109)/
(前身のRSR-40も同様)には、蓋に開けた小穴にPA-1000のストラップを通し、
ストラップの途中に「安全ピン」を刺し、PA-1000の高さと向きが変わらないようにしている。
(試しに、「やさしお」を入れてみて、具合を見たほうがいいよ)
※初めにPA-1000をよく洗浄すること。
(PA-1000生活防水だからさあ。ざぶざぶは薦めないけど濡れフキンくらいはおkじゃない)
且つ以後ヴィニール袋をかぶせストラップの位置で、輪ゴムで留めること。
当然にヴィニール袋は一回ごと、使い捨て。
遮蔽装置とか、タッパとか、「やさしお」のパッケージとか、使う物すべてキレイにする。
遮蔽装置のまわりには、厚手のヴィニールでも敷いておけば。
それを一回ごとに洗うこと。
また、電池は常に新しいほうがよろしい。
少なくとも電池マークが■■■から□■■までね。□□■で交換だな。
おれはヱネループ充電完了(□■■←このくらい)を使ってるが、ホントはマンガンを推奨。
・PA-1000の無操作タイマが180minだから、
せめて150min=9000secはふらつきの確認をする。
0secでスタートし、
以後15min=900sec間隔で、カウント数をとる。
目視で900,1800,2700,3600…… と、出た目を読み、ノートに記載する。
(器用なヒトは自動でしてもいいけどね)
:筆者の環境だと、3600sec中に「なぜか高い15min」と「なぜか低い15min」があり、
残り二回の15minは「ふつう」であって、60min=3600secで帳尻が合う。
任意の連続した60minでの総カウント数が、±15c程度に収まっていれば、いいんじゃないの。
(これで、60minの平均値が±0.25cpm以内というわけだな)
収まらなければ、更に遮蔽するしかないなあ。
それは、しかたがないのだ。
●K-40のBq/cpm係数の導出
※この実験はとても重要だ。
ここをしくじると、K-40係数のみならず、そこから導出するCs系係数もくるうからな。
K-40は自然各種であり、半減期 12.8億年、同位体存在比は0.0117%だ。
崩壊方式は単純で
89.3%がβ線を放出してカルシウム-40になり、
10.7%(放出確率)がγ線を放出してアルゴン-40になる。
γ線のエネルギーは1.460MeVだ。
では、遮蔽空間内でK-40を測ろう。
手頃な物がスーパーで売っている。
「
やさしお」である。
ふつうは180gのものを二個用意すればいいだろう。
「やさしお」100g中に、カリウムが27.6g入っている(パッケージ裏に書いてある)。
これをごちゃごちゃと計算すると、
「やさしお」1000gで、K-40:8747Bq であり、
180g*2=360g使うと、8747Bq*360g/1000g≒3150Bq(K-40)となる。
・実験手順1
まずBGをとる。(PA-1000の位置は上記の実験と同様にする)
60min=3600secがいい。
∵前回記載したように、後に示す検出限界値の式に出てくるのは、BGの平均値と、BG,検体測定n(min)数のみなのだが、
曰本原子カ学会の2005年報告によれば、
BG変動がおこるから直線性が維持されるのは30min程度までであり、以降はだれる、とある。
実際にやってみても、時間を延ばすと第一大変だし、
BGのドリフトはあるし、測定器の電圧は降下するし、でいいことない。
30minだと、前記のように「なぜか高い15min」と「なぜか低い15min」に当たり、うまくいかないからだ。
まあ、やってみそ。
3600secの時のカウント数を控える。
それに1/60minを乗じれば、BG平均値が出る。
(多少ずれても計算できるけどね。例えば3700sec≒61.67minで計算すればいいから。詳細後述)
:例えば、筆者の環境だと(以下
RSR-109+PA-1000の実測値)
sec:3600sec
min:60min
カウント:744c
-------------------- 測定ここまで、以下
ポアソン分布により計算する
平均値:12.40cpm
標準偏差:平均値の平方根なので
√12.40cpm=±3.52cpm
標準誤差(母集団の推定された平均値の範囲):標準偏差/標本数の平方根なので
±3.52cpm/√60min=±0.45cpm
となる。
※この計算手順は以後も同様。よく憶えること。
・実験手順2
「やさしお」180g*2=360gを測定する。
※このときの「やさしお」とシンチとの位置関係で係数が変わるから、
実際の測定のときに使うと考えられる、キレイな「配置」にすること。
また、検体(ここでは「やさしお」)と、シンチとの位置関係が、
出来れば検体をV字型にして、シンチがその谷に頭を突っこむようにする。
この位置関係のよいところは、
・そこそこ感度がよいこと
・実際の測定時に、検体をミンチ状にしなくてもよいこと。つまり測った後にその食品が喰えることである。
タッパ等の容器にV字型に入れてもいいし(このとき容器にラップで蓋ね)。
遮蔽装置の形状にもよるがパッケージのままでもできるかもしれん。
(K-40はエネルギーが1.460MeVと高いので、なーにレトルトパックなんかカンタンに通るよ)
3600secの時のカウント数を控える。
それに1/60minを乗じれば、BG平均値が出る。
:例えば、筆者の環境だと(以下
RSR-109+PA-1000の実測値)
sec:3600sec
min:60min
カウント:2997c
-------------------- 測定ここまで、以下
ポアソン分布により計算する
平均値:49.95cpm
標準偏差:±7.07cpm(標準偏差は以後の検定に必要ないから次回から記さない)
標準誤差:±0.91cpm
となる。
●差分値等の計算(計算方法は以後も同様なので、よく憶えること)
・平均値の差分が、検体のデータとなる。
:筆者の例
49.95cpm-12.40cpm=37.55cpm
・標準誤差(σ)の計算
√{(検体の標準誤差)自乗+(BGの標準誤差)自乗}=差分の標準誤差 である。
:筆者の例
√{(0.91cpm)*(0.91cpm) + (0.45cpm)*(0.45cpm)}=±1.02cpm(68%信頼区間)
・2σが95%信頼区間である
:筆者の例
±1.02cpm*2=±2.04cpm(95%信頼区間)
※この値を超えたら有意差有りで検出とする
第二種の過誤(擬陰性)を防ぐため。以下本測定でも同様にする。
・検出限界
式がある。筆者は3σで計算している(式の「3」の部分が3σを表す)。
ND=3/2〔3/(tb+ts) + √{(3/tb+ts)自乗 + 2Nb(1/ts+1/tb)}〕
ND=検出限界
K=3σ(すでに書いてある)
ts=サンプル(検体)時定数(n(min)のこと。筆者はn=60minを推奨)
tb=ブランク(BG)時定数(n(min)のこと。筆者はn=60minを推奨)
Nb=ブランク(BG)の平均値(上記筆者の例では12.40cpm)
:筆者の例
ND=3/2〔3/(60+60) + √{(3/60+60)*(3/60+60) + 2*12.40cpm(1/60+1/60)}〕
=1.40cpm
※この値を超えたら文句なしで、検出である
(3*σ≠ND値であることに注意! ND値もσも、測定毎に変わるよ)
●差分値の検定
以下筆者の例で見ていこう。
・平均値の差分:37.55cpm
・σの差分:±1.02cpm(68%信頼区間)有意差有り
・2σの差分:±2.04cpm(95%信頼区間)有意差有り
・検出限界:1.40cpm 有意差有り
「やさしお」360gは、2σ(95%信頼区間)及び検出限界(3σ法)で有意差有り。
有意検出した。
●PA-1000のK-40係数の導出
これも筆者の例で見ていこう。
なーに、カンタンである。
「やさしお」360gは、K-40:3150Bq だった。
そして、平均値の差分は:37.55cpm である。
したがって、PA-1000の「測定時の位置関係における」K-40係数は、
3150Bq/37.55cpm≒83.90Bq/cpm(K-40)となる。
これを、キミの測定値でやれば、
キミの環境での、PA-1000のK-40係数が出るよ。
んじゃ、以下次号。
Cs系の係数出すからな。
それで測れるんだぜ。